第9話 部活
昼休み、沙耶・雄二・愛花・銀河の4人は山岳天体部の部室で昼飯を食べた。
教室では暑くてたまらないからだ。
部室で冷房を効かせた方が断然涼しい。
ちなみに山岳天体部とは、山岳部と天体部が合併してできた部である。
その名の通り山を登って星を見るのである。
あちこちの山の頂上に元天体部の天体望遠鏡が数台ずつ設置されているから、わざわざ望遠鏡を持って行かなくても大丈夫らしい。
沙耶、雄二、愛花はここの部に所属しているが、最初の合宿は夏休みなので皆合宿は未経験である。
やったことといえば、せいぜい学校で夜に星を観察したぐらいだ。
「へぇ、結構本格的なんだね〜〜」
銀河が感心した様な声で言った。
銀河はさっきから天体望遠鏡に夢中である。
星を見るのは好きらしい。
「最初の合宿は7月21日らしいよ。空風も興味あるんなら入ってみたら?今入ればまだ間に合うぜ?」
提案したのは雄二。
まあ、雄二が提案しなくても沙耶が提案するつもりだった。
というかこの銀河の様子を見たら誰でも誘いたくなるだろう。
「うん、是非お願い。でもその前に両親の許可もらわないと。」
「両親の許可が必要なの?」
沙耶が訊く。
「うん、うちの両親は異常な過保護でね。だから、いらないって言ってるのに迎えの車よこしたり、今回だってメイドを何人もよこそうとしたんだよ。警備員も雇おうとしたりして断るのが大変だったんだ。」
銀河が本当にめんどくさいという感じで答えた。
「だからめんどいけど一回両親説き伏せないと。あの両親なら『山登りは危ないから駄目』とか『それなら警備員とか雇わないと』とか言い出しそうだからね。そんなことになったらせっかくの雰囲気がぶち壊しだよ。」
金持ちも金持ちで大変なんだなぁ、と沙耶は実感した。
しかも両親が過保護とは・・・
「じゃあ、良い返事待ってるよ。まだ時間はあるからゆっくりと説き伏せてきてくれ。」
と雄二。
「そうよ。沙耶もこの前、『銀河君と一緒に星みたいなぁ・・・』って言ってたことだし。」
「そんなこと言った覚えないんだけど!」
愛花の言葉にすかさず突っ込みを入れる。
「わかった。沙耶さんの為にも頑張るよ!」
「もう〜、銀河君まで〜〜!!」
銀河はあはは、と笑った。
こうして残りの昼休みは無駄話をして終わった。
銀河が条件付きで両親の許可を取ったのは、3日後、夏休み直前の日だった。
その条件とは・・・メイドの葵を連れいていくことだった。