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スタンピード(後編)

◆暑中お見舞い申し上げます。皆様、お盆休みいかがお過ごしでしょうか。作者はいつものように小説を書いています。暑いです。ちょうど部屋の前にある木に止まるセミを近所の猫が何匹も何匹も食べていっています。コンビニ感覚なのでしょうか。駄文でしたね。

 それでは今週の一話目をどうぞお楽しみください。(次話は水曜日を予定しております)

「邪龍っていうとコイツも龍種になるのか?」


「いえ、蛇の竜と書いて蛇竜、一応サーペントドラゴンなんて呼ばれているようですが、精霊じゃない方のサラマンダーとかと同じ下等竜種という括りに入るみたいですよ」


 アヴァロン=エラに降り立つなりのマリオさんとした軽い商談、そして古いパニック映画のような展開からの賢者様と魔王様のご来店と、目まぐるしく代わる状況の最後に現れた巨大な蛇のような下等竜種を見上げて、賢者様がしてきた疑問に僕が答える。

 因みに説明を終えた後でふと気になったのだが、説明の途中に入った漢字による微妙なニュアンスの違いはどのようにして翻訳されているんだろう?

 僕が自分の説明につい埒もないことを考えていたところ、


「それにしては迫力がねぇか」


 賢者様がこう言ってくるけど、そんなに言う程の相手かな?

 リドラさんにヴリトラと、ここ最近、何かにつけて龍種に関わってきた僕からしてみると、迫力という点でなら、この蛇竜はせいぜいスカルドラゴンとか、その程度の迫力しかないような気もするけど……。

 まあ、賢者様からしてみたら、前に出くわしたリドラさんもこの蛇竜もドラゴンと称するに違いない迫力を持っているように見えるのかもしれないな。

 とはいえ――、


「下等竜種とはいっても、場合によってはダンジョンの主として君臨するような類の竜みたいですから、下手な龍よりかは強いのかもしれませんね」


 龍と一口に言っても、その実力はピンからキリだ。

 なかには魔鳥がそうであるように、飛行に特化した体を持つ龍もいたりして、例えばフォレストワイバーンなどのように、スピードの他は下位の竜種とあまり変わらない身体能力の龍も存在したりする。

 だから、その逆もまた然りで、下等竜種でも育つ環境によっては龍を圧倒する力を得ることだってあるのだ。


「それでどうします?」


「いやいや、どうしますって――、普通こういうのって逃げの一手なんじゃねぇのか?」


 はて、前にリドラさんに遭遇した時はもっと威勢のいいことを言っていたと思うんだけど……、

 やはり、敵が目の前に現れたともなると違うものなのだろうか?


 僕は賢者様の慌てように微妙な矛盾を感じてしまうも、その考えがまとまる前に敵が動き出す。

 とぐろを巻いてこっちの様子を伺っていた蛇竜が、ぬるり。その長大な体を解きながら地面を滑るように向かってきたのだ。

 蛇竜からしてみたら、僕達は突如として目の前に現れた獲物になるのかもしれない。

 降って湧いたごちそうを逃す手はない――とばかりに思っているのかどうかは分からないけど、地面を這ってするすると近付いてくる蛇竜に「オイオイオイオイ、どうすんだよ」と賢者様が慌てたように肩を揺さぶってくるので、


 ちょっと実績がもったいない気もするけど、このまままっすぐ向かってきてくれているのなら丁度いいかも。


 僕は蛇竜の動きを冷静に観察、魔法窓(ウィンドウ)を開くと、とある項目を呼び出して座標指定を行うとOKボタンをタップする。

 すると、その直後、僕達に向かってきていた蛇竜の上に巨大な鉄塊が落とされる。

 それは万屋の看板代わりになっているモルドレッドが持つ剣だった。

 僕達を狙い、股下を通り抜けようとした蛇竜に対して、モルドレッドがその手に持つ巨大な剣を首元に突き下ろしたのだ。


「いっ!? ――いまの虎助少年がやったのか?」


 跳ね飛ばされた蛇竜の首を呆然と目で追い、賢者様が驚いたように聞いてくる。


「はい。パターンはあるんですけど、僕も少しだけならモルドレッドが動かせるんですよ」


 そう、今の一撃は僕が遠隔操作でモルドレッドを操って行った攻撃だった。

 いや、どちらかといえば設置型の罠というべきか。

 ベヒーモに鋼鉄の山羊にヴリトラと、ここ数ヶ月の間にも人間一人の攻撃力ではなかなか対処が難しい相手がやってきたこともあり、ソニアを呼び出すまでもなく、僕の独断でモルドレッドを動かせないかと、以前からソニアに相談していたのだ。

 今回はちょうど蛇竜がその攻撃の範囲内に飛び込んできたくれたから、試運転にちょうどいいのではと使ってみたんだけど……、


「呆気なかったな」


 ぐったりと動かない蛇竜を見て賢者様が呟く。

 ヴリトラ戦ではあまり活躍できなかったモルドレッドだが、本来モルドレッドはああいう巨大な魔獣を倒す為に作られたゴーレムだ。きちんとその能力を発揮する機会があれば、圧倒的な力で敵を押し潰すことができる。

 しかし、こんなにあっさりと倒せるなら僕がふつうに倒しても良かったのかもしれないね。

 とはいえだ。終わったことをどうこう言っていても仕方がない。

 後はエレイン君達に解体をお願いすればこの騒動も収束かな?

 僕が首を刎ねられた状態の蛇竜の胴体を見て、そう心の中で呟いていると、倒したハズの蛇竜の胴体がもぞもぞとその細長い体をくねらせるように動き出す。

 まさか、頭が切られても死んでない?

 いや、相手は強力な魔獣だ。本体さえ無事ならば再生するとか、その程度の特徴は持っていてもおかしくはない。

 倒したハズの蛇竜の体がうごめくのを見て、警戒を強めた次の瞬間、切られた首の部分から大量の血液を噴射される。


「え、な、なんだ!?」


「血が吹き出した――、だけ?」


「……違う。血が蛇になる?」


 復活するのかと考えた直後に起きた大量出血に、もしかしてこれだけ?と賢者様が驚き僕が呆ける目の前で、魔王様が言う。

 すると、実際に切り口から吹き出した血液が蛇の姿を形取る。

 僕はそんな真紅の大蛇を目の前に誰にともなくこう訊ねかける。


「えと、復活?はしたみたいなんですけど、蛇竜にはそういう能力があったりするんですかね?」


「さてな。そもそも俺は蛇竜なんてのにあったのも初めてだから分かんねぇよ」


 そして、僕が賢者様と意味のない会話をしている間にも、蛇竜あらため血の蛇竜――言うなれば血蛇竜が動き出してしまったので、


 ともかく迎撃をしないと――、


 再度、僕はモルドレッドに攻撃をするように司令を送るのだが、血液のみで形成された血蛇竜には物理攻撃は聞かないみたいだ。

 モルドレッドによる一撃はバシャッと水音を立てただけでダメージを与えられなかった。

 一度は形を失った血蛇竜がモルドレッドが持つ巨大な剣に絡みつくように再生する。

 どうもこの血蛇竜は、まさしくそのまま液体が生命と化した存在に変化してしまったようだ。

 いや、もしかすると、この血液そのものが蛇竜を操っていたという可能性もありえるのか。

 色々と気になる部分は多いのだが、


 どうしよっか……、


 まずはこの血蛇竜を仕留めないことにはどうにもならない。

 ということで、僕が取り出したのは既におなじみとなっている氷のディロックだ。

 相手が液体なら単純に凍らせてしまえばそれでいいんじゃないかと考えたのだ。

 瞬発的な思考により、僕がマジックバッグから取り出した氷のディロックに魔力を込めようとしたところ、血蛇竜がぐりんと頭をこちらに向けててくる。

 そして、魔王様がディロックに魔力を込める僕の手を掴んで止める。


「魔王様?」


「……ダメ、たぶん魔力の高まりに反応している」


 どうやら血蛇竜は魔力に反応して襲い掛かってくるみたいだ。

 魔王様がどういう風にそう結論したのかは不明だが、魔王様が適当なことを言っているとは思えない。

 だが、魔力に反応するとなるとこっちはどうなのか、僕が手元に浮かんだ魔法窓(ウィンドウ)に目を落とす。

 しかし、魔法窓(ウィンドウ)は自然に体から抜け出す程度のごく低出力の魔力で動いているからか、あの血蛇竜の気を引く程の魔力ではないようだ。

 だったらこれを利用しない手はない。

 僕は魔法窓(ウィンドウ)を使って、瞬間的に血蛇竜を囲むように結界を作り出す。

 凍らせることが出来ないなら、取り敢えず隔離してしまえばいいと考えたのだ。

 しかし血蛇竜は、魔王様の予想した通りというべきか、自分の周りに一瞬で形成された結界にもの凄い反応を見せる。

 すぐに自分を取り囲んだ結界に食らいついたかと思いきや、その牙から酸性の毒でも流し込むかのように強固な結界を溶かすように壊し始めたのだ。

 これに驚いたのが賢者様だった。


「おいおい、ここ(ゲート)の結界をブチ破ろうだなんてどんだけなんだよ」


 万屋の結界はとある大魔王の攻撃すらも受け止めたという実績を持つ結界だ。それがたった一噛みで小さくはあるのだが穴を開けられてしまうなんて、賢者様からしてみると信じられなかったのだろう。

 しかし、僕に賢者様ほどの驚きは無い。

 ゲートを一つの装置としたこの結界が破られる可能性があることを、事前に製作者であるソニアから聞かされていたのだ。

 いや、これはどちらかと言うとこれは結界の魔力を吸収しているのかな。

 僕は結界を溶かして食べるような動きをしている血蛇竜にそんな予想を立てながらも、結界に阻まれている今のうちにと、改めて氷のディロックに魔力を流す。

 そして、結界を破壊して外へと這い出そうとする血蛇竜の目の前に投げ落とすと、ディロックの発動タイミングを待って、虫食い状態になってしまった結界を解除。

 次の瞬間、氷の花が血蛇竜の体を飲み込むように咲き乱れる。

 これで、今度こそ動きが止められるかと思ったが、氷のディロックでは完全に血蛇竜を凍らせることは出来なかったみたいだ。

 血蛇竜はバキバキと凍った全身にひびを走らせながらも氷の花を食い破るように進んでくる。


 ふむ、やはりこの血蛇竜は魔力を吸収する能力のようなものを持っているみたいだ。


 そんな血蛇竜の姿を目に賢者様が忌々しげに舌打ち、


「厄介な相手だな。やっぱこりゃ逃げるしかねぇだろ」


 たしかに物理攻撃が無効な上に、魔法まであるていど無効化されてしまうとなると、逃げるしか手が残されていないように思える。

 だが、結界を食い破るこの血蛇竜を放っておく訳にはいかない。

 魔力に反応しているとなると、万屋は勿論、ソニアの体が眠るバックヤードが襲われるなんてことにもなりかねないのだ。


 だからコイツはここで倒す。


 しかし、どうやって倒したらいいのものか。

 簡単に思いつく可能性といえば飽和攻撃だ。

 魔力の無効化にしろ、吸収にしろ、あの血蛇竜が対応できる以上の魔法攻撃を持って圧倒すれば倒せなくはないだろう。

 この場でそんな攻撃を行うことができるのは魔王様くらいなものだ。

 しかし、その役目を魔王様(お客様)に押し付けてしまうのは申し訳ない。

 たぶん魔王様ならお願いすればやってくれはするだろうが、積極的に手伝ってくれるマリィさんと違って魔王様は基本的にあまり好戦的な性格をしていない。そんな魔王様に戦いを矯正するのは僕の本意ではない。

 なんにしても、このアヴァロン=エラを管理しているのは僕達なのだ。

 まずは僕の手でもどうにかできる方法を探してから、どうしても駄目だった場合に頭を下げるくらいでないといけないだろう。

 ということで、なにかこの血蛇竜に対抗できる手立てはないものだろうかと僕が頼ったのは、魔法窓(ウィンドウ)から検索できる様々な情報だ。

 周囲の魔鳥に対処しながらも血蛇竜を気にしてくれているエレイン君達や、上空からの監視をしてくれているカリアが集めてくれたデータを元に、バックヤードに血蛇竜に対抗できる何らかの武器やアイテムが存在しないかと検索をかけてみたのだ。

 すると、いくつかの魔法やマジックアイテムがリストアップされ、僕がその中から目を付けたのは、以前この世界にやって来たジャングルクラブから回収したという吸水性の高い土だった。

 マングローブに暮らし、その保水性を利用して甲羅の上に小さな森を形成していたジャングルクラブの土を使えば、血蛇竜の動きが止められないかと考えたのだ。

 まあ、血蛇竜を形取る血液を全部吸い取ったとしてどうなるのかは未知数だが、どちらにしても、これ以上状況が悪くなることはないだろう。

 そう結論した僕は近くにいたエレイン君の口を通じてこちらにジャングルクラブの土を送ってもらう。

 すると、送られてきた泥団子のような焦げ茶の物体を見て賢者様が訊ねてくる。


「ん、そりゃなんだ?」


「えと、相手が液体ということで吸水性の高い素材を取り寄せてみたんですけど――」


「ああ、たしかに血にはナプキンだな」


「…………」


 うん。賢者様の下世話な冗談はともかくとして、僕は僕達を巻き込まんと迫る血蛇竜にジャングルクラブから採取した土で作った土団子を投げ込んでみる。

 もしかするとこの土団子も、魔法と同じように溶かされるかもしれないとも思ったりもしたのだが、あれは魔力――、もしくは魔法限定の能力で物理的な効果は無かったみたいだ。

 考えてもみれば血竜の体が酸性みたいな状態だったら、周りにもっと被害が出ていたハズだ。

 血蛇竜が這った地面にそれが見られないことから物理的な効果が無いことは明白である。

 だからといって、土団子を一つ投げ込んだだけでは変わらない。巨大過ぎるその体に対して土団子一つくらいの吸水力では焼け石に水状態なのだから。

 ということで、僕は蛇竜の出現に伴って残った魔鳥の対処を引き受けてくれていたエレイン君の一部をこちらに回してもらって血蛇竜に土団子をぶつけていく。


 因みにその間、賢者様と魔王様には遠巻きに見守っていてもらっていたのだが、魔王様は自分にも何かできないかと思ってくれたのか、ありがたいことに小規模な植物系の魔法を使って自主的に血蛇竜の足止めに協力してくれていた。


 と、そんなこんなで数分間、僕がディロックで、魔王様が植物系の魔法を囮に血蛇竜を引きつけて、その間にエレイン君達が大量の土団子をぶつけていったところ、血蛇竜は赤黒い土の体を持つに至り、その重さのせいだろう。動きも随分と鈍ったようだ。


「つか、これってヒドくね。見た目、完璧イジメみたいになってんだけど」


「それだけ危険な相手ってことでご容赦お願いします。 でも、これ以上は使っても意味ないみたいですね」


「そうだな。 しっかし、こっからどうすりゃいいんだ。血を吸収して物理攻撃が効くようになったのはいいけどよ。血の蛇が粘土みたいになっただけで倒せねぇのは変わんねぇんじゃねぇのか?」


 たしかに賢者様の言う通り、ジャングルクラブの甲羅から採取した土に血を吸わせたことにより、攻撃が通りやすくなった。

 だが、体が粘土のようになってしまっても、その再生能力は相変わらずのようだ。

 しかし、それに対するアイデアは血蛇竜に土団子をぶつけている間に思い付いていた。

 僕が賢者様の疑問に答えるように取り出したのは血のような赤い液体が入った小瓶。

 それは、前に採取したものはいいものの、イマイチ使い勝手の悪く、バックヤードに眠っていたサラマンダーの火血。

 ニトログリセリンのようなこの火血を、僕はその容器ごと血蛇竜に叩きつける。

 すると、火血という名前が示す通り、爆発的に炎が立ち上り、真っ赤な炎が血蛇竜にまとわりつく。

 サラマンダーの火血により発生した炎は、まるで火炎瓶のようにその血がすべてなくなるまで燃え続けるのだ。

 そう、魔法が吸収されてしまうなら、魔法以外の方法で同じような現象を起こしてやればいい。

 そして、凍らせても動きを止められないというのなら血液そのものを蒸発させてしまえばいいのではないか。

 サラマンダーの火血を使った僕の作戦を見て、賢者様が呟く。


「エグいこと考えるな」


「僕もそう思うんですけどね。こうでもしないと倒せないかなと思ったものですから」


「たしかにな」


 軽口を叩きながらも自らに纏わりつくように燃える炎に悶え苦しむ血蛇竜に油断のない視線を送る僕達、そして焼き上がりを待つ間の片手間に、僕達が結界内部にまだ残っている魔鳥の処理をしたり、魔王様が言っていたメガブロイラーやら首チョンパされた蛇竜の本体を解体していたところ、血蛇竜型粘土細工の素焼きがついに完成したようだ。


「で、コレどうすんだ?」


「えと、とりあえず鑑定をしてみようかと思ってるんですけど、何かに使えますかね?」


 素焼きのオブジェように固まってしまった血蛇竜を見上げ訊ねてくる賢者様に、僕は苦笑を浮かべながらも〈鑑定(アナライズ)〉の魔法を発動させる。

 躍動感ある蛇の焼き物というのは一部の好事家にジャストミートな造形ではあるが、この店の立地を考えるとこれを売り捌くのはかなり難しいだろう。

 そうなると素材としての価値が重要になってくるからだ。

 ということで、素焼きになった血蛇竜を鑑定魔法にかけてみたところ、どうも素焼きになった血蛇竜は竜血石なるアイテムに変化を遂げていることが判明する。

 その鑑定結果を聞いて驚いたのは賢者様だ。


「竜血石だと」


 曰く、竜血石という素材はダンジョンなどの奥深くで稀に見つかる特殊な魔石とのことだ。

 錬金術士の間では、遥か昔に死んだドラゴンの血液が化石になって発見されているのではないかと噂されていたそうだが、まさか下等竜種の血液を焼き固めることによって作られたものだとは思わなかったという。

 いや、ジャングルクラブの泥土を投げ込んだり、サラマンダーの火血を使って焼き固めた事を考えると、一概にただ下位竜種の血液を蒸発させただけで、それができるとは限らないのだが、現物はここに大量にあるのだ、細かい見分は後に回せばいいだろう。

 ということで、僕はすぐに竜血石と化した血蛇竜を三等分に、頭と尻尾の部分を賢者様と魔王様で分けてもらおうとするのだが、魔王様は好きで手伝っただけだからと、賢者様は惜しそうにしながらも自分は手伝っても居ないからと受け取ることを拒否した為に、とりあえず竜血石は僕の預りとなり、なにかあったらすぐに譲り渡しますからとバックヤード送りとなった。

 そんなこんなで全ての後処理を終えた僕は――、


 さて、血蛇竜の処分が決まったところで早く万屋に戻らないと、マリオさんも随分待たせてしまっているし、元春も心配だから。

 まあ、万屋にはベル君がいるから滅多なことは無いと思うけど……。


 万屋に残してきた二人を思いながらも、魔王様と賢者様を引き連れていそいそと万屋へ向かうのだった。


◆????


「それで、なんでこんなことしたのかな?」


「だって、君だけ自由に動き回ってズルイじゃん」


「いや、ズルイって、僕達の任務を忘れたのかい?」


「あの人達の監視でしょ。だから手っ取り早くいい感じの魔獣を送り込んで試してみたんだけど?

 というか、じっとしてるのは性に合わないんだよね」


「それにしても、あれはやり過ぎだったよ。

 もしも、彼等がアレ(・・)に対応できなかったらどうするつもりだったんだい?」


「ああ、実際、あそこまでになるなんて思わなかったんだよ。もともとあったものを利用しただけだから調整も出来ないしね。

 でも、あれであそこが潰れてもそれならそれでよかったんじゃないの。マスターもあの人達にあんまり力をつけてもらっても困ると思うし」


「ああ――、

 でも、それは今更かもね。

 だって、彼等はこれだけ魔法金属を売りに出せるくらいの生産能力を持っているからね」


「それって、もしかしてオリハルコンとか?」


「いや、そこまでの生産能力はまだだと思うけど、いずれはそうなるんじゃないかな」


「……もう、いっそのこと潰しちゃった方が早くない?」


「別に君がそう判断するなら僕は止めないよ。

 僕等はあくまで同列の存在であって命令権とかはないからね。

 でも、そうしたら、君そのものが機能停止させられちゃうと思うけど」


「それは困る~」


「だったら、君は君の仕事をしっかりしてよ」


「だからしてるじゃん。

 ――ってゆうか、そもそもボクに監視任務をさせるのが間違ってるんだよ。役割の交代を要求します」


「僕にそんなこと言われても――、

 性格的、性能的に適材適所として選ばれたと思うんだけどね」


「性能ってものは否定しないけど、性格ってのはどうなのさ?」


「君の場合、他の任務に携わると、ぜんぶ力でゴリ押しってなるでしょ。

 それだと僕等としても彼等としてもマズいことになるんだよ」


「ホント、面倒くさいよね。マスターもなに考えてるんだか」


「だから、それはさっき説明したよね」


「でも~」


「……もう仕方ないな。今度、君がおおっぴらに動けるなにかを考えておくよ」


「ホント、やったぁ」

◆竜血石……インゴットを生成する際に混ぜ込む事によって、ミスリルなど、下位魔法金属を生成する事が可能。その他にも万能薬にハイポーション、ブレイブポーションと上級魔法薬の素材に触媒にと利用法が多い希少素材。龍の血や触媒としてのエリクサーの劣化版ともいえる素材である。


◆最後の会話部分を少々修正いたしました。

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