第2話 出会い
「お〜い、早く行こうぜ!早く!!」
テンション上がりまくりの雄二が向こうの方で叫んでいる。
今日は約束の夏祭りの日。
約束通り愛花を誘うのに成功して現在3人で祭りの中を歩いている。
年に1度しかない祭りだけあって多くの人が集まっていた。
人々の大半は老若男女問わず浴衣姿。
他の人々が見たらちょっと違和感があるかもしれないが、それが沙耶たちの町の風習であった。
だから、愛花も雄二も沙耶も3人とも皆浴衣姿だった。
沙耶は赤色の、愛花は桃色の浴衣を着ていた。
桃色の浴衣が愛花の明るいイメージとすごくマッチしていて、とても似合っていた。
案の定、愛花を見た雄二は言葉を失っていた。
こんなんで祭中大丈夫かな?と思っていたが、話題については沙耶が特別に作ってあげる必要はなかった。
最初こそ浴衣姿の愛花に見惚れて言葉数の少なかった雄二だったが、だんだんとテンションが上がっていき、今では一人でものすごい勢いで話していた。
そんな雄二が話すのを、沙耶は笑いをこらえながら、愛花は微笑みながら聞いていた。
愛花と話している雄二を見るのは面白い。
沙耶と二人で話している時とは全く違った表情を見せてくれるからだ。
そういう雄二を見ていると、雄二は本当に愛花のことが好きなんだなあと思い、ちょっと羨ましく思う。
沙耶にはまだ人を好きになるという経験をしたことが無いのだ。
まあ、好きな子のいる男子にしか話しかけてないんだから当然と言えば当然だろうけど。
沙耶は腕時計を見た。
うん、そろそろだろう。
「あ、ちょっと私他の人と待ち合わせがあるからここで別れるね〜」
もちろん嘘である。
「え〜、花火大会だけでも一緒に見ようよ〜」
と愛花。
「その花火大会を一緒に見る約束があるんだって。」
「さては男か〜?」
「さあ、それはどうでしょう?」
もちろんいる筈は無いけど。
結局愛花にはしぶしぶ承諾してもらい、沙耶は別方向へと歩いて行った。
別方向といっても自分の家の方向だけど。
一人で花火を見ててもしょうがないので、帰宅することにしたのだ。
皆が祭りに行く流れの中を帰るのは意外と空しかった。
「私にも好きな人とかいたらいいのになぁ・・・」
全くもって身勝手な話だと自分でも思うのだが、やっぱり好きな人は欲しいのである。
いつもこっちが好きになる前に告白されてきたから。
相手を好きになる時間がないのである。
全く、男子って本当に考えて告白してるの?
実は顔とかスタイルしか見てないんじゃないの?
普段悩みの少ない沙耶が珍しく考え事をしていると、向こうからものすごい勢いで車が走ってきた。
当然考え事をしていた沙耶が気付いたころにはもう遅く・・・・
その状況を把握するのに沙耶はしばらく時間がかかった。
まず気付いたのは、どこも怪我をしてないこと。
次に自分が芝生の上にいること。
そして自分の上に人が乗っかっていること。
そして、その人の性別が男であること!