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きっと私は、悪魔なんだ。  作者: k.はる
1 友達にはならないで
2/2

気付けば自分を傷つけて。

お久しぶりです。

《幸せの裏に》の執筆が止まってしまったので

気分を変えようと書きました笑


あまり時間をかけられていないですm(_ _)m

「あっ……」

 気付けば私は、強く握りしめたボールペンの先を、自分の左腕に当てていた。慌てて手放すが、腕についた赤のインクが証拠となっていた。無意識の行為だからか、ペン先が腕に乗っているだけで痛みはなかった。先ほどまで文字を書くのに使っていたこれを、いつの間にか持ち方を変えて、自分を傷つけようとしていた。自傷行為は今まで一度だけしたことがあるけれど、直ぐそれがバレ周りに心配されて以降、しようと思ってもなんとか押しとどめていた。それがまさか、無意識のうちに行為に及ぼうとしているなんて。

 長い溜息をつきながら、インクがついた左腕を、隠すように頭の下にして机に伏せる。気分を変えようとカーテンを見ながら、それが隠す外の景色を想像する。

 外の天気は分からない。夜だから暗いのだろうけど、月が堂々と光っているのか、恥ずかしがって隠れているのか、それとも雲に意地悪されているのか。ここは田舎だけど高所にある。例え空が暗くても地には光が灯る。それを見渡せるこの窓からは、上にも下にも夜空が広がっているように見える。まるで宇宙に浮いているような、そんな景色。

 もっとも、今は閉ざしているのだけれど。

 綺麗なのは分かっている。見たいという気持ちもある。だけど、これは私への罰だから、見ない。見れない。日のある間なら大丈夫。日暮れから夜になると、どうしても見れない。なぜなら、思い出してしまうから。楽しかったあの頃を――――。


 私はこの夏休みで転校することになった。転校先はこの家のある山の向こう側にあって、カーテンを開くと見える三角州にあるのが前の学校。親の転勤でも学校の廃校でもない転校の理由は、名目上、いじめである。でも、いけないのは私であって、いじめの原因も私であって、みんなは悪くないし、転校だって……。

 気付かれなければあのままでよかったのに。気付かれても、中退できればそれで良かったのに。私は中学に行きたくなかった。今だって()()()()()()。でも心配させたくなくて、仕方なく生活している。

 小学校の頃から起こり出したそれが、私をこんな風にしたんだ。もっと頑張れたのかもしれないのに。楽しめたのかもしれないのに。一人で何も出来なくて、でも周りから距離を取るしかなくて、だから中学なんて行きたくなかったのに。関係はつくるべきじゃない。私は一人で生きるべき存在なんだ。一匹狼みたいに、群れに入らず生きて行くんだ。

 ううん、生きる必要なんて無い。他の人に酷いことしか出来ない私なんて、生きる意味も無いし、そんな権利なんて……。


 頬に冷たさを感じて我に返る。冷静に。落ち着いて。直ぐに考え込んでしまう私が常に意識しておきたいこと。考えても考えても自分が傷つくだけで、後悔するだけで、良いことなんて何一つないから。それなら考えなければ良いんだって、そう思い至って……。

 また考え込みそうになり、急いで体を起こす。何も考えずに、深呼吸。背凭(せもた)れに我が身を預け、そして項垂(うなだ)れる。

心を和ませて、初めて雨が降っていることを知った。さーっと、静かな雨。まるで私の心を表しているかのように。部屋の電気はつけず、卓上証明が私の黒い分身をつくる。部屋の中を風がながれる。冷ますように。乾かすように。雨音が、しかしそれ以外何も聞こえない空間。ゆったりとした心拍を感じる。

 生きてるんだ。

 耳を澄まし音を聞いて、そしてまた、考え始めてしまった。

 生まれる前は何があったのだろう。自分は何だったのだろう。人間が生まれる前。生命が生まれる前。地球が生まれる前。宇宙が生まれる前――――。宇宙の始まりをビックバンとするなら、その前には何があったのだろう。私はどこにいたのだろう。それともいなかったのかな。いなかったのなら、生まれたあとはどうなるのだろう。年を取って、老けて、体力が落ちて――死んだあとはどうなるのだろう。存在し続けるのかな。いなくなるのかな。いなくなるのは怖い……。でも、もしいなくなれなかったら、死後の世界があるのなら、その後は何が待っているのだろう。終わりって、あるのかな。食事の時間に終わりがあって、学校生活の終わりがあって、人生の終わりがあって――――。もし死後の世界があるのなら、その終わりって何なのかな。そもそもそんなものあるのかな。ないならこの先永遠に等しい時間の中に存在し続けないといけないのかな。

 怖いよ…………。

 脳内に映像が見える。宇宙のような、とてつもなく広く、そしてくらい空間に漂う感覚。遠くにちらほら星のような光が見えるけど、どれだけ手を伸ばしても届かない。どれだけ足を動かしても進んでいる様子がない。永遠という時間を、何もないところで孤独に居るなんて、そんなの……私には――――――!!

 鼓動が強く、速く、激しくなって、胸が締め付けられているかのように痛い。怖くて怖くて、恐怖に耐えきれなくて、(すが)る物を探して膝を抱く。何も出来なくて、とにかく自分の存在を確かめたくて、何かに触れていたくて、抱きしめる力は強くなる。少し痛いくらいになって、でも動悸(どうき)は収まらなくて。血流が速くなったのか、血圧が高くなったのか、頭が重くなり全身からドクドク聞こえてきて――――。


「痛っ」

 ついに平衡感覚も失ったのか、椅子から転げ落ちてしまった。

 それが、正常を取り戻すきっかけになった。

 まだ深い沼に入る前でよかった。もし入り込んでいたら、この程度で正気に戻ることは出来なかっただろう。

 音を立てても誰かが来ることがない。いまこの家に居るのは耳の遠い親戚の叔母さんだけ。両親は数年前に亡くなった。事故死だった。私の誕生日だった。

 生まれたときから両親は親だったけど、ある日それが特別なことだと思った。いや、思ってしまった。産んだ子供を育てるのは当たり前と思われがちだが、育て方はみんな違うし育児放棄する親だっている。そんな中、私の親は優しかった。それから私は生き物としての親ではなく、愛を与えてくれる特別な人たちだと思うようになった。恩返ししたいと思った。それがいけなかったんだ。当時はまだ、私の存在が他人にとって害になることを知らなかった。だから仲を深めようとして両親を殺してしまった。天候が悪かったわけでも事故が多い場所でもないのに起こった死亡事故。私がいけないんだ。

 それだけじゃない。両親が亡くなったとき、私には弟がいた。親の死を受け入れられない弟のために、私はいろいろなことをした。普段は私一人で過ごしていて、弟は両親と一緒にいた。だから私は弟の好みも何も知らなかった。少しでも安心させてあげられればなと、仲を深めてたくさん笑顔をつくった。あの日々はとても楽しかった。それこそ、親の悲劇を忘れられるほどに……。

 でも、私に宿る悪運はそれを見逃さない。私が小学校の修学旅行に行っている間、家が火に包まれた。両親との記憶、そして弟をも焼き尽くした。その事実を知ったのはことの起こった二日後。修学旅行を終え家に帰ろうとした私は学校に連れて行かれ、知らない人に引き渡された。その時初めて、天涯孤独の身になったことを知った。天涯孤独という言葉の意味を知ったのはつい最近。私を引き取ったのは叔母さん。過去に一度だけ会ったことがあるらしいが、それは覚えていないほど昔の話。当初周りは私の状況に憐れみ、同情していたが、時が立つと共に私を不幸そのものと扱うようになった。自分でそうだと思っていた。だから人と接するのを避け、極力一人でいるようにしていた。

 一人でひっそり生きられれば良いのに。いっそ私なんていなくなれば良いのに。また誰かが被害に遭うかもしれないと思うと、人間関係はつくれない。私は一人でいたいわけじゃないけど一人でいなければいけない。それが一番辛かった。話したいという気持ちも離れたいという気持ちも、どちらも自分が思っていること。そんな矛盾を、いつまで耐えなければいけないのか。分からない。分からないけど、それが自分の、唯一誰かに対して出来ることだから。今までの償いだから、だから…………。



 今日もまた泣き寝入り。もっと心が強ければこんなことはないだろうに。こんな葛藤しなくて済むだろうに。

 明日から学校が始まる。これ以上迷惑かけないために、私は一人でいる。仲を深めようと声をかけてくれる人には冷たく対応しなければいけない。興味を持たれるようなことがあれば、直ぐつまらない人だと思わせなければいけない。好意を持たれたら、直ぐ嫌われるようにしなければいけない。願わないことだけど、みんなのため。

 誰かに理解して欲しいとは思わない。

 私はずっと、一人でいれば良い――――――――。


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