甘いビターチョコ
この作品は私の連載作品、「お茶でも飲みましょう」のキャラである深夜くんとコーヒーくんが登場しますが、ここでの彼等の関係性は連載本編とは全く関係がありません。パラレルです。ifです。
ご了承下さい。
放課後、深夜が勝手に使ってる空き教室でいつものメンバーで茶を飲んでから解散した。日は大きく傾いて空は茜色に染まっている。隣では深夜の奴が手ぶらでヘラヘラ笑いながら歩いている。本来、コイツが持つべきである菓子が詰まったダン箱はなぜか俺が持たされている。ダン箱は縦にしたら学校の駐輪場に置いてある自転車の前カゴに入りそうだ。
「いやあ、ミルクのチョコチップマフィン美味しかったよねえ」
「ああ」
「コーヒーどうしたの? なんか不機嫌だけど。眠いの?」
俺のぶっきらぼうな返事を変に思ったのか、深夜が顔を覗き込んできいてくる。
「なんでもねえよ」
嘘だ。なんでもない筈がない。好きな奴がこんなに沢山の人間に恋愛感情を抱かれている。女だけならまだしも、野郎も一定数混ざっていた。気分がいい筈がない。深夜相手に少しイラついたところで、丁度駐輪場に着く。ダン箱は俺の予想通り、自転車の前カゴに収まった。
「ふーん……。あ、そうだ」
深夜がポケットをごそごそと探って小さな包みを取り出す。
「はい、僕からのバレンタインチョコ。ちゃんとビターだから安心してよ」
「ありがとよ。…………その手はなんだ?」
差し出された包みを受け取る。深夜は空いた手を俺になにかを求めるかのように出してくる。が、なにを要求しているのか全くわからない。
「コーヒーからのバレンタインのプレゼントは?」
「んなもんねえよ」
「ええーっ!?」
深夜が有り得ないものを見るような目で俺を見てくる。男同士でチョコ交換してどうすんだ。
「しょうがないなあ……」
深夜は俺に渡した包みを再び奪うと、中を開けてチョコを一つ俺の口に無理矢理押し込んだ。
「むぐ! おい、なに――」
俺の首に両手を絡めて引き寄せた深夜は口を口で塞いでくる。深夜の舌が口腔に侵入してきて、俺の舌の上に乗っているチョコを奪う。チョコは熱ですぐに溶けてしまったようだ。
「んぁ…………」
このままやられっぱなしじゃムカつくから深夜の舌を絡め取る。少し強めに吸うと深夜の体がビクビクと震えた。ビターチョコの筈だが、滅茶苦茶甘い。甘いのは苦手な俺だが、これならなぜか平気だった。存分に堪能してから唇を離す。体力の無い深夜は肩で息をして、少し疲れているようだ。だが、顔は満足そうだった。
「これで満足したか?」
俺の問いに深夜はぷるぷると首を横に振る。
「……僕ん家まで来てよ」
少し頬を赤く染めながらそう言う深夜はいつものウザさが鳴りを潜め、可愛らしさが強調されている。
「ああ」
俺は深夜の額にもキスをすると自転車のストッパーを蹴り上げた。