●幕間・とある雪山における少年たち
◆今回はクリスマスということで、あえて、掲示板回ならぬ、ワチャワチャした男子高校生の日常回再びです。
ちなみに、前話の数日前のお話になります。
これは春スキーに出かけ、青春的な好奇心から覗き行為を行おうとして失敗した少年たちのお話。
「ハァ……、モトを信じた俺が馬鹿だったぜ」
「オイオイ、ノリだってノリノリで乗ってきただろ!!」
「そりゃお前が安全確実に覗けるっつったから――」
「バッキャロー。あんなんどう見ても簡単に覗けそうだったじゃねーか。
ノリだってそう思ったから来たんだろ」
「うっ、たしかに――、
けどよ。まさかあんな殺意が高い警備装置があるなんて誰が思うよ」
「まあ、そうだよね。
でも、あの覗き防止装置?
あれ、普通に銃刀法違反とかなんじゃ――」
「蛇の道は蛇――、そういうことなんだろ」
「先輩?
そんなレベルじゃなかったような気がするんですけど。
……はぁ、こんなことなら僕も次郎君と一緒にお土産を選びに行くんだったよ」
「オイオイ小関よ。まさかお前まで『僕は紳士ですから――』とか、ジローみたいなヘタレたこと言うんじゃねーよな」
「なにそれぜんぜん似てないから」
「まあ、どっちにしても、次郎と一緒ってなると一気に犯罪臭が高まるからな。いいんじゃないか」
「先輩、それ、特大のブーメランが帰ってきそうな発言なんですけど……」
『……』
「そ、それはそうとだな。元春。あの改造エアガン? じゃなくてマシンガン? みたいなので撃たれた時に出したあの鎧はなんだったん。あんなもんどこにしまってたんだよ」
「それは僕も思った。あんなおっきなのどこに隠してたの? というか、あれって完全に召喚だよね。どうなってるの?」
「フッ、それは企業秘密だぜ――って言いたいところだが、ま、お前らならいいだろ。実はあの鎧、虎助のバイト先で調達した特別なヤツでな。掛け声一発で着脱が可能になってんだよ」
「いやいや、キーワードで装備可能な鎧とか、どこの魔法少女だよ。冗談だよな」
「ホント、そんなもの調達できるなんて、間宮君はどんなバイトをしてるってことになるんだけど」
「あそこはイズナさんの関係先みたいなものだしな」
「それならわからないでもないか」
「ああ、そうだな」
「え、それ、納得していいことなんですか?」
「お前も本人に会ってみりゃわかんよ。
ってゆうか、流れ的に次は小関が犠牲になる番なんじゃね」
「待って、それは――」
「そういや、吉高はイズナさんの訓練を受けたんだよな。どうだったんだ?」
「思い出させないでくれよ」
「あの、僕の話も聞いて欲しいんだけど……」
「といってもだな。初めての訓練なら、イズナさんもそんな無茶は言わんかったんじゃないのか」
「そっすね。やって百キロ行軍くらいでしょ」
「待って、百キロ行軍は普通に無茶ぶりなんじゃないかな」
「そうか? 俺達は小学校の頃やらされましたっすよね」
「おう」「だな」
「え、小学生で百キロ、山の中を?」
「実際、いまこの状況で冷静でいられるのはあれをやらされたおかげでもあるよな」
「だよな」
「いや、遭難してるんだからちょっとは焦ろうよ」
「そんで、吉高はなにやらされたんだ?」
「えっと、その『だよな』は僕にじゃないんだ」
「ん、ああ、なんか、アスレチックみたいなヤツをぐるぐる回らされるヤツだ」
「アスレチックって、それ簡単じゃん」
「イズナさんにしては珍しいな」
「――っ!?
いやいや、アスレチックっても有刺鉄線とかがあって軍隊がやるようなヤツだぞ。ふつうにやべぇだろ」
「有刺鉄線!?」
「なんだよ簡単じゃん」
「うむ」「だな」
「まさかの反応が変わらないとか!?」
「そりゃそうだっての。
それ、鳳来の山ん中にあるヤツだろ。俺等も何回かやらされたことあるし」
「オイオイ、マジで言ってんのかよ。
……まあ、ヘリで連れて行かれたからどんな場所にあっかはしんねぇけどよ。たしかに山ん中だったな」
「あの、ヘリって――、
間宮君のお家はお金持ちなの?」
「違う違う、ヘリはたぶん加藤のじっちゃんに出してもらったヤツだろ」
「だな」
「加藤のじっちゃん?」
「俺等もそう呼んでるだけだから、詳しくは知んねぇけどよ。
どっかのお偉いさんみたいでな、その人に頼めばヘリくらい用意してもらえるんじゃねって感じだな」
「ええ――」
「しかし、そうなるってーと吉高はイズナさんとじっちゃんにしごかれたってことになんのか?」
「その加藤――って、じいさんは知らねーけどよ。俺はなんか軍人みたいな人達と一緒だったぜ」
「軍人? もしかして川西さんとこか」
「いや、わかんねーけど。金髪のねーちゃん達だったから、川西って名前はないんじゃね」
『…………』
「オイオイオイオイ、待てや吉高。
金髪のねーちゃんって、俺等がこっちで寂しくやってたってのに、お前はイズナさんの紹介で金髪のねーちゃんとよろしくやってたのかよ」
「聞き捨てならんな」
「よろしくって――、教官の前で変なことできないですよ。それに相手はガチガチの軍人さんな上に外人だから、おそれおおくて声なんてかけられるかって話ですよ」
「でも、休憩中に声を掛けるとかあっただろ」
「お前は俺にどうして欲しいんだよ。
てゆうか、休憩ん時は俺もねーちゃん達も死んでたから、どっちにしても無理だったけどな」
「……まあ、イズナさんの訓練ならそうなるか」
「っすね。
でも――」
「ん、ノリ、どうした?」
「いや、その金髪ねーちゃんがイズナさんの知り合いってことなら、虎助ならその金髪のねーちゃんの連絡先とか知ってんじゃねぇ? とか思ってな」
「おお、ノリにしては冴えてんじゃねーか。
おし、さっそく虎助に聞いてみようぜ――って電話通じねーんだった」
「まあ、この山の中だからな」
「く、こりゃ遭難してる場合じゃないっすね。さっさと電波が届くところに行って虎助にパツキンで巨乳なねーちゃんの連絡先を聞かねーと」
「そうだな」「っすね」
「ええと、願望が紛れてるとか、いろいろと言いたいことがあるんだけど――、
とにかく最初から真面目にやろうよ。遭難してるんだし」
「だってな。この程度の遭難なんてイズナさんの訓練を受けてたらよくあることだからな」
「反論できないところが悲しいぜ」
「本当のその間宮君のお母さんって何者なの?」
「うん? やっぱ小関も興味があるのか。
まあ、今度紹介してやっから安心しろ」
「あの、さっきの話とか聞くとぜんぜん安心できないんだけど……」
◆というわけで緊張感のない遭難話でした。
まあ、女風呂を覗こうとして道に迷った程度(?)ですので、そこまでの悲壮感を出すのはどうかと思いまして――、
それに、スキー場とはいえ春山ですからね。夜は冷え込むと思いますが、そこは、今まで鬼教官に鍛えられた経験で乗り切るということでよろしくお願いします。