第16話 合宿3日目Part2
3日目の夜、テルテル坊主の効果は無く空は曇ったままだった。
途中までは皆高台で待っていたのだが、やがてポツリポツリと部屋へと戻っていった。
沙耶たちもとりあえず部屋で待機することにした。
ただ待つのも暇なので、各自思い思いに過ごしている。
愛花と雄二はテレビで天気予報を見て、銀河は望遠鏡の点検。
そして、沙耶は葵と共に風呂に入っている。
本日2回目の風呂だ。
愛花に「年寄りくさい〜」と言われたが、ただお菓子を食べながらテレビを見ているよりはずっと健康的なチョイスだと沙耶は思う。
沙耶と葵はしばらくダラダラと喋っていた。
沙耶はふと気付いて言った。
「そういえば、葵ちゃんって全然メイド服着ないね。持ってきてないとか?」
「いえ、一応持ってきてはいます。しかし、『それ着たら皆と話しずらくなっちゃうでしょ?だから着なくていいよ』と銀河様が仰られたので着てません。」
葵が続けて言う。
「私、基本的に知らない人と話すのは余り得意じゃないんです。ですから銀河様はそれを気遣って言ってくれたのでしょう。昔からお優しい方です。」
とても嬉しそうな口ぶりだった。
沙耶はひとつ気になっていたことを聞いてみた。
「そういえばこの前聞かなかったけど、葵ちゃんはいつ頃銀河君と知り合ったの?」
「私が5歳、銀河様が6歳の頃です。」
即答だった。
葵は続けて言う。
「その頃も私は人見知りが激しく、一人ぼっちで公園で遊んでました。そして、その帰り道、車に撥ねられそうになったところを銀河様に助けて頂いたんです。」
どこかで聞いたような話だ。
「そして、お礼に何かしようか、と尋ねたら・・・」
「『一緒に遊ばない?』とか言われたんでしょ?」
「そう。それで・・・ってえーっ!?」
沙耶の不意打ちに心底驚いた様子で声をあげる葵。
「な、なんでそれを・・・?」
「だってその状況、私の時と酷似しすぎだもん。」
沙耶はそう言って自分と銀河との出会いのことを話した。
話を聞き終わると、葵は苦笑しながら言った。
「では、私たちは二人とも銀河様に助けられた同士なんですね。」
「そうだね。」
沙耶も顔に微笑を浮かべながら言う。
二人で笑い合っていた、その時。
沙耶は見た。
西の空にあった雲が、いつの間にか消えていたのを。
そして、そこに星が流れたのを。
沙耶が思わず絶句してその方向を見ていると、葵も気づいた。
そして、駆け出した。
ものすごい勢いで。
それはもうすごい勢いだった。
更衣室など眼中にないくらい。
嫌な予感がして沙耶は葵を追いかけて走った。
案の定。
葵は裸のまま更衣室から出ようとしていた。
その手を必至に抑えながら、沙耶は叫んだ。
「葵ちゃん、待ちなさい!待ちなさいって!!」
「いそいで銀河様に知らせないと!」
「その前に服着てないって!服!!」
「服など着ている場合ですか!そんな些細なこと・・・」
「全然些細じゃないから!!むしろ一番大事だから!!」
こうして焦る葵になんとか服を着せることに成功し、二人は無事部屋に到着して同時に叫んだ。
「来たよ!!流星群!!!」