第8章 補助魔法の本質
街に戻ったのは、
夕方だった。
西日が、
石畳を赤く染める。
エナは、
ギルドの建物を見上げる。
朝来た時と、
同じ場所。
なのに、
少し違って見えた。
体は、
まだだるい。
それでも、
心は軽かった。
ギルドの中は、
相変わらず騒がしい。
依頼達成の報告。
酒場からの笑い声。
その中を、
四人で進む。
ガルドが、
受付に声をかけた。
「洞窟の魔物討伐、
完了だ」
受付嬢が、
目を丸くする。
「えっ、
もうですか?」
「奥で、
オーガも倒した」
ざわっと、
周囲がざわつく。
中級魔物。
それを、
新人同然のパーティが
倒した。
受付嬢は、
慌てて書類を確認する。
「報酬、
上乗せになります」
ガルドは、
軽くうなずいた。
その後。
空いている席に、
四人で座る。
ミレイアが、
口を開いた。
「エナ」
「あなたの魔法について、
ちゃんと話したい」
エナは、
背筋を伸ばす。
「……はい」
ミレイアは、
指で机を軽く叩く。
「補助魔法には、
三つの使い方がある」
エナは、
初めて聞く話に
息をのむ。
「一つ目」
「強い魔法を、
一度だけ使う」
「二つ目」
「普通の魔法を、
必要な時に使う」
「三つ目」
「小さい魔法を、
何度も重ねる」
エナは、
自分の胸を
そっと押さえる。
「あなたは、
三つ目」
「しかも、
無意識で」
ロシュが、
感心したように言う。
「それって、
すごくない?」
エナは、
首を横に振る。
「私、
そんなつもり……」
ミレイアは、
続ける。
「小さい効果は、
切れにくい」
「だから、
重ねやすい」
「結果的に、
大きな効果になる」
ガルドが、
腕を組む。
「地味だけど、
理にかなってるな」
エナは、
混乱していた。
今まで、
誰からも
教えられなかった。
補助魔法は、
軽視されていた。
学ぶ場所も、
ほとんどない。
「エナ」
ミレイアは、
真っ直ぐ見る。
「あなたは、
優秀な補助魔法使い」
言い切られた。
胸が、
ぎゅっとなる。
優秀。
自分が?
「……でも」
「攻撃、
できません」
ガルドが、
即答する。
「だからどうした」
ロシュも、
うなずく。
「俺たちが、
殴る」
ミレイアは、
静かに言う。
「役割が、
違うだけ」
エナは、
唇を噛む。
長い間、
否定され続けた。
その言葉が、
簡単には
信じられない。
それでも。
胸の奥で、
小さな灯が
ともった。
補助魔法の本質。
それは、
前に出る力ではない。
後ろから、
戦場を動かす力。
エナは、
ゆっくりうなずいた。
「……学びたいです」
ミレイアが、
少し笑う。
「いいわ」
ガルドが、
鼻を鳴らす。
「逃げんなよ」
ロシュが、
にっと笑う。
「一緒に、
強くなろう」
エナの胸に、
温かいものが
広がった。
初めて、
未来を
思い描いた。




