表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鉄心  作者: 千歳ヶ丘 もなか
第一章
2/14

ギルドへ

 ロイドは一般常識以外にも、専門的な本も読んでいった。この世界の武器、兵器についてとその製造方法。魔術の仕組み、詠唱などの専門知識。冒険者式サバイバル方……他。ロイドは一般常識だけでなく、専門知識も身につけていった。


 気になる全ての本を読み終え、図書館を出る。そしてギルドへ向かう。冒険者になるためにだ。


 なぜロイドが冒険者になろうとしたか。理由は二つ。一つは電気を得るため。アンドロイドであるロイドは、活動を続けるために電気エネルギーが必要である。電気エネルギーを得るためには、お金を集めて発電に必要な材料を買うのが一番手っ取り早い。もう一つは暇つぶしだ。


 ギルドの前に着き、入ろうとしたその瞬間、ギルドの扉をぶち破り、叫び声をあげながら男が吹っ飛んできた。ロイドは男を片手でキャッチする。


「あ、ありが……」


 男が礼を言いかけたその時、ロイドは男を投げた。柔道の技の様なものではない。片手でぶん投げたのだ。集まっていた野次馬は男が吹っ飛んできたのにも驚いたが、小さな子供がその男を片手でキャッチし、さらにぶん投げたことに驚いて声が出ない。

 ギルドの中に入ると、そこは乱闘中だった。ロイドはそんなものは関係ないと、中に入っていく。邪魔な物(者)は蹴り飛ばし、飛んできたものはキャッチして投げ返す。ただ、ギルドの窓口に向かうために行ったことだ。しかし、それは結果的に乱闘を静めた。皆、ロイドに注目している。

 邪魔モノを排除し、窓口の前にまで着いたが、窓口には人がいない。


「いるのはわかってる。出てこい」


 ロイドがそう言うと、窓口の下、ちょうど死角になるところに隠れていた女性が出てきた。彼女、クレアが窓口の係だ。


「えっと、終わった?」


「ああ、終わった。で、早速仕事だ。ギルドに登録したい。手続きを頼む」


 クレアはロイドを見て、少しの間動きが止まった。この小さな子供が、乱闘の中を抜けて、窓口まで来たのだから。


「あ、はい。わかりました。こちらの用紙のこことこことここと……」


「わかった。全部書く。ペンをくれ」


 ペンを受け取り、用紙に記入事項を書いていく。


 名前はロイド。性はなし。性別は……男。種族は ……人間族。年齢は……12。暗証コードとサインは……。


「書いたぞ。で、次はどうすんだ?」


「あとは任せてください。少し待っててください」


 クレアは用紙を受け取りそう言うと、ギルドの奥、【スタッフオンリー】と書かれた所へ行ってしまう。


 数分後。クレアがギルドカードを持って戻ってきた。出来立てホヤホヤ。温かい。ロイドはそれを受け取る。ギルドカードは自分が冒険者であることの証明書、つまりは身分証明書であり、ギルドの口座に入れただけのお金が使えるキャッシュカードでもある。その仕組みは不明。初代ギルドマスターの発明品らしく、残された設計図を元に作っているらしい。



 ギルドカードには【ランクF- ロイド】と書いてある。このランク冒険者の凄さや強さを表す。

 冒険者のランクはF-からS+まである。全ての冒険者はF-から始まる。EFは駆け出し、Dが普通、Cはエリートまたは熟練者、Bは天才、Aは超人、S以上は伝説らしい。S+は今までただ一人しか存在しない。


「登録して早速だが、クエストは受けられるか?」


「えっと、あちらのクエスト……ボードが……」


 クエストボードと呼ばれる物があったであろう場所には、大破した木製の何かがあった。あれでは、使い物にならない。


「えっと、クエストボードが壊れちゃったんで、こちらから選んでください」


 そう言って、クレアはクエスト一覧表を出す。本当は職員用なのだが、今の状況では仕方ない。


「ふむ……じゃぁ、この【グリーンボア退治】で」


 ロイドが選んだクエストはグリーンボアという魔物を狩るクエストだ。グリーンボア討伐の証として、グリーンボア鼻を20頭分納品することでクエスト完了となる。また、鼻以外の換金可能部位は好きにして良い。クエストランクはC。クエストランクはクエストの難易度を表す。ランクCというのは、Cランク冒険者二人分の難易度だという意味だ。

 グリーンボアは緑の猪の魔物だ。雑食だが、人をよく襲う。群れをなすことがあり、出会うと最悪である。

大きさは普通の猪より一回り大きい。


「……本気?」


「いいから早く」


「……はい。ギルドカードを貸してもらえませんか?」


 クレアはギルドカードを受け取ると、書類を出し、素早く記入していく。そして、印を押す。


「終わりました。では、頑張ってくださ……」


「ちょっとまて、この乱闘を止めたんだ。何かご褒美的なものがあってもいいんじゃないか?」


「ご、ご褒美……ですか?」


「ああ。別に、金が欲しいとか、クエストを完了したことにしてくれとかじゃぁない。馬車を貸してくれないか?」


「それくらいならいいですよ。馬小屋でこのカードを渡せば馬車を借りられるはずです。どうぞ」


「わかった。ありがとう」


 ロイドはギルドカードと馬車使用許可カードを受け取り、ギルドの外、別の場所にある馬小屋に行く。そしてそこにいた飼育員に許可書を見せる。飼育員は無口なのか、馬を連れ、馬車を指差す。「この馬と馬車を使え」ということなのだろう。ロイドは馬と馬車を借り、門へ向かう。馬小屋から門までの道は広いため、馬車に乗って町の外に出ることができる。



 グリーンボアは町から西にある森に生息している。基本、森からは出ないはずだった。しかし、それには道の途中で出会った。草原の中に人が踏み固めた、草の生えてない道の上。グリーンボアはそこにいた。ロイドが森に行くための進路上である。

 ロイドが乗る馬車を見つけたグリーンボアは突進。それに対し、ロイドは石を投げる。馬車の中に、数個、投擲用の石を積んで置いたのだ。石はグリーンボアの顔面に命中し、めり込む。死んだ。ロイドは初めて魔物を殺した。生き物を殺した。しかし、何とも思わない。ただ、一体目終わりってだけである。


 道の先からまたグリーンボアが来る。先ほどのと合わせて、ちょうど20頭の群だ。

「ちょうどいい」と、ロイドは馬車から降り、拳を構える。

 まず、先頭のグリーボアの頭を踏み砕く。ロイドの体重は約75kg。身長145cmにしてはかなり重い。

 そのまま地面に降り、突進してきたグリーボアを受け止め、首の骨をを折る。その後もグリーボアを撲殺していく。馬もギルドのものだからか、戦闘に慣れているようで、近くのグリーボアを蹴り殺している。


「おい、アレ……」


 その光景を目撃した、一つの冒険者パーティーがいた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ