第6話 少女
次の日、沙耶は銀河の家の前で待っていた。
昨日の夜、ベランダ越しに約束したからだ。
学校に行く道がわからないらしい・・・
昨日は行けてたじゃん、と言ったら昨日は初日だから車で行った、と返してきた。
何やら朝起きたら迎えの車が来ていたらしい。
せっかく来てくれたものを断ることもできず、学校まで送ってもらったとのこと。
メイドはいるわ迎えの車は来るわ、聞いていると結構なお金持ちである。
で、今日からは自分で行くと言い聞かせて帰ってもらったため、今日は一人で行かねばならず、沙耶の助けを借りたのである。
数分後、やっと銀河が家から出てきた。
「ごめん、待った?」
「ううん、大丈夫。」
「ごめんね、俺朝弱くて・・・」
確かにすごい眠そうだった。
それでもちゃんと時間どおりに家から出てこれたのは、ひとえに銀河の下で働いているメイドさんのおかげだろう。
しばらく話しながら歩いていると、後ろから声が聞こえてきた。
「ご主人様〜〜、お待ちください、銀河様〜〜!!」
振り返ると、学生服姿の可愛らしい少女がものすごい勢いで走ってきていた。
おそらく歳は13歳か14歳か。
少なくとも私よりは年下っぽかった。
その少女は、沙耶にペコッとお辞儀をすると、銀河にある物を手渡した。
それは数学の教科書だった。
「今日3時間目に数学ありましたよね?家に忘れてましたよ。」
「ああ、ごめん。ありがとね、葵。」
その少女は葵というそうだった。
葵はさらに銀河にこう言った。
「銀河様、銀河様をつけている人がいます。男一人と女一人です。くれぐれもご注意ください。」
「えっ!?」
銀河は驚いたようだったが、沙耶は大体の予測はついていたので、呼んでみた。
「愛花、雄二、そろそろ出てきたら?バレてるわよ。」
沙耶の予測通り、愛花と雄二の二人が出てきた。
「沙耶、やるわね。私の完璧な尾行を見抜くとは。」
「水月、違うんだ!これは誤解なんだ!俺はたまたま歩いてただけで・・・」
反応まで予想通りとは。
沙耶は半分呆れながら聞いてみた。
「で、わざわざ尾行して何やってたの?」
「それは、あなたと銀河君を見守るため・・・って今はそんなことどうでもいいや。」
「どうでもよくないんだけど・・・」
「それよりその子は誰?銀河君。随分と親しそうだけど。」
愛花が、葵を指さしながら言った。
「ああ、紹介するよ。彼女はうちでメイドをやってくれてる星川葵。歳は俺と1歳差で、14。でもって俺の幼馴染。」
沙耶も雄二も愛花も唖然としている中、葵はお辞儀をして言った。
「紹介にあずからせて頂きました、星川葵です。銀河様のもとでメイドをやらせて頂いています。どうかお見知りおきを。」