表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

短編

人の歌

作者: 一星屋

 枷は手に、鉄球は足に。

 彼は人々の前で歌い踊り、故に塀の中の人となった。

 人は人たれ、日にあらず月にあらず。星のごとくでなく、ただ地を這い行くがよし。

 それが法であり、彼の向かいの檻に眠るものが知っている、数少ないことである。

 眠るものもまたかつて彼のごとく、歌い踊りて虜になった。いわば先達であり、見本であり、世に法のあることを示す碑であったが。

 今ではこうして。同じ道行く者はいるものだと。我が身を省み嘲笑いながら、鼻を鳴らすことを日課とする有り様である。

 不相応な真似をした事を悔いるがいい。

 鉄格子の窓から差し込む月光に、眠るものはなんどもその言葉を見出してきたものだ。

 もう飽き飽きだった。

 わかっているとも。人が星々の如くきらめこうとは、なんと不相応なことか。だがしかし、そうせずにはいられなかった。心身の奥底から湧き出づる、抑えきれぬ衝動が、そうさせてやまなかったのだ。

 不相応だとは傲慢なことだ。

 眠るものは月を憎む。太陽を憎む。そして嘲り、時にそれが、歌になった。

 

 卑しい歌だった。

 けれども彼が目覚めるには十分なものだったし。ただ歌詞が卑しいだけで、旋律は美しい。

 指が跳ねる、鼻が鳴る。歌が紡がれて──。

「やめろ」

 看守の怒鳴りが、静寂を呼び寄せた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ