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火学部基本科一年生の少女の話。

何やら魔法学校に入学したばかりの一年生が愚痴をこぼしているようです。


〈今回の登場人物〉

・樋口さん

…つい一週間前に入学したばかりの(まだ)常識人。自分の行く末を心配しているご様子。コミュ力が高い。

・火学部寮のみなさん

…いつも通りの爆発ライフを過ごす方々。これから先、彼らはでてくるかもしれないし、でてこないかもしれない。

 ここ、国立魔法学校に期待や緊張とともに入学して早一週間。

既に気の合う友達も何人かでき、充実した学校生活を送っている。

あたしは家が遠いということもあり、寮という形で学校に通うことになった。


 この学校では入学一年目は基本学部である火風水土のいずれかに在籍し、基礎を固める。

そして二年になると専門科に進むことができるのだ。

ちなみに寮は基本学部別で、自室で実験をして失敗した際でも即対応ができるようにしてあるのこと。入学式の時校長先生がおっしゃっていた。

 あたしの選択学部である火属性は使える人の多さや手軽さが特徴である。

戦闘には役に立つ場面が多いが、それは古典魔法の話であり、一時期火属性はあまり役にたたないと言われていた。

しかし近年では生活に密着したものから最先端の宇宙研究まで幅広く利用され、その立場が見直されている。

そのためか就職にはあまり困らないのだ。

一昔前、先端魔法が未発達で脳筋と呼ばれていた火属性は遠い過去の話であると言ってもいい。

 もちろんあたしも専門科は古典ではなく先端の熱魔法工学をとる予定だ。工学系は土魔法が必修のため恐らくは一年の三学期から補講が始まるのだろう。楽しみだ。


 でも今日はそんなことよりとても天気がいい。

今は授業が終わり、放課後。

春の陽気でついついうとうとしてしまう。寮の庭でお昼寝できたら気持ちいいだろうな。

外の音に耳をすまし、庭に面した窓をみると───



「もっと!熱くなろうぜぇぇぇえええっ!!!」

『うおおおおおおぉっ!』


聞こえなかったことにしたかった。

上半身裸の男子生徒らが庭に集まって小踊りをしているのが視界に入る。自分の目を今すぐにでも潰したい気分だ。


「天気がいいときは絶好の燃える日和だなっ!」

「太陽の熱集めてキャンプファイヤーしようぜっ!」

「いやっ、焚き火で焼きマシュマロだっ!」



寮の庭で繰り広げられる上級生逹の馬鹿騒ぎ。

最初は火学部の寮だけでのことかと思った。

違った。ほかの学部寮も友達を通じてみて回ってみたが、やっていることに差異はあれど、なんて言えばいいんだろう。

根本的なカオスさは同じだった。


 あたしがこの学校に入ってわかったこと。それは生徒が皆総じて『バカ』であることだ。

先に述べたとおり、ここは曲がりなりにも国立である。

生徒のレベルは他校に比べても高いはず、なのに……

 文化祭の時。何かがおかしいと第六感が告げた。

 入試の時。案内をしてくれた優等生と思われる内部生はどこか疲れていた。というか振り切れていた。

 入学式の時。わけがわからなかった。

やつらは学校をなめているのだろうか。



突如爆発音が響く。


「やべ、実験失敗した」

「おまっ、髪燃えてる燃えてる!」

「そんなことより、俺のお宝も燃えている!」


「ちょっとぉ、誰今爆発した奴。おかげでアタシの火薬生成機が煙上げてるんですけどー?」


「おわー!本の山が崩れた。誰か助けてくれ~」


「土学部から借りたゴーレムが逃げ出したぞ!たしか風学部のやつらも関わってる。総員退避、特に女子!」


「早く教師呼んでこい!水魔法使える奴もかき集めるんだ!」


「焼きゴーレム~、焼きゴーレムはいらんかね~?」


 あたしも入学して一週間、あまりにも色々なことがありすぎて価値観が崩壊の音をたてている。

今起きたことも「はぁ……またか」と思ってしまう自分がいるのだ。

カムバック平和な日々を暮らしていたあたし。

それと校長仕事しろ。


 やつらの仲間入りをしてしまいそうになる前に一つだけ言いたいことがある。


「なんであたしこの学校に入っちゃっただろう……」


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