風学部気象科三年生の少女の話。
何やら準備はしっかりとした方がよいようです。
〈今回の登場人物〉
・天野さん
…実験のための材料を学校敷地内で探していたら魔法生物と戦闘になったことがあるらしい。
・清水さん
…体育祭のとき不幸があった。生きてるって素晴らしい。
・生徒会長さん
…生徒会長に立候補する人がいなくてなし崩しに信任という形で会長になってしまった人。拒否権はなかった。
梅雨。
それは風学部や水学部にとって最高の時期───。
「うんうんっ、特に風学部気象科的には一番の実験日だよねっ」
私は雨の中、裏庭で傍らに立つ級友に話しかけた。
「残念というか、ある意味残酷なことは文企委員長が局地的に氷の雨にしてくることくらいです……」
ぼそっと呟いて、文企委員長に文句を言う友人。何かいやなことでもあったのだろうか。
私が考えていると彼女は、
「頭に氷柱が……」
「生きててよかったね!」
私の友人は知らぬ間に生命の危機に瀕していたようです。
「確かに運企というか運企委員長は攻撃の的になってるね」
というのも毎年のことではあるのだが、今年は特に運企と文企の委員長同士が張り合っていてしょっちゅう戦闘が起きている。
「でも運企委員長もレーザー的なもので氷を蒸発させるのもどうかと思います」
「運企委員の私としては三大戦乱的なアレは過労死するかと思ったよ。保険委員すら全員出動だったしね」
思い出すあの地獄の日々。少し私の顔が青くなっていたのだろうか、友人は私の方に手をぽんと乗せて
「お互いがんばりましたよね」
と言ったのであった。
「それはさておき土学部魔法生物科も何気に喜ぶ時期なはずだけど」
裏庭から微かに見える、今日も傾く土学部寮。それを眺めつつ、最近の土学部魔法生物科の面々がげっそりとしていたのを思い出し、言ってみた。
「なんか魔法生物の中で雨になるととりわけ活性化する種類がいるらしく、それの対処ですごく大変らしいです」
「おぅ……」
「さてさて、気象科の気象科による気象科のための実験始めるよー!」
中庭の屋根のあるところで鍋を単純な火魔法で温めながら、片手をおーっ!と挙げた。
「わーい、ま、私水学部の医学科ですけどね」
パチパチと拍手している友人はなにやら不満げそうにつぶやく。
「細かいことはわりとどうでも良い!」
それで問題解決!これからノンストップでいくよ!
「はぁ……、で何するんですか?私必要ですか?帰っていいですか?今日ちょっと生徒会に用があるんですが」
「まず始めに安く手に入れられた風蛇の抜け殻の粉末を鍋の中で火で軽く炒める」
「聞いてますかー、って風蛇の抜け殻ですか。変な実験に使うくらいなら私に分けてほしいです」
「次に今月の目玉商品、水竜モドキの鱗を鍋に入れるよ!ちなみに購買で買いました」
諦め半分呆れ半分じとーと私を見つめてくる子が約一名。でも続けるよ!
「そして鱗に粉末が軽く絡んだところで事前に作っておいた豊かそうな河原に生えていた野草をドロドロにしたものを入れていく」
「えっと確かこれって草の種類というより育った場所で得られる自然エネルギーが重要なんですよね」
彼女はどこか自分で納得するように言った。
「そのとおり。医学科だと植物の種類まで気にしなきゃいけないらしいけど私気象科だし。ちなみに学校外の河原で採取してきたので近所の子供に後ろ指を刺されて地味に辛かったよ、はっはっは」
私が河原でしゃがんで草をぶちぶち抜いていたところ、おかっぱの女の子に今時の10歳でもあんなことしないよねー、などと言われた。最近の子供って怖い。外怖い。でも学校内よりはましだけど。
「学校の敷地内は何あるかわかったもんじゃないですからね……」
また何かいやな記憶でも思い出したのだろうか。
だが、そこで私はようやく下準備が終わった。
「気を取り直してお次は水属性が得意なそこのあなた!思い切り古典魔法ぶっぱなしちゃいな!」
待たせてごめん、ついに君の仕事だ!
「あっ、やっぱり私にもやることあったんですね」
「……あなたはいったい何がしたかったんですか?」
私たちの目の前にそびえ立つ疑似風水竜(帯電)。きしゃーとうねっている。
「いやぁ、これの三割くらいで成功、そして発生してからのお手軽使い魔を一体ほどと思ったの。でも……」
「でも?」
友人は私の言葉をオウム返しにした。私は続きの言葉を吐く。
「大成功でした!」
「どうするんですかこれ?!というか気象科あんまり関係ないですっ」
……それは置いておいて、今度はギュルギュル言いつつなぜか旧校舎のほうへ向かっていっている。制御不能でさすがにこれはヤバい。
そこで私がよし、と意気込み、
「ずらかる!逃げ」
撤退しようとしたそのとき、背後に誰かが立つ気配がした。
「こんにちは。良いお天気ですね」
この雨の中良いお天気とかつっこめってことですかね。だがしかし、振り向いてみると
「ところで何をしていらっしゃったんですか?」
怒気を携え、にこやかな笑顔の生徒会長が立っていた。
三話目のタイトルが間違っていることに気がつき、ひっそり修正しました。