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都市メルパと神秘教会総本山

◆続き物のお話になるとどうしても一話一話が長くなってしまいがちです。

「なに?彼奴(きゃつ)の研究所を抑えていた機兵共がやられただと」


「状況から鑑みて異端者がなんらかの手を打った結果だと思われます」


彼奴(きゃつ)は修練の間に捕らえているのではなかったのか?」


「それなのですが、なにやら魔法を二度三度と発動させたところを監視によって目撃されております」


「修練の間にて魔法を使うか……、やはり、まだ古の力は失われていないのだな……」


「大主教様?」


「いや、なんでもない。 それよりも彼奴(きゃつ)が仕掛けた何か(・・)に対応するのが先だな」


「それがよろしいかと」


「ふむ、議長の方とは連絡を取れるようになっていたのだったな」


「はっ、万が一の事を考えると用意を進めておいた方がよいかと思い部下に指示を出しておいたのですが、

その、余計なことでしたでしょうか?」


「いや、お前の判断は間違ってはいないだろう。

わかった。すぐに議長を説得しよう。 お前達は裁判の準備を進めるのだ。もちろん二人分な」


「了解しました。我らが光神の御心のままに」


「ああ、我らが光神の御心のままに」


   ◆


 研究所を取り囲んでいたゴーレム兵との戦闘後、KE11の操作を代わってもらった僕は、賢者様の〈インベントリ〉から発せられる魔力を辿って動き出す。

 賢者様の研究所はどこかの深い森の中に存在する、中国の水墨画に出てきそうな背の高い岩山をくり抜くようにして作った施設だったみたいだ。

 アニマさんとプルさんの二人を両肩に乗せたKE11が、世界が世界なら凶悪な魔獣の類が跋扈していそうな深い森の中をまるで飛ぶように駆け抜けていく。

 正直、肩に乗った二人がよく悲鳴を上げずにいられるな――と思ってしまうくらいのスピードが出ているのだけれど、二人は平気そうだ。

 そのおかげもあって賢者様の研究所を取り囲む森からは割りと早く脱出することができた。

 そして、明らかに人の手が入っていると見て取れるなだからかな草原を抜けて、見つけた舗装された道路を辿ると、ようやく目的地が見えてきたようだ。

 それはSFアニメなんかで見かけるようなコロニー都市とでも呼べばいいだろうか、長大な円形の壁に囲まれた集合都市だった。

 僕達はそんな巨壁とビル群を遠目に眺めながら相談を始める。


「つか、これってどうやって入るんだ?」


「たぶん、あの検問所(ゲート)みたいなところから入ればいいんだろうけど、何らかのチェックは受けるだろうね」


「イエス。入口ゲートにて身分証の提示、および各種探査魔法によるチェックが行われるそうです」


 僕達の疑問に答えてくれたのはプルさんだ。


「まあ、そこは光学迷彩やら認識阻害やらを使っていけば大丈夫だと思うけど……」


「……光学迷彩だと、ちょっと待て、なんでこのロボットが光学迷彩やら認識阻害なんて魔法が使えてんだよ」


 おっと、これは失言だったようだ。

 プルさんの証言を受けた僕の呟きを耳聡く聞きつけた元春が僕の肩を掴んで聞いてくる。


「ほら、KE11はもともと賢者様の世界のゴーレムだから、当然そういうギミックが仕込まれているんだよ」


 本当のことを言うと、このKE11に搭載されている光学迷彩は、〈インベントリ〉から魔法式を取り付けられた魔石の魔力を使って発動させているという仕組みの魔法なのだが、どっちにしても今の元春では自力での発動不能のものである。


 因みにアニマさんは肉体的にふつうの人間となっているので人間として、プルさんは賢者様やプルさんの所有ではなくレンタルサーヴァントとして、賢者様がこういう時の為にと用意しておいてくれた偽造した身分証を使えば普通に街へと入れるらしい。


「でもよ。身分証の偽造とかって普通にバレねーの?」


『その点は心配いりません。ゲートに配備されているものと同じスキャナーを入手して何度も実験していますので、疑われるということはまずないでしょう』


 どうやら賢者様はアニマさんがこの世界で普通に暮らしていけるようにと、いろいろと手をつくしていたみたいだ。

 その甲斐もあってアニマさんもプルさんもあっさりとゲートを通過することに成功するのだが、ゲートを抜けた先に待ち受けていた景色は、なんというか、ある意味で僕達の予想を裏切った光景だった。


「なんつーか、街の中は俺等の世界とあんま変わんねーんだな」


「そうなのですか。 なるほど、これが虎助達の暮らす世界ですの」


 元春の声にマリィさんがメインモニターにかぶりつく。

 しかし、あえて細かく指摘するのなら、街行く人が魔法窓(ウィンドウ)のような三次元ディスプレイを手元に浮かべていたり、人がボードやら大型スクーターのような乗り物で空を飛んでいたりと、やっぱりファンタジーだなあと思わされる光景もあったりするのだが、基本的には東京とかの大都市で見られるようなビルが乱立するビジネス街とかそんな雰囲気の街並みである。


『それで虎助様、マスターはどこに囚われているのですか?』


 僕達がメインモニターに映る景色に注視する横、声をかけてくるのはアニマさんだ。

 表面上は冷静に見えるのだが、生まれてすぐに離れ離れになってしまった創造主がすぐ近くで捕らえられているという状況では、無意識にも気持ちが逸ってしまうなんてことがあるのかもしれない。


「方向、距離的に見て、たぶんあの背の高いビルですね」


 KE11を操作、とあるビルをメインモニターに映しながら言う僕に、元春が「ん?」と小さな疑問の声を漏らす。


「師匠が捕まってんのってなんとかっつー宗教団体じゃなかったけか、なんであんなビルに捕まってるんだ?」


 元春としては教会と聞いて、それらしき建物を想像していたのだろうが、


「都会の中にある宗教施設だから、別にビルが本拠地だったとしてもおかしくはないんじゃない」


 土地が有り余っている田舎なら、いかにもな教会を建てるのもいいのかもしれないが、こんな壁に囲まれた街の中では教会や、その他、付随する宗教施設を建てる土地を確保するのは難しいのではないか。

 だったら、ビルの中にそれらを詰め込んでしまった方が利便性という意味でも都合がいいのではないか。

 実際、東京なんかではビルの中に礼拝所やお墓なんかがあるとテレビか何かで見た事があるような気がするし、こっちの世界では有名らしい宗教団体がビルの一つ二つを持っていたところでおかしくはないのではないか。

 そんな、現代における宗教事情なんかを話しながらも、僕達は賢者様の反応を辿ってビルまでの道のりを進む。


 しかし、そのまま敵の本拠地に潜入するのではなく、まずはその向かいのビルとビルの間に陣取って、


「さて、これから突入なんですけど、どうしましょうか。 このKE11に備わる範囲型の認識阻害魔法を使えば、三人で突入するのも多分できるとは思うんですけど、退路を確保する為にも、最低でも一人、この場所に残った方が無難なんだと思うんですが」


 これは賢者様を助けに行くための潜入ミッションだ。

 それ自体はこの街に潜入したのと同じく認識阻害などの魔法を使えばなんなくこなせるとは思うのだが、場所が場所だけに全員で突入するのは危険ではないかという僕の意見に、


『私は――、マスターを助けに行きたいです』


『ならば私がこの場に残りましょう』


 アニマさんが控えめながらも賢者様を助けに行きたいという主張して、プルさんが自ら居残りを名乗り出る。


『プル。いいのですか?』


『イエス。生体ベースのアニマがマスターに依存するのは当然の性質かと思います』


 驚きというよりも純粋なる確認作業、そんなアニマさんの問いかけに、プルさんは自己分析をするようにそう答える。

 完全なる生命体として生み出されたホムンクルスのアニマさんと精霊ベースとはいえゴーレムであるプルさん。どちらもマスターとしての賢者様を心配しているのだろうけど、その心配の仕方には肉体的な作りや魂のベース、その他もろもろの影響によって考え方に差があるのかもしれない。

 まあ、正直に言ってしまえば潜入任務というのならこのKE11だけで十分なのだが、アニマさんとしては自らが賢者様を救出に――という思いがあるのだろう。


 ということで、プルさんと別れた僕達はそのまま神秘教会本部ビルに突入。


 さて、ここで問題となるのが、賢者様の世界の監視カメラや探知系の魔導器だ。

 その辺りの機器に対しても認識阻害や光学迷彩の効果が継続するものかということだが――、

 今のところは特に問題はないみたいだな。

 考えてもみれば、ここは不特定多数が出入りする宗教施設、たとえ認識阻害の効果が無かったとしても、ただビルの中に入っただけで止められるなんて事は無いのかもしれないな。


 僕は頭の片隅でそんな事を考えながらも、認識阻害の効果範囲内にいるアニマさんの影に隠れるようにKE11をビルの奥へと進めていく。


 すると、さすがは宗教団体が所持するビルというべきだろう、ビルの内部には、そこかしこと厳かな雰囲気を醸し出すような装飾がなされていて、一般的なホテルやオフィスビルとはまた違った様相を見せていた。


 とはいうものの、僕もオフィスビルが普通どうなっているのかなんて、テレビとかそういう映像でしか知らないんだけどね。

 因みにアニマさんは初の潜入ミッションにもかかわらず随分と落ち着いている。

 もしかすると、ホムンクルスとして生まれたばかりということもあり、まだ緊張とかそういう感情が薄いのかもしれない。

 意外にも胴に入っているアニマさんについていく形でビルの中を進んでいくと、エレベーターホールらしき場所へと辿り着く。


「それで、ロベルトはこの建物のどこに捕らわれていますの」


「研究所で確認した反応の位置からすると、まだ随分と上の階にいるみたいですね」


「上?こういうのってのはさ。地下室に監禁とかってーのが定番じゃねーのか」


 マリィさんの質問に僕が改めて賢者様の位置をチェックして答えると、それを聞いた元春が頭の上に疑問符を浮かべる。

 なんとなくイメージで元春が言わんとすることも分からないではないのだけれど……、


「場所が高層ビルとなると、人を閉じ込めるなら下より上の方がいいんじゃないのかな」


 ビルの地下というのはせいぜい五階くらいというのが僕の勝手なイメージだ。

 それならビルの上層階に閉じ込めておいた方が逃がす確率は少ないのではないか?

 そういう観点から上層階に監禁しているのではないだろうか?

 そう自分の考えを話す僕に、元春は「ふむん」と鼻を鳴らすようにして、


「でもよ。高いビルの上に捕まえられてるなんて、なんだか囚われの姫って感じだな」


「確かにお姫様は高い塔に閉じ込められてるって印象はあるね」


 まあ、別の意味で囚われの姫とほぼ同じような立場の人ならすぐ傍にいるんだけど、それはそれとして、


「取り敢えず非常階段を探さないとね」


「うん?エレベーターは使わねーのか?」


「エレベーター?」


 元春の声にオウム返しに聞いてくるのはマリィさんだ。翻訳魔導器(バベル)によってその言葉自体は伝わるものの、意味までは伝わっていないようだ語尾のトーンを上げて聞いてくる。


「あそこにあるのが多分そうですよ。なんて言ったらいいかな。

 ええと、高い建物の上下をつなぐ昇降機ですか」


「ラインフローターのようなものですか?」


 マリィさんの質問に対して僕がホールの奥にあるいくつも並ぶ扉に向けて視界を振ると、マリィさんが聞きなれない名前を出して訊ねてくる。

 なんでもマリィさんの世界には、RPGなどのギミックなんかにありがちな魔動式の昇降機が存在するそうだ。

 考えてもみれば、万屋でも魔獣の素材を運ぶ魔具としてフローティングボードなどを取り扱っている。

 たぶんアレを豪華にしたものがエレベーターとして使われているんだろう。


「しかし、どうしてそのエレベーターを使いませんの?

 その方が早くロベルトのもとへと辿り着けると思うのですが……」


 マリィさんの指摘にアニマさんも動揺のことを考えたのだろう。なにか訴えるような視線を向けてくるのだが、


「エレベーターには監視装置がついているのが基本ですからね。監視に引っかかる可能性を避けるのと、なによりKE11は凄く重いですから」


 そう、実はこれが一番切実な問題なのだ。

 起動した時点でKE11にはいちおう荷重軽減の付与魔法が発動しているのだが、それでも装備するアダマンタイトの鎧が重すぎて、そのスレンダーなフォルムに似つかわしくない相撲取りよりも重い体重を秘めていることになるのだ。

 この世界のエレベーターの積載重量がどの程度なのかは分からないが、余計なトラブルは避けた方がいいだろう。

 そんな僕の説明にマリィさんも、そして、早くつけるのにという言葉に反応していたアニマさんも納得してくれたみたいだ。

 ようやく見つけた非常階段に忍び込み、登り始めたところで今度は元春が、ブルーのライトに照らされる非常階段を登るアニマさんのお尻を映すメインモニターをニマニマと見ながら聞いてくる。


「人を拉致るような組織にしてはいまのところ普通の宗教って感じだな」


 元春としては賢者様が拉致されたと聞いて、神秘教会なる輩のことを怪しげな宗教団体とイメージしたのかもしれない。

 だが、以前、賢者様から聞いた話によると、この神秘教会はこの世界で二番目に信者数が多い宗教団体だという。


「賢者様にしたようなこともしているみたいだけど、それは一部の人がしていることで、表向きはちゃんとした宗教組織なんじゃない」


「そりゃそうか。俺等の世界でもそういうのはあるもんな」


 元春の言う『俺等の世界でも――』と言うのは、たぶん何十年も前から続く、過激派などと呼ばれている組織が引き起こすテロ行為の事を言っているのだろう。そう、宗教というのは多くの人を救うのと同時に、多くの人の人生を狂わせてしまうという側面も持っているのだ。


「ですが、全く何もないというのも逆に不安になってきますわね」


「泳がされている――という可能性もあるかもしれませんけど、単純に気付かれてないという可能性もありますよ。なにしろKE11はウチのオーナー(ソニア)が作ったゴーレムですからね。この世界のゴーレムを遥かに上回るようなスペックを持っていたとしてもおかしくはありませんから」


「たしかに、装備している鎧からして規格外のものですからね。アイテムボックスのような機能まで使えるとなると、それこそ国宝などと呼ばれるものにもなりかねませんし」


 僕に褒められて嬉しそうに照れるソニアの一方で、マリィさんはどこまでも自分の趣味に正直だ。KE11が装備するアイテムの数々を熱のこもった言葉で品評する。

 それでなくともKE11の素体になっているのは、もともとこの組織が密かに賢者様を捕まえる為にと送り出した隠密仕様のゴーレムなのだ。

 それをあれやこれやとソニアが改造したとなれば、その性能は格段と跳ね上がっていてもおかしくはないのではないか。

 相手がこちらの動きを見つけられないのはまた当然のことなのではないか。

 そんな話しながらも警戒を切らさず、長い長い階段を登っていくと、ついに賢者様がいるらしきフロアに到着する。


 そこは地上四十五階、一階フロアから約百六十メートルほど登った場所だった。


『虎助様、マスターはどちらにおられるのでしょう』


「えと、待ってくださいね。いま調べますから」


 アニマさんが非常階段の入口から外を覗き、急かすように聞いてくる。

 僕はアニマさんの声にアダマンタイト製の兜に付与されている探知の機能を発動させる。

 実はこれ、先日、アヴァロン=エラに迷い込んできた蛇竜の素材を使って作った魔力センサーだったりする。

 僕はそんなセンサーによって読み取った周囲の状況から賢者様の位置を予想する。


「そうですね。この階にはけっこう人がいるみたいですけど、――たぶん、この反応が賢者様ですね」


『では、すぐに助けにまいりましょう』


 さすがにここまでくるとアニマさんの抑えも効かなくなってきているようだ。

 僕はデータから作り出した簡易マップで賢者様の位置を知り、ずんずんと先に進もうとするアニマさんを軽い手振りで抑えつつも、このフロアで活動する他の人達に出会さないようにとセンサーを併用して慎重に廊下を進み、ついに賢者様まで数メートルという位置まで辿り着く。

 だが、その場所は部屋へと通じる扉も何もないただの廊下で、


「行き止まり?」


「どっかに隠し扉でもあるんか?」


「もしくは他の階層から直通の通路があるかですわね」


 明らかにその先から反応があるのに、そこへと繋がる通路が見当たらない。そんな廊下に元春とマリィさんがそれぞれに可能性を口にするのだが。


「ここまできてから時間をかけるのは面倒ですね」


 そう呟いた僕はここはさくっと本人に聞いてみようと賢者様との通信回線を繋いでみる。


「賢者様、賢者様。たぶん追いついたんですけど、いま、どこにいるんです?」


『意外と早かったな。

 しかし、どこにいるってのはどういうこった?

 俺は普通にこの裁判所まで連れてこられただけだぞ』


 賢者様の反応を察するに別に特殊な通路を通ってその場所にたどり着いたのではないらしい。


「裁判所?あの、裁判所ってなんのことです?」


『ああ、なんていうか、あれだ。俺がアニマを生み出した罪を奴等が裁くんだとよ』


 そして、賢者様の説明の中にあった違和感を感じる言葉、その言葉の意味を訊ねるたところ、賢者様は今、このビル内でホムンクルス製造の罪で裁かれようとしているのだという。


『私を生み出した罪を裁く?理解不能ですね』


 それに対してアニマさんが、冷静なようで明らかに嫌悪感を感じる声を漏らし、元春がこんな心配を口にする。


「でもよ。これってちょっちタイミングがよすぎねーか、こっちの動きがバレたとか」


「かもしれないけど、だったらこっちにもなにかのリアクションがあってもいいハズだよね」


 だが、今のところそんな気配はない。

 ということは、ただ単純に賢者様に対する処遇が早まったということではないか。

 しかし、それと同時に、僕達が見つかっていないのなら、なんで急にそんな事に?

 原因がなんなのか気になりはするのだが、すでに裁判が始まろうとしているこの状況でそれを探っているような余裕はない。

 こうなってくると、少々のリスクは承知の上で急いだ方がいいのかもないな。

 そう心の中で呟いた僕はアイテムバッグの機能を使い、一振りのナイフをKE11に装備させると腰を低く構えさせて――瞬斬。


「何したんだ?」


「壁を斬ったんだよ」


 元春の疑問に答えながらもKE11が装備するガントレットに付与された〈誘引〉の魔法効果を使って、切り取った壁を引っ張り出す。


「おお、なんかかっちょええな。空切か?」


「あれは僕にしか使えないようになってるからね。いま使ったのは違う武器だよ」


「あら、そのナイフ、思っていたよりも鋭い斬撃になるのですね」


「マリィさんは知ってんすか?」


「知っているかって――、この武器は(わたくし)と虎助の共同開発したものですから当然知っていますわ」


 いま壁を斬るのに使ったナイフは、数々の漫画などの知識を参考にマリィさんと共同開発した高周波ブレード。あくまで対物・対ゴーレム用に設計した魔法剣であるが、抜群の切れ味を誇る魔法武器なのだ。


「共同作業とか、俺も呼べよ」


「いや、これって元春がアヴァロン=エラに来る前に作ったヤツだから」


『あの、それよりもマスターを――』


 と、下らない言い合いをしている場合じゃなかったね。

 アニマさんに『早く』と促された僕は、


「じゃあ、KE11が先に入って周囲の状況を確認しますから、アニマさんは後ろの警戒をお願いしますね」


 僕からの指示にしっかりと頷くアニマさん。

 そして、


『マスター待っていて下さい』


 僕達は壁に開けた人一人が這って通れるぐらいの穴を通って賢者様が待つ裁判所とやらへと足を踏み入れるのだった。

◆分かり辛いかもしれませんが「虎助・元春・マリィ」は通常の会話をしていて『ロベルト・アニマ・プル』は念話(テレパシー)による通信となっております。

 移動中、アニマの口数が少ないのは潜入中、なるべく静かにするようにという配慮によるものです。

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