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量産型ゴーレム(後編)

◆先週からの続きです。次話の投稿は水曜日を予定しておりますが、台風の影響から少し遅れてしまうかもしれません。

「なんてこった、まさか俺がしくるとはなー」


 揉めども揉めども現実は変わらず、元春は手の平に乗せたおっぱいスライムをじっと見る。

 僕はそんな落ち込む元春を慰めようとするというよりも、むしろおっぱいスライムなんてものに宿ってしまった原始精霊を励ます為に、元春の手元に漂う魔法窓を引き寄せて言う。


「でもさ、このおっぱいスライムが持ってる特技って、意外と凄い力じゃないのかな」


「そうですの?」


 僕のフォローにいぶかしそうに目を細めるマリィさん。


「ええ、特にこの〈乳液噴射〉なんてサバイバルに使えそうですよ」


 おっぱいスライムが噴射する乳液とは――つまり母乳ではないか。詳しく成分分析をしなければならないだろうけど、ちゃんと検査をして、もしも飲用可となれば、非常時のエネルギー源としてかなり有用な特技なのではないか。

 僕としてはそう考えたのだが、元春としては不満があるようだ。


「つか、絵面が悪すぎるだろ!!」


 実際、おっぱいスライムがどこから乳液を出すのかは想像でしか無いのだが、おっぱいスライムから母乳を飲まさせられる元春なんて、それはそれはもう犯罪的なイメージしか思い浮かばない。

 僕が脳裏におっぱいスライムから母乳を与えられる元春の図を想像し、微妙な顔をしていると、


「虎助、もう一枚だ」


 おっぱいスライムのことはもういいと元春がやけくそ気味にそう言ってくるのだが、


「別にいいけど、二枚目からはちゃんとお金を払ってよ」


 一枚目は、元春がこの万屋にもたらしてくれる貢献といつも仲良くしてくれてありがとうって意味で、無料(タダ)でカードを渡してあげたのだが、それ以上ともなるとさすがに無料(タダ)という訳にはいかないだろう。

 〈スクナカード〉のおかわりをきっぱりと断る僕に、元春はまるでこの世の終わりとばかりに顔を歪める。


「でも、安い方のカードの方なら、元春にも手が出せるんじゃない?」


「安いのじゃ微妙なスクナしかできねーんだろ。そんじゃ俺の計画が成立しねーんだよ」


「というか、元春の計画がどんなものなのかは知らないけど、スクナに与えられる能力を全部その計画に関する回せたのなら、ミスリルくらいのカードでも十分に目的が達成できると思うけど」


 まあ、それを実現させる為には、スクナを形成する際に強固なイメージの構築が必要なのだが、おっぱいスライムなんてスクナを作り出した元春ならば、それも可能なのではないか。そんな僕のアドバイスに元春は、限りなくいい方向に捉えればつぶらとも言えなくはない瞳に仄暗い光を宿してこう呟くのだ。


「つーことは能力の殆どを見た目に振ればミスリルでもイケるんか。……でもな、一回五千円のガチャはなー」


 いや、ガチャとかって……、ソニアが一生懸命作った〈スクナカード〉をそういう言い方で表現するのはやめて欲しいんだけど――。

 とはいえ、いまも漏れ聞こえる妄想から察するに、元春にとっては本当にガチャ感覚なのかもしれない。

 そんな欲望を垂れ流しにする元春に僕が注意しようかどうしようかと迷っていたところ、マリィさんが聞いてくる。


「そういえば、攻撃を受けてスクナがやられるとどうなりますの?」


 マリィさんは魔法剣の試し切りやらなんやらでペーパーゴーレムを使う機会が多い。

 故に触媒をもとに形成されたゴーレムがやられたらどうなるのかを何度もその目にしてきた。

 だから、同じくカードを触媒に形成されたスクナがやられた場合、二度と復活できないのではと考えたのかもしれないのだが、それは違う。


「それはペーパーゴーレムと一緒で触媒の状態に戻りますよ。

 ただ、スクナの場合はもとが金属製のカードですから、ゴーレムの状態を解除されても、魔力を込めれば何度でも使えるようになっていますけどね。

 とはいえ、やられ方によっては宿っている精霊にもダメージがある場合がありますから、その場合は一定時間の回復が必要ですけど」


 そもそも、ペーパーゴーレムが破れてしまうのは、使い捨てを前提として作られているからという理由があって、式神として召喚されたゴーレムがそのダメージをさばききれない素材を使っているのが原因だったりするのだ。


「つまり、ゴーレムの素体となるものに、それなりの素材さえ使っていれば強力な攻撃を受けても破壊されることはないと?」


「そうはいっても、スクナがやられて、その上でカードまでもを破壊するような強力な攻撃を受けてしまいますと、さすがに復活は不可能になってしまいますけどね。

 でも、マリィさんが選んだ〈スクナカード〉オリハルコン製のカードですから、滅多なことでは壊れないと思いますよ」


 たぶんワイバーンとか比較的攻撃力の低い龍種のブレスくなら、直撃を食らったとしてもカードだけは残るハズだ。

 それに、たとえカードそのものが破損してしまったとしても、厳重な防護措置がなされカードコアの中に埋め込まれているゴーレムコア(インベントリ)さえ無事ならば、カードを再生することだって可能である。

 そこまで聞いたところでようやく安心してくれたみたいだ。マリィさんは不安そうにしていた表情をホッと緩め。


「とりあえず簡単に破壊されることはなさそうですね」


「ですね」


「しかし、同時に、どの程度まで耐えられるのかは調べておいた方がよさそうですわね」


 たしかにスクナの耐久限界を知っておくのは重要なことである。

 限界を知れば、最悪の事態も手元に戻し、カード化することでスクナの破壊を回避できるからだ。


「でしたら、ペーパーゴーレムを相手にして実験してみます?」


「そうですわね。しかし、ここでそれを執り行うのは――」


 マリィさんの言う通り、スクナが小さいといえど、さすがに耐久試験などといったものは店内でやるべきことではない。

 ということで、僕達は新しい〈スクナカード〉を買おうか買うまいか悩む元春や、シュトラを構いたおしていた魔王様を引き連れて、店に併設された訓練場へと移動。


「それで何から試しますか?とはいっても、無理やりダメージを与えるのは可愛そうですから、実戦形式で戦ってみて、手元の小窓(ウィンドウ)で魔力量を図るくらいしかできないでしょうけど」


「いえ、耐久力の見分の前に、まずは〈ブレードチェンジ〉という特技ですか?それを試してみようと思いますの」


 そう言ってマリィさんは、顔の横を飛んでいたアーサーに目線を送り、訓練場の中央へ移動するように促すと、


「それで、この〈ブレードチェンジ〉という特技はどうやって使えばいいんですの?」


「ふつうにマスターが使えと命令すれば使ってくれますよ。他にも召喚時に手元に出現する小窓(ウィンドウ)からも指示が出せるようになっているハズです」


 僕がスクナに対する指示方法を教えてあげると、マリィさんは口頭での命令を選んだようだ。ドラゴンの背に乗り、マリィさんから少し離れた空中で待機していたアーサーに指示を飛ばす。


「アーサー〈ブレードチェンジ〉をお願いしますの」


 すると、マリィさんの命令を受けたアーサーはファフナーの背中の上で腰に刺した剣の柄を前に突き出して、一振りの剣を作り出す。

 それは、輝く太陽のような金色の両刃の刃だった。


「エ、エ、エ、エクスカリバーですって――」


 そう、それはエクスカリバーそっくりの装飾が施された剣だった。

 驚きのあまりか、思わずアーサー達の下へ駆け寄るマリィさん。

 だけれど――、


「マリィさん。アーサーが作り出した刀身はあくまでエクスカリバーによく似ているものってだけですから」


 おそらくその発想もマリィさんから受け継がれているのだろう。アーサーの特技はあくまで自らが思い描く刃を魔法の力を利用して作り出すもので聖剣を作り出すものではないのだ。

 そんな説明をしつつも宥めるように声をかけたところ、マリィさんも落ち着きを取り戻して、


「そ、そうですわね。取り乱しましたの。すみません」


 素直に謝りながらも深呼吸。暴走仕掛けた自分を落ち着かせると、こちらを向いて聞いてくる。


「それで性能はどのようなものでしょう」


「そうですね。いま相手を用意しますね」


 わくわくとアーサーに期待を向けるマリィさんに僕が用意したのはちょっと高価なペーパーゴーレム。

 事前に素体となる人形に命令を直接書き込むことによって単純な戦闘もこなせる特別製だ。

 これを使えばアーサーが作り出した刃の性能を図りながらも、アーサーの耐久実験ができると思う。

 そして始まる小さなゴーレム同士の戦い。


「アーサー。眼の前の敵を薙ぎ倒しなさい」


 マリィさんの命令にアーサーは、騎士らしく剣を縦に構えたと思いきや、プログラムされた行動通り襲い掛かってくるペーパーゴーレムを迎え撃つ。

 ただ、そこは生まれたばかりの原始精霊が頭脳となって操っているからだろう。戦法的な未熟もあって、少々攻撃を受けてしまう。

 しかし、そこはスペックの差なのだろう。アーサーはすぐに体勢を立て直し、危なげなくペーパーゴーレムを退けることに成功する。


「成程……、攻撃をするにしても防御をするにしても一定の魔力を消費するのですね」


 マリィさんが手元に浮かんだ小窓(ウィンドウ)を見て分析するようにそう呟く。

 スクナは所有者の魔力によって動くゴーレムだ。普通に動く分には殆ど魔力を消費しない仕様になっているが、特技を使った時や、直接ダメージを負った場合は、ゴーレムの状態を保つ為に魔力を消費してしまう。

 そして、すべてのエネルギーを使い果たすと元のカードに戻るとそういう仕様になっている。

 簡単に言えばヒットポイントとマジックポイントのゲージを共有している感じだろうか。


 ある程度の検証を終えたマリィさんが『特技』を連続使用した消費がどれくらいのものなのか、アーサーに〈ブレードチェンジ〉何度か使ってみてもらい、その消費量を計算しているところを見て、元春が何気なくこんな事を聞いてくる。


「なあ、これって俺よりも強くね」


「戦ってる間、微妙に魔力が減り続けていた事から見るに〈身体強化〉の特技も併用していたってことになるんだろうけど、元春と戦ったとしても軽く勝っちゃいそうだよね」


 まあ、邪神の眷属を倒す為にいろいろとバージョンアップした鎧を装着した状態なら、さすがに元春の方が強いとは思うのだが、そんなことを言い出したらアーサーだって、特技とは別に装備を用意してやれば元春と同じステージに立てるのではないか。


 ん?そう考えると、別にスクナの強化方法は特技を伸ばすだけじゃないのかな。

 ふと舞い降りたアイデアを僕が簡単な報告メッセージとしてソニアに送ろうとしていると、元春が喚くようにして、


「チートだろ。チート。俺のスライムなんて乳液しか出せねーっての」


 いや、そもそも元春は戦闘用を目的としてスクナに精霊を呼び込んでないよね。

 ただ――、


「アーサーの強さはマリィさんの魔力があってこそだと思うよ」


 スクナの能力はカードに宿った精霊の力にもよるのだが、それ以上にマスター(持ち主)がカードに込めた魔力量が鍵となる。

 たぶん、僕が同じくアーサーを呼び出せたとしても〈身体強化〉の魔法をこれほど強く発動させることはできなかっただろう。

 アーサーがあそこまでの攻撃力を得られたのは、ひとえにマリィさんの黄金騎士に対するイメージ力と、そして、神の供物たるベヒーモすらも一撃で屠り、龍種に手傷を負わせる魔法力があってこそなのだ。

 しかし、そんな考えを元春に理解してもらおうって方が難しいんだろうな。


「クッソ、次はぜってーアクアちゃんみたいな美女を呼び出してやんだからな」


 悔しそうにしながらも、元春は次なるスクナの誕生に闘志を燃やす。

 因みにチート呼ばわりされたマリィさんはといえば、元春の嫉妬などどうでもいいとばかりにアーサーを回収して、ニコニコと上機嫌で、


「では、次は虎助の出番ですね。アクアがどれくらい動けるのか楽しみですの」


「あれ、魔王様はいいんですか?」


 アーサーが作り出したエクスカリバーそっくりの刃に興奮していた所為だろう。ずっと無言だった魔王様の存在を忘れていたようだ。

 僕の指摘に「そ、そうでしたわね」と慌てたように魔王様に気遣わしげな目線を送るマリィさん。

 だが、当の魔王様は特に気にした様子でもなくて、「……虎助の後でいい」と、どうも僕に先を譲ってくれるみたいなのだが、


「とはいっても、アクアの場合、精霊の状態のアクアの特性がそのまま出たって感じですから、そんなに変わらないんですけどね」


 アクアは基本アクアのままである。単にムーングロウを素体にした体を手に入れたことにより、物理的な干渉が容易にできるようになったというだけで、能力自体はそんなに変わっていないのだ。

 僕がものは試しにと〈水繰り〉どんなことができるのか試そうとするのだが、マリィさんとしてはこちらの特技の方が気になったようだ。


「そういえば、この〈ミュージックルーラー〉というのはやはり私が購入した歌魔法ですの」


「というよりも、例の音楽作成魔法がパワーアップしてそのまま特技になっているみたいですね。セイレーンとしての能力もその中に収まっているようですから、音楽作成魔法を伴奏に曲によっていろいろなエンチャント効果があるみたいです」


 小窓(ウィンドウ)に記される簡単なテキストを見るに、例えば楽し気な曲なら俊敏性能がアップ、勇ましい歌なら攻撃力がアップなどと、ゲームに出てくる吟遊詩人や歌姫のようなことができる総合魔法といった感じの特技みたいだ。


「しかし、アクアは完全にサポートタイプという感じですわね。そうなると防御の面で不安が残りますか」


「いや、そこは〈水繰り〉を上手く使えば大丈夫だと思いますよ」


 〈水繰り〉というのは魔力で集めた水を自由自在に操れるという特技らしい。

 多分これは人間が自分の使い易いようにと細分化する前の原始的な水魔法で。

 たとえばこの〈水繰り〉を使い、水の膜を数枚重ねた防護壁を作れば、ある程度の攻撃は防げるのではないか。

 いや、そんなまどろっこしいことをしなくても、多少の攻撃性能を乗せた無数の水球を浮かべてやれば、それだけで攻防一体の結界を作り出せるのではないか。

 まあ、一般的に使われる水の魔法は、水を操ることに加えて、用途に合わせたイメージを掛け合わせることによってその効果を上げているのだから、同等の効力とまではいかないものの、その分、応用力に優れた特技になっているのだろう。


「それに本来、アクアみたいな万能タイプがスクナがあるべき姿なのではないでしょうか」


 マリィさんのアーサーみたいな尖ったタイプを否定する訳ではないのだが、手の平サイズという身体的な欠点を持つスクナは、主人のサポートに回るのが本来の使い方ではないかと僕は思う。


「ですわね。(わたくし)もファフナーはそういう方向で育てようと考えていましたから」


 そんな話をしながらも僕はアクアに指示を出し、あらかじめ浮かべておいた水球を様々な形に形状変化させ、そこに使われる魔力量などを検証する。

 ペーパーゴーレムに防護壁として作り出した何重にも重ねた水の膜壊してもらったりして、その強度と消費魔力を粗方たしかめたところで魔王様の出番となる。

 とはいっても、魔王様のシュトラが持つ特技は〈影分身〉に〈重力撃〉と、名前を聞いただけでその魔法効果が理解できるようなものだけに、あまり検証の意味は無いのかもしれないけど。


「取り敢えずどれくらい分身が出せるのかを試してみるということで確認を進めてみましょうか」


「……わかった。シュトラ、〈影分身〉」


 魔王様の指示を受け、ピョンと魔王様の頭の上から飛び降りるシュトラ。

 その途中でくるりんぱと一回転したかと思いきや、いつのまにか二匹に増えていた。

 そして、着地と同時にまたくるりんぱ。それを何度も繰り返すことにより、みるみる内に分身の数を増やしてゆき、数分と待たずに訓練場はにゃんにゃん猫まみれランドになってしまっていた。

 そんな練習場の状態に、意外と可愛い動物が好きなのだろうか、マリィさんは興奮してしまったみたいで、


「な、なんですのこの魔法は、(わたくし)を悶え死にさせるつもりですの」


「あの、これはどのくらい増やせるんですか?」


「……まだ大丈夫みたい」


 どこを見たらいいのか、きょろきょろと挙動不審になるマリィさんを落ち着かせつつも僕が訊ねると、魔王様の指示を待つまでもなく、まだまだ増えるシュトラの分身。

 そして、ついには練習場から溢れ出さんとしたところで元春が呟く。


「おいおい、どこのド根性忍者だってばよ」


「……でも、この分身には実体は無いみたいだね」


 フラフラと足元のシュトラを捕まえようと迫るマリィさんの腕をすり抜ける分身シュトラ。

 どうやらこの分身シュトラは〈影分身〉というその名前が示す通り、あくまでシュトラの影のような存在のようだ。

 目の前に楽園があるのにそこに手が届かない。そんなご無体な状況にマリィさんは少し落ち込みながらも、


「で、ですが、これは使いようによっては破格の力なのではありませんの?」


 うん。この分身能力は有用な力になるだろう。

 たとえばマリィさんのようにその可愛らしさで気を引くのに使えるのは勿論のこと、爆発的に増やせる分身によって視覚を奪うことも難しくはない。

 しかし、これ以上分身を増やしてしまうと訓練場がシュトラで溢れかえってしまうので、

 僕は魔王様にお願いしてシュトラの〈影分身〉を解除してもらい、残る特技の検証に移ってもらう。


「それで〈重力撃〉というはどんな特技なんでしょう?」


「……誰にかける?」


 僕の質問に質問で返してくる魔王様。

 だが、こればっかりは誰かが体感してみなければわからない。

 体重計とかと適当な重りなんかで試すこともできるのだろうけど、家に帰って持ってくるのも面倒臭いし、〈重力撃〉の威力によっては体重計が壊れるかもしれない。

 ということで、


「じゃあ、元春でお願いします」


「――って、俺かよ!!」


「冗談だよ。僕が実験台になるから、魔王様お願いできますか」


 反応良くツッコミを返してくれる元春に、僕は笑いながら冗談と誤魔化して実験台を名乗り出る。

 すると、


「でも、危なくありません?」


「……ん」


 元春の時には心配していなかった二人も、僕が実験を名乗り出るとちょっと不安になったみたいだ。

 そんな二人の心配に「え、俺の時はなんも言ってくれんなかったのに……」とショックを受ける元春の呟きを聞きながらも。


「でしたら手加減した状態からどんどん強くしていくってのはどうでしょう」


 アクアの〈水繰り〉がそうであったように特技というのはそのスクナによって加減がつけられると思われる。


「……わかった。シュトラ、初めは弱く」


 僕の提案に魔王様は静かに指示を出し、ふにゃっと可愛らしい鳴き声で答えたシュトラが黒くて小さな弾が飛ばしてくる。

 〈重力撃〉という名前からして、てっきり直接攻撃をして重さを変化させるような魔法を予想していたのだが、〈火弾(ファイアーバレット)〉と同じように小さな弾を飛ばす魔法のようだ。

 鳴き声と共にシュトラの口から発射されたピンポン玉サイズの黒い球体が、僕の足元に着弾したかと思いきや大きな半球に拡大。魔法効果によって増した重さ(・・)が僕の体に伸し掛かる。


「どんな感じだ?」


「範囲系の魔法って感じかな。母さんが知ったら欲しがる魔法って感じだね」


「うわ。それ、ぜってーイズナさんに教えんなよ」


 相手の行動を阻害する魔法として実用性は勿論のこと、修行の負荷にも使えそうな魔法である。

 そんな僕の感想に元春はこう言ってくるのだが、僕達がした内緒話が母さんに漏れなかったなんてことは今までに一度もない。

 これはソニアに頼んで、シュトラの〈重力撃〉を魔法式に書き換えておいてもらわないといけないのかもしれないな。

 元春の言葉に苦笑しつつも、やるべき仕事をやらないと後が怖いと、ソニアに重力魔法を開発するお願いメールを送っておく僕であった。

◆やっててよかった予約投稿。

 でも、パソコンがないとお話を書くのには不便ですね。(凄い台風で停電してました)

 久しぶりにノートを使って書いていたら訂正や書換でページが真っ黒になっていました。

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