第27話 海水浴2日目Part3
「何よこれー!、全然釣れないじゃない。」
愛花が隣で文句を言っているのが聞こえる。
まあ、確かに文句を言いたいのもわかる。
ここに来てから1時間くらい経つが、まだ一匹も釣れていないのだ。
釣り方が上手い上手くないの問題ではなく、釣り糸がピクリともしないのだ。
つまり、魚がいないのである。
「おかしいな、釣れると思ったんだけどなぁ・・・。」
銀河が頭を掻きながら謝る。
「やっぱり釣れないんじゃないか?」
「だったら釣り道具を貸す店なんか無いと思うんですが。」
雄二の言葉に葵が的確に突っ込む。
「きっとそのうち釣れますよ。」
「うーん、でも制限時間残り1時間よ?このままじゃ1匹も釣れないよ。」
愛花の言葉に皆黙るばかりだ。
そう、この竿と餌は2時間しか借りられないのだ。
それ以上やると延滞料金を取られるらしい。
文句を言っていても仕方ないと5人は再び作業を再開した。
しかし、さらに30分経っても魚が釣れる気配すら無かった。
すると、愛花が唐突に立ち上がり、
「きっと場所が悪いのよ。私ちょっと向こう見てくる。」
と言って歩いて行ってしまった。
そして、その愛花を「待てよ〜〜、餌忘れてるぞ〜!」と言いながら雄二が慌てて追いかけて行った。
二人を見送った後、葵も立ち上がり、
「私、さっきの店で色々聞いてきますね。ちゃんといつも釣れてるのかどうか。」
と言いながらさっき来た道を戻って行った。
こうして、結局その場に残ったのは銀河と沙耶の二人だけになってしまった。
「何かごめんね、こんなことにつき合わせちゃって。後で皆にも良く謝っておかないと。」
銀河がこちらを向いて謝ってきたので、沙耶は慌てて答えた。
「いや、別に大丈夫だよ。いい時間つぶしになったし。それに私的には少し助かったと思ってる。」
「え?」
「だってここ来てからあんまり落ち着ける時間って無かったじゃない?だからこうやってのんびりしてる時間があるっていうのもいいかも、って思っただけ。」
これは本音だ。
昨日は昨日で気を遣いすぎて疲れていたし、今日も寝坊したり泳ぎまくったりで余りこういうのんびりした時間を取れていなかったのだ。
だからこれはこれで満足している。
銀河はしばらく唖然としていたが、やがてフッと笑みを浮かべると、
「沙耶さんは優しいね。」
と言った。
「へ?いや、そうじゃなくて私は・・・」
沙耶が顔を紅らめて弁解しようとしたその時、沙耶の釣り竿の糸がクイと引かれた。
「あ、沙耶さん、釣れてる釣れてる!」
「え!?あ、ホントだ!」
「沙耶さん、慌てないでゆっくりね。そう、慎重に慎重に。」
沙耶は、銀河の言うとおりに糸を引いていった。
5秒ほど慎重に糸を引いた後、銀河の言葉に従って思いきり糸を引き上げると、1匹の魚が釣りあがるのが見えた。
その魚は・・・大きく頬を膨らませたフグだった。