人の歌
枷は手に、鉄球は足に。
彼は人々の前で歌い踊り、故に塀の中の人となった。
人は人たれ、日にあらず月にあらず。星のごとくでなく、ただ地を這い行くがよし。
それが法であり、彼の向かいの檻に眠るものが知っている、数少ないことである。
眠るものもまたかつて彼のごとく、歌い踊りて虜になった。いわば先達であり、見本であり、世に法のあることを示す碑であったが。
今ではこうして。同じ道行く者はいるものだと。我が身を省み嘲笑いながら、鼻を鳴らすことを日課とする有り様である。
不相応な真似をした事を悔いるがいい。
鉄格子の窓から差し込む月光に、眠るものはなんどもその言葉を見出してきたものだ。
もう飽き飽きだった。
わかっているとも。人が星々の如くきらめこうとは、なんと不相応なことか。だがしかし、そうせずにはいられなかった。心身の奥底から湧き出づる、抑えきれぬ衝動が、そうさせてやまなかったのだ。
不相応だとは傲慢なことだ。
眠るものは月を憎む。太陽を憎む。そして嘲り、時にそれが、歌になった。
卑しい歌だった。
けれども彼が目覚めるには十分なものだったし。ただ歌詞が卑しいだけで、旋律は美しい。
指が跳ねる、鼻が鳴る。歌が紡がれて──。
「やめろ」
看守の怒鳴りが、静寂を呼び寄せた。