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魔王城の経過報告

◆今週もよろしくおねがいします。

 フレアさん達が魔王城を後にして数日――、

 僕が魔王城の一部を改修したり、そこの置くお宝を作ってみたりしながらも日常を過ごしていると、ソニアから魔王城のことで話があると工房地下の秘密施設に呼び出された。


「魔王城の調査がとりあえず終わったからその調査報告だね。虎助も気になるでしょ」


 たしかに魔王城にはアヴァロン=エラに繋がるゲートがあったり、魔王城らしからぬ作りだったりと、いろいろな意味で気になる建物だった。

 簡単にではあるが一通りの調査が終わったということで、どんなことがわかったのかと聞いてみると。

 ソニアは、いまこの時にも調査を続けるリス型の探索ゴーレムから送られてくる映像を空中に展開しながらも話してくれる。


「予想通り、魔王城って呼ばれてるらしいこの建物は遺跡をベースにして作った拠点みたいだね。たぶん、その魔王って呼ばれてた魔人もこの遺跡を調べてたんじゃないかな。重要な施設を隠したり、そういう痕跡が残ってるから」


 例の魔王もこの遺跡を調べていたのか。

 ということは、僕達が――というよりも銀星騎士団が見つけた転移ゲートがある部屋を隠したのは、やっぱりその魔王ってことになるのかな。

 話を聞いて逆に気になる部分も出てきたりもしたのだが、まず聞くべきなのは、


「それで、この魔王城ってなんの遺跡だったの?」


「まだ確定ってことじゃないけど、この遺跡はゲートポートとして使われてたんじゃないかってボクは考えてる」


「ゲートポート?」


 オウム返しに聞く僕に、ソニアは、たぶん魔王城のものなのだろう、ゲームなんかにありがちな3Dマップを呼び出して、そこに幾つかの光点を灯しながらも。


「語感からわかると思うけど、管理された沢山の転移ゲートを一箇所に集めて、いろんなところに移動できるようにしている施設ってところかな」


「ふ~ん。なんていうか大都市にあるような駅みたいな感じになってるんだね。

 でもさ、これって凄い施設なんじゃない?」


 別の場所へと一瞬で、しかも特定の場所へと移動できる転移ゲートなんて、ソニアでもまだ作れていない設備である。それを当然のように作ってしまうなんて、その遺跡を作った人達は随分と進んだ魔法技術を持っていたんだろう。


「そうだね。もしかすると、この世界は物凄く発展していた世界だった(・・・)のかもしれない」


 しかし、そんなに進んでいる文明に比べると、フレアさん達が暮らすルベリオン王国は正直それほど魔法的に発展しているとは思えない。

 つまるところ、ソニアが言う通り、もともとフレアさんの世界は物凄く発展していた世界だったんだろう。

 それがなんで今のようになってしまったのかは、ソニアでもわからないみたいなのだが。


「でも、なんでそれがアヴァロン=エラと繋がっちゃったんだろう」


「調整の失敗なのか、故意なのかはわからないけど、もともとは彼等がいつも使っている遺跡とこの魔王城とのゲートが繋がってたんじゃないかな。そこにウチのゲートが割り込みをかけて、アヴァロン=エラが挟み込まれた形になったんじゃないかってボクは考えているよ」


 なるほど、ここで使われていた転移ゲートはあくまで同じ世界の別の場所を繋いだもので、アヴァロン=エラにあるゲートがその機能によって間に挟まっている状態になっていると。


「詳しいことはあの施設を調べなきゃなんだけど、下手に弄ると今の状態が狂っちゃうかもしれないんだよね。けど、そうなっちゃうと、今度は勇者君達が困っちゃうよね」


 調べたいには調べたいのだが、それをするといま接続しているアヴァロン=エラとの転移までもを断ち切ってしまうことになりかねない。

 ソニアもそんな迂闊なことを自分からするつもりはないだろうけど、万が一のことはないわけではない。


「ってことは、いまのところ直接この転移ゲートを調べることはできないってこと?」


「いや、そこは大丈夫だと思うよ。だって、ゲートはいっぱいあるんだし」


 ああ、そうか――、

 ゲートに関する研究はここでやらなければならないと思いこんでいたけど、この遺跡には他の場所にも転移ゲートがあるんだから影響がないそっちを調べればいいんだ。

 それでも他に影響を及ぼさないとは言い切れないそうなのだが、現在フレアさん達が利用している転移ゲートを直接調べるよりかは安全な調査が出来るそうだ。


「因みに、他にまだ可動しているゲートはあったりするの?」


 まだ魔王城のすみずみまで調べたのではないだろうけど、それでも3Dマップに表示された光点の数を見る限り、両手に収まらない数の転移ゲートが確認されているみたいだ。それだけのゲートが存在するのなら、バフォメットが守っている転移ゲートの他にも可動している転移ゲートがあるのではと、聞いてみたところ。


「残念ながらいまのところ動いてる転移ゲートは見つかってないね。

 でも、一箇所だけ、最近まで動いていた形跡がある転移ゲートがあったみたいなんだよ」


 そう言ってソニアはすぐ側の空中に浮かんでいた魔王城のマップを引き寄せると、そこに表示される光点の一つをタップ。その場所の映像を呼び出して見せてくれる。


 それは、僕達が確保した転移ゲートとほぼ同じような部屋だった。

 しかし、その転移ゲートは動いておらず、そこかしこが破壊されたような跡が見られた。


「因みに、このゲートとこの遺跡の中心を繋いで直線を引いていくと、いま勇者君がいる街の付近にぶつかるんだけど」


「それって――」


「たぶん勇者君たちがいま追いかけてる魔王は、ここを引き払う時にこの転移ゲートを使ったんだろうね」


 フレアさん達が魔王城に辿り着いた時には既にもぬけの殻で、その痕跡すら探れなかったという。

 つまり、その原因にはこの転移ゲートが関係している。ソニアはそう言いたいのだろう。


「ただ、気になることがあってね」


「気になること?」


「うん。いま僕達が確保している転移ゲートを調べてわかったんだけど、現状の魔素濃度だと(・・・・・・・・・)、このゲートを使って一度に移動できる人数はあんまり多くないんだよね」


 たしかに、魔素が腐るほど存在するアヴァロン=エラならまだしも、フレアさんの世界で転移の魔法を付与した魔導器を作動させるのには、それなりの準備が必要になる。


「このゲートは全くの異世界に通じていることから、他がそれと同じって訳じゃないかもしれないんだけど、この広い城の中にいた人員を全員、短時間の内に、この転移ゲートを使って移動させるのは難しいんじゃないかなって思うんだよ」


 地図を見るだけでも魔王城は相当に広い。

 これを最少人数で管理していたとしても百人以上はこの城に住んでいたハズだ。

 それを全てこの魔王城の転移ゲートでまかなえるかと言うと――、

 うん。それはどうなんだろう。


「それと、もう一つ気になることがあってね。もしも魔王と呼ばれた彼等が直前までここで生活していたにしては、この城、綺麗過ぎないかい」


 言われてみれば――、

 警備などに魔獣の類が配置されていたとしたらもっと薄汚れていてもおかしくはない。

 魔獣にも排泄物などを出さないタイプもいたりするが、全てが全てそんな魔獣ばかりではない。


 しかし、そうすると魔王城のこの内部状況はどういうことなんだろう。

 魔王城の荘厳さと魔王の暮らしに乖離を感じるような。


 だが、それをどう解釈していいのか考えるには、僕はフレアさんの世界の魔王のことをあまり詳しく聞いたことがなかったのかもしれない。

 魔王と聞いて漠然とゲームに出てくるようなキャラクターをイメージしていたけど、もしかしたら、フレアさんの言っていた魔王も、うちの常連である魔王様と同じように、一般の魔王から考えると、また別の性質を持っているのか。


「因みに、その潰されたっていう転移ゲートの再起動はすぐに出来たりするの?」


 魔王城の状態と魔王の考察はそれとして、魔王が逃げるために使ったと見られる転移ゲートを再起動できればフレアさんの調査の助けになるのではないか。

 訊ねる僕に、ソニアは「う~ん」と難しい顔をして、


「まだ城の全体像をざっとあらっただけで、この転移ゲートがどんな仕組みで動いてるかはまだよく分かってないから、すぐには無理だと思うよ。

 それに、バフォメット経由だと高度な魔法処理なんかは難しいだろうし、あれだけ巨大な魔導器を改めて動かすってなると、バフォメットが内包する魔力だけじゃ絶対に足りないと思うんだよ」


 魔動機にせよなんにせよ、稼働開始時にエネルギーを一番多く使うのはよくある話だ。

 それを制御し、きちんと行き渡らせる作業を行うにはバフォメットは力不足だということらしい。


「僕達が直接乗り込めれば早かったってことだね」


「まあ、それが出来るようになる為にっていう研究でもあるからね。贅沢はいえないよ」


 ソニアはとある目的の為に転移魔法の研究をしている。

 それはまだ発展途上の段階にあって、ましてやそれが異世界の技術というのなら、容易に作動させることなど出来る訳もないのだ。


「じゃあ、やっぱりフレアさん達には――」


「うん、自力で探してもらわないといけないね」


 そう言って、言葉を切ったソニアが、


「と、そういえば、例の通信は役に立ってる?」


 『役に立ってる?』と聞いてくるのは念話通信を改造した呼びかけシステムのことだろう。

 魔力の波長を解析、特定の人物にだけメッセージを送れるという魔法である。


「いまのところ反応はないみたいだね。魔王城にいた人から聞き出した街に到着して、いろいろと場所を変えながら試しているみたいなんだけど、返事は来ていないみたい」


 因みに特定の波長というのは姫様の映像を移したメモリーダストなる映像記録装置から、抜き出したものを利用している。

 それが姫本人ではないにしろ親しい人物が撮影しているだろうという予想からである。


「有効範囲は〈インベントリ〉由来の念話通信と同じだから、大体の居場所さえわかってるなら届いているとは思うんだけど」


「警戒してるんだろうね」


「まあ、こればっかりは相手があることだから待つしかないと思うよ」

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