第28話 海水浴2日目 Part4
結局収穫は沙耶の釣ったフグ1匹のみという寂しい結果に終わった。
もちろんふぐの毒を完璧に抜ける自身もなく・・・。
ふぐを海へ返すのは妥当な選択といえた。
「ごめんね、皆。釣りやろうなんて言いだして。ここまで釣れないとは思わなくて。」
銀河が再び謝った。
おそらく雄二と愛花から先程と同じように文句を言われるだろう、沙耶はそう考えていた。
もちろん銀河もその予定だっただろう。
しかし、二人からさっきとは別人のような反応が返ってきた。
「いや、まあ結構良かったんじゃないか?」
「案外こういうのも悪くないわね。」
沙耶も銀河もただただ茫然とするばかりだった。
別にこの言葉だけなら、ただ銀河に気を使っただけだと思うだろう。
しかし、雄二はともかく愛花はそんなことをするタチではないし、何より本当に満足そうな顔をしているのだ。
「そ、そうか、それなら良かった。」
銀河は不思議そうな顔をしながらも、満足気に頷いた。
「あれ?そういえば葵ちゃんは?」
「そういえばさっき文句言いに行ってから見てないな。何してるんだろう?」
沙耶と銀河が話していると、丁度葵が向こうの方から走ってくるのが見えた。
そして嬉しそうに銀河にある券を渡した。
それは・・・何故かスキー無料招待券だった。
「何か、さっきのところにいたおじさんに文句言ったらこれくれたんです。これでスキーも行けますね。」
満面の笑みで説明する葵。
4人は一瞬、どう突っ込んでいいやらといった様子で唖然としたが、銀河が口を開いた。
「そ、そっか、良かったね、葵。」
「うん。」
ニコニコしながらうなずく葵。
「なあ、俺色々突っ込みたいんだけど・・・。」
「この流れは突っ込んだら負けよ。我慢しなさい。」
隣で雄二と愛花の呟き声が聞こえたが、確かに何となく突っ込める雰囲気では無い様な気がした。
そういうわけで、数ある突っ込みを心の中に秘めながら、沙耶たちは釣り竿と餌を返した後、宿へと向かった。