第20話 海水浴1日目 Part1
集合地は銀河の家の前だった。
銀河の家の人が車で送ってくれることになったからだ。
電車で行くのが当初の予定だったが、銀河の親が許さなかった。
「電車では窮屈だから。」
「楽に移動できないから。」
「道に迷うかもしれないから。」
だそうだ。
色々言われて結局説得できなかった、と銀河は言っていた。
まあ、電車賃浮くし楽ではある。
沙耶は出発の準備を終え、ベットにうつ伏せになりながら窓の外を見ていた。
集合地が家の前なので、時間ぎりぎりまでのんびりできるのだ。
集合時間の10分前だが、まだ誰も来てなかった。
もう一度荷物でも確認しようかと体を起こすと、銀河の家の窓から信じられない情景が沙耶の目に飛び込んできた。
なんと、銀河がまだベットで寝ているのだ。
安らかに。
沙耶は咄嗟に自分のベットの脇にあった野球のボールを、銀河の部屋に思い切り投げ込んだ。
それは見事銀河の顔を命中し、銀河が慌ててベットから落ちるのが見えた。
そして時計を見てさらに慌て、着替える為かカーテンを閉めた。
「できるだけ早くお願いね!」
沙耶はカーテン越しに叫ぶと、
「了解!頑張る。おーい、葵起きろ!時間マズいぞ!」
という声が返ってきた。
どうやら葵も眠っていたらしい。
結局銀河たちの準備が終わったのは、予定集合時刻を1時間ほど過ぎた頃だった。
それまで沙耶は、愛花と雄二を家の中に入れて3人でコーヒーを飲んでいた。
銀河と葵が謝罪をしながら向いに来たので、沙耶たちは銀河の家の車のあるところまで進んだ。
沙耶は車については詳しくなかったが、銀河の車を見たとき、それが高級車であることは何となくわかった。
雰囲気というかなんというかそういうオーラが出ていた。
しかもしっかり運転手つきである。
さすがはお金持ちである。
沙耶たちはその車に乗り、海水浴へと向かった。