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●幕間・望月静流の苦難

◆今週の二話目。今回のお話は苦労症の魔女・望月静流の視点でお送りいたします。

「面倒なことになりましたね」


 そう言って小さな会議場に集まる魔女達を前に頭を抱える私は望月静流。このアジア・オセアニア地域の夜会を取り仕切る【工房長】だ。

 現在、私は支部の実力者を集めてとある会議を開いていた。


 議題として取り上げられるのはシルフィードと呼ばれる小型の下等竜種への対応。

 実はいま、私達が管理する森の一つが、このシルフィードという小型の飛竜によって荒らされてしまっているのだ。


 特に問題となっているのが〈炉〉と呼ばれるパワースポット。

 錬金術や魔法開発に使うこの〈炉〉が現在シルフィードによって使えない状態になってしまったのだ。

 今はその対策会議をしているところなのだが、相手が()ということで、思うような対策が出てこないのが現状だったりするのだ。


 何時間と実りのない議論を続ける中、ここまでに一度も発言をしてこなかった魔女が自信なさげに手を上げる。

 彼女の名前は佐藤タバサ。いまだ年功序列が残っている日本魔女会の温情でこの会議に出席できている(・・・・・)と思われている私の妹弟子だ。


 タバサの挙手に幾人かの魔女が顔を顰める。

 タバサが私との繋がりによってこの会議に出られていると考えている魔女が嫉妬の目線を送っているのだ。


「あ、あのう。私が退治してきましょうか。 た、探査魔法を使えば、シルフィードを見付けることも簡単だと、お、思いましゅから」


「見つけられたとしてどうなるの? 相手は竜なのよ。あなた如きが相手できる敵じゃないわ」


 発言を促すような他の魔女からの視線にタバサがおどおどとした態度ながらも答える。

 だが、そんな勇気を振り絞ったタバサの発言をバッサリと斬り捨てる魔女がいた。

 彼女の名は関谷アンナ。若手ナンバーワンの呼び声が高い魔女だった。

 しかし、タバサもただ言われっぱなしではなかった。


「素早く動く、りゅ、龍なら、むむむ、向こうで戦ったことがありますから、た、たぶん倒せると思うんです……」


「向こうとかってどこのことを言ってるのよ」


 尻すぼみになりながらも突っかかってくる関谷に反論するタバサ。

 だが、『向こう』という抽象的な表現がいったい何を示しているのかわからないと、関谷が鼻で笑うようにして聞き返す。

 しかし、タバサが口にした『向こう』というのが、アヴァロン=エラという異世界と知っている私としては今の発言は捨て置けない。


「佐藤、アナタ一人でどうにかなると?」


「は、はい。い、いい、一匹くらいなら、たぶん、大丈夫だと。 し、志帆さんはいませんけど倒せると、思います」


 気弱なタバサがこれ以上緊張しないようにと、わざわざタバサがいる席まで歩み寄りながら訊ねる私に、タバサは自信なさげにではあるものの大丈夫だと言ってのける。

 なんでもタバサは、最近よく一緒に行動している間宮家長女の修行につき合わされて、あの間宮イズナ女史の訓練を受けており、何度も何度も死にながらも龍に対抗する術を憶えさせられたのだという。

 成程、それならさっきまでの発言も納得できる。

 しかし、かの規格外な人達を知らない他の魔女達はタバサの言葉をあからさまに疑っていた。


「さっきからなに訳わからないことを言ってるのかしら先輩は、アナタごときが竜を倒せる訳ないじゃない」


「支部長も支部長ですよ。先輩の話を真に受けて」


「で、ででで、でも、ほ、本当なんですよ~」


 一応は先輩という認識は持っていますよ――という体裁は整えながらも、あからさまに馬鹿にした態度で責め立てる関谷の取り巻き達にタバサが情けない声を出す。

 正直、その姿だけを切り取ってみれば、関谷達の方が正しいように見えるのだが、内情を知っている私としては、むしろ関谷達の方が聞き分けのない子供のように思えてしまう。


 とはいえだ。数ヶ月前までのタバサの実力を考えると、彼女達が増長してしまう気持ちも分からないではない。実際にタバサはいまだに見習い魔女から抜け出せていないのだから。


 しかし、現状の力量差を考えると、彼女達の態度は致命的。

 今はまだタバサの性質というべきか、生来の人間性から彼女達の傲慢が許されているものの、もしもタバサの性格が別のものであったのなら、彼女達はここで終わっていたのかも知れないのだ。


 そんなことも感じ取れないなんて……、


 まあ、その辺りの認識を彼女達が、いや、他のベテラン魔女だとしても持ち合わせていないのだから仕方がないか。

 けれど、これから先のことを考えると、過度にタバサを虐げるこの状態は良くないだろうと私は思う。


「ならば、お前達もその『向こう』を体験してみたらどうかしら」


「え、えと、こここここここ、この子達をあそこに連れて行くんですか?」


 私の提案にタバサが焦る。

 あの世界を知っている私としてはタバサの気持ちも分からないではないのだが――、


「疑う相手にには見せてあげた方が早いでしょう。それに彼との取り引きはちょうど明日です。取引を増やす意味でも他の魔女を連れて行くのもいいでしょう。

 ただし相手側の都合もあると思いますから、向こうに行く人間は厳選しますけど」


 彼女達を巻き込んでしまった方が、取引的な意味でも、被害者的な意味でも、私達にとってはメリットが大きい。

 まあ、私とタバサの他には話を半分も理解できなかったのだろうが、どちらにしても明日になればわかることだ。




 ということで翌日、虎助君の了解を得た私は、夜会に出席していた魔女の半分をアヴァロン=エラに連れて行ったのだが、彼女達はそこで本物の悪夢に出会うことになった。


「い~~や~~。助けて~~~~」


「せ、先輩。立て直します引きつけておいて下さい」


 口々に情けない声を上げて空飛ぶ箒で逃げ回るのは、もちろん我がアジア・オセアニア地域が誇る精鋭魔女達だ。

 そして、逃げ回る魔女達の中で一人冷静に指示を飛ばすのはタバサ。

 ふだんの気弱な喋り方はだいぶ少なくなっていて、まかりなりにも場を仕切っていた。


 しかし、この戦場で冷静でいられるのはタバサと私くらいなもであって、

 他の者達はというと――、


「無理無理無理無理――っ!!

 死ぬから、死んじゃうから」


「だ、大丈夫です。この世界では死んでも復活しますから。

 あと、関谷ちゃんは得意の火の魔法でワイバーンを牽制して」


「は、はいぃぃぃぃ」


 完全に冷静さを失っているわね。喚き逃げ回る者が殆どで、一部、理性を保っている魔女達も自分でなにか判断するのは難しい状態にあるみたい。

 本来なら、ここは私が指揮をとるところだろうけど、今回は相手が相手だけに経験者であるタバサに任せるのが一番だと指揮権を譲ったのだ。

 何しろ、いま私達が対峙しているのはフォレストワイバーン。

 魔女の森に現れたまがい物とは違う本物の龍なのだから。


 とはいっても、私達が今いるここはディストピアといわれる魔導器の中で、このフォレストワイバーンも魔導器の素体となった存在と疑似的に顕現したものだというが……。


 しかし、擬似的な存在だとしても龍は龍、アヴァロン=エラという世界に飲まれながらも、最初は意気揚々という感じだった関谷もいざ本物のドラゴンに対面してしまってはどうにもならない。

 格の違いを思い知らされたのか、今ではタバサの言うことを素直に聞く良き後輩の立ち位置に戻っているようだ。


 そうして、タバサの指揮の下、私達はまさに空を飛ぶ重戦車と呼んでも遜色のないフォレストワイバーンにどうにかこうにか対応していく。


 いや、ただ逃げ回っているというのが殆どの意味で正しいのだが、そこはまかりなりにも龍種とやりやったタバサが出す指示だ。

 ある程度、フォレストワイバーンの行動をコントロールできているみたいで、


「し、静流さん。先輩もろともやっちゃって下さい」


「タバサ。アナタ――、何を言っているの?」


 一人の魔女がフォレストワイバーンに目を付けられたのを感じ取ったタバサがそう言ってくる。

 因みに、そんなタバサの指示を聞いて、慌てたのは同時期に見習い魔女をしていたベテラン魔女だ。

 見下すまでとはいかないものの、いつまでも見習いが取れないタバサを明らかに格下に見ていた魔女の一人だ。

 そんな彼女がタバサの指示に悲鳴のような抗議の声を上げる。

 だが、現実は非情なものである。


「了解よ」


「静流さん!?」


 私の声にぎょっと目を剥くベテラン魔女。


「でも、こうでもしないと、私達の実力じゃワイバーンは倒せないの。ごめんなさいね」


「そんなぁ――」


 情けない声が聞こえてくるけど、いまの私達に彼女の事を構っていられる余裕などいられない。

 ここできっちり決めないと、次にいつチャンスが来るのか分からないのだから。

 それは周りの皆も分かっているのだろう。彼女を擁護するような声は聞こえない。

 それどころか「静流さん。お願いします」とか「早くやっつけちゃって下さい」と現金な声ばかりが聞こえてくる。

 彼女に味方はいないらしい。

 そして、言われるまでもなく、このディストピアが危険な世界だと身を持って知っている私は『どうにか悲鳴をあげて飛び回る魔女が殺されてしまう前に――』と、そんな焦る気持ちを抑えながらも丁寧に超長文となる呪文を詠唱、佐藤を始めとした補助を受けながらいま使える最強最大の魔法をワイバーンに放つ。


風精の繭(シルフィンコクーン)


 発生したのはワイバーンを包むように荒れ狂う球状の竜巻。

 フォレストワイバーンは突如として自分を覆った竜巻に巻かれながらも、どうにかこの球状の竜巻から逃れようと暴れまわる。


 しかし、この魔法はここからが真骨頂。

 球状の竜巻は、その領域内の空気の濃淡を作り、風の刃を発生させる。

 いわゆる『かまいたち』と呼ばれる現象を魔法的に発生させるのだ。


 竜巻の中に発生したかまいたちによってフォレストワイバーンの外皮が切り裂かれていく。

 血が霧のように吹き上がり、球状の竜巻を赤に染め上げていく。

 そして、魔法を維持すること数十秒、赤い竜巻が血霧となって消えたそこにはまだワイバーンが存在していた。


「これだけやっても倒せないの?」


 誰かの悲鳴じみた声が空に吸い込まれる。

 しかし次の瞬間、フォレストワイバーンを支えていた羽ばたきがゆっくりと止まり、重力に引かれて落ちていく。

 フォレストワイバーンの急な変調の原因は出血多量。

 そう、私の狙いは最初から竜巻内部の気圧変化による血液の吸出にあったのだ。


 そして――、


 ズシン。まさに地鳴り、そんな音があたりに響いた直後、地面に落ちたワイバーンが光の塵となって消え、それと同時に私達のいた空間が揺らいで消える。


 ふと気付くと私達は小さなミュージアムのような施設の中にいた。

 まるで今迄の戦いが白昼夢だったかのような光景に、呆気にとられる他の魔女達。

 そんな私達に一人の少年が声をかけてくる。

 彼の名前は間宮虎助。あのイズナ女史の息子であられながら、注意して認識しなければその他大勢に埋没してしまうような普通の少年だ。


「どうでしたか?」


 虎助君の問いかけにただただ呆然とするだけの魔女一同。

 そして、何度目になるだろうかの問いかけで、ようやく虎助君の声に反論(・・)する魔女が一人現れる。


「どうでしたかじゃないわよ」


 ヒステリックに叫ぶのは、さっきまでの弱気な態度はどこへやら、若手ナンバーワンを自称する関谷アンナだった。

 正気を取り戻し、さっきまで見せていた気弱な姿を恥とでも感じたのだろう。理不尽にも虎助君につっかかっていく。


「アナタねえ、ドラゴンのどこが初心者向けなのよ」


「ドラゴンと言っても相手はスピード特価のワイバーンですから、耐久力が低いんですよ」


 虎助君が苦笑しながらもした返答に『何を言っているの?』と言わんばかりに絶句する関谷。

 実際、私の一撃で倒したのだから彼の言うことは正しいのだが、関谷としては納得いかないところだったのだろう。失礼な物言いで食ってかかる。


「わかったわ。アナタ、さ、佐藤――に頼まれて私達に恥をかかせたんでしょう」


「そそそ、そんなことしませんよぅ」


 タバサの名前を呼ぶ時に若干言いよどんだのは、ディストピア内でタバサが見せた冷静な対処を思い出したからだろう。

 そんな関谷にふだんの気弱を取り戻しながらも反論だけはきっちりとするタバサ。

 だが、関谷としては佐藤の主張なんて知ったことではない。


「どうせ、その無駄にデカイ胸とかで彼を誘惑したんでしょ。はっ、ご年配の魔女らしい卑怯な手ね」


 今度はターゲットをタバサに変えてつっかかっていく関谷。

 その言葉に、一定以上の(・・・・・)年齢になった魔女達が目を鋭く尖らせる。


 私? 私は気にしていませんよ。

 見た目さえ若ければそれでいいのです。

 ええ、見た目さえ若ければ……。


 そして、虎助君もそんな関谷の態度を見て、なにか思うことがあったのかもしれない。「ふむ」と一考するように呟いて、


「でしたら、もう少し高いレベルのディストピアに挑んでみますか。

 例えば魔王級のディストピアなんて面白いと思いますよ」


「ハァン、魔王級? 上等よ――ってゆうか魔王ってなによ。そんなのいる訳がないじゃない」


 虎助君の言葉を脅しの類だと思っているのだろう。関谷の暴走は止まらない。

 けれど、彼女はこの後、いま自分がした発言を後悔することになるだろう。なにしろ虎助君が言っている事は全て本当の事なのだから。

 因みに一部の勘のいい魔女は――というよりか私のような経験豊かな(・・・・・)魔女ですね――最初のフォレストワイバーンとの戦いで、このアヴァロン=エラの異常性を察知したようで、参加者を確認する虎助君に丁重に辞退の旨を伝えていた。

 そして、そのことを察知できなかった未熟な(・・・)魔女達はというと……、


「な、何者なんですか、あの子――、いえ、あの方は――」


 虎助君の案内でとあるディストピアから帰ってきた関谷が先ず発したのが今の言葉。


「ここのバイト店長で、私達が暮らす街の近くで普通の高校に通っている高校生だって話ですけど」


「バイト店長? 普通の高校生? ありえませんよ。 だって、あんなデカブツを誂うみたいに軽く立ち回って、無詠唱でポンポン強力な魔法を放つんですよ」


 虎助君が言っていた魔王級のディストピアの中で相当ひどい目にあったみたいだ。関谷が涙目で訴えてくる。


 しかし、無詠唱ですか?虎助君はつい数か月前まで魔法初心者だったと聞いていたのですが――、

 いえ、おそらく関谷が言っている強力な魔法というのは、ディロックなる使い捨てのマジックアイテムですね。

 とはいえ、虎助君の強さはかのマジックアイテムのおかげという訳ではないのですけどね。

 まあ、その辺りの強さの認識は数多の経験を経て女を磨かなければ分からないので、仕方がありませんがね。


 だが、彼女は――、彼女達はまだ幸せな方だ。彼よりも更に強い存在がいることを知らないのだから。

 そう考えると私やタバサなんかが一番不幸と言えるのかもしれない。

 何しろ虎助君の義姉に巻き込まれる形であの方(・・・)の特訓を受けるハメに陥っているらしいのだから。


 たしかに下等竜種一匹くらい簡単に相手にできるくらいの実力を持たねばやってはいられないだろう。

 そんなことを考えていたのが悪かったのだろうか。


「あら、今日は千客万来ね。何かの催し?」


 不意にゾクリとする声が耳に届く。

 周囲の魔女もすぐに彼女の存在に気付いたいみたいだ。

 しかし、彼女が纏う、得も言われぬ存在感に言葉も出ないらしい。

 それでなくとも、リラックス状態だったとはいえ、虎助君以外に誰も感知ができないままにここまでの接近を許してしまったのだ。その実力差は未熟な後輩達にも少しは感じ取れたのだろう。


「で、これはどういう集まりなの?」


「それがね。魔女の森に竜が出たみたいで、今はその対策に訓練をしてるところかな」


 その人、間宮イズナの質問に虎助君が答える。

 一つ。虎助君の発言を訂正するのなら、私達がいま行っているのは訓練ではなく、単にタバサの実力を認めさせるセレモニーのようなものなのだが、そんな事情なの彼女には全く関係がない。


「あら、向こうの世界にも龍がいるのね。探してみようかしら」


「あ、それなんだけど、母さんが思ってる龍とは違うからね。望月さん達の言ってるドラゴンは下等竜種って言って、どっちかというと爬虫類型の魔獣みたいなものだからね」


 そうなの? 虎助君の言葉に頬に手を当て首を傾げるイズナ()


「うん。中には本物の龍種に届くくらい強い個体もいるだろうけど、基本的にはふつうの魔獣とあんまり変わらないと思うよ」


「それなのに、こんな大仰な対策が必要な訳なの?」


 イズナ様は虎助君からの説明に呆れたような声を上げる。

 すると――、


「貴方、さっきから聞いていれば――」


 失礼にも関谷がイズナ様につっかかっていってしまう。

 だが、関谷は最後まで台詞を言い切ることができなかった。


「元気がいいお嬢さんね。

 でも、相手に絡む前にその実力をきちんと見極めましょうね」


 気がつけば関谷は地面に押さえつけられていた。

 いったい何がどうなってそのような状態になったのか。片手で捻り倒されるように地面に押さえつけられる関谷に周囲の魔女達が唖然とする中、さすがは親子と言うべきか、ちょっと前に虎助君がそうしたように「ふむ」と周りの魔女達を見回したイズナ様は私の方を見て、


「今日明日と私お休みだから、ちょっと鍛えてあげましょうか。ねぇ、静流さん」


 どうしてそこで私に話を振るんです? 私は心の中で盛大に叫ぶ。

 しかし、ここで断る訳にもいかないだろう。

 わざわざ鍛えてくれると言った彼女の期待を裏切ってしまったらどうなることやら――、

 それが単なる暇潰しや気まぐれの類であったとしても、もしものことを考えるとそんなことできる訳がない。

 それに、彼女の、いや、このアヴァロン=エラという特殊な世界に関わる人物達によって、ジョージア達アメリカ支部が力をつけたことを考えると、私達、極東支部に属する魔女達の戦力の底上げは必須事項、どちらにしても最終的には彼女達のお世話になるには変わりないのだから。

 ただ、それが早いか遅いかというだけであって……、


「お、お願いしてもよろしいでしょうか……」


 結局、その日と翌日、私達は地獄を見ることになり、そのおかげと言えばいいのだろうか、私を含めた極東支部の魔女達は、最近になって頭角を現し始めたと言われていたアメリカ支部と双璧をなす存在として恐れられるようになっていくのだが、それはまだ少し先の話。


 ◆◆◆オマケ『万屋における魔女達の反応』◆◆◆


「なんですか、この服は、金属製の鎧並の防御力があるって本当ですか?」


「それ、最近の売れ筋商品なんですよ。高貴な方に頼まれたって人が多く買っていきますね」


「ってゆうか、この普通に売ってる服にアラクネの糸が使われてるって本当なんですか?」


「ええ、ちょっとツテがありまして――」


「ちょっとこの魔法銃、いったい何種類の魔弾が撃てるのよ。 一丁金貨十枚って――だいたい百万円くらい? 買いね。買い」


「あの、店長さん。 前に佐藤がこの店で魔法の箒――じゃなくて、ストールを作ってもらったと聞いたんですけど……」


「オーダーメイドの魔導器作成ですか、仕様と設計図さえ書いてくださったら大抵のものは作りますよ」


「「「「「なんですってっ!?」」」」」


「虎助君、それは本当なのですか?

 たとえばイズナ様が使っているような術とか――」


「そうですね。魔法の種類にもよりますが、きっちりとした計画書さえ出してくだされば」


「それはこの店の防具なんかに使われてる魔法金属製のものでも」


「お高くなってしまいますけどね」


「す、すぐに設計図を書いてまいりますから、製作をお願いしてもいいかしら?」


「ちょ、ちょっと静流さん狡いですよ」


「こういうのは早い者勝ちです。ですよね。虎助君」


「まあ、そうなんですけど――、ウチには腕利きの職人(ゴーレム)が揃っていますからね。遅れてもそれほど待たなくても大丈夫だと思いますよ」


「「「「「わかりました。すぐに設計図を書いてきます」」」」」


「う~ん。これはしばらく忙しくなりそうだね」

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