第4章 違和感
森の中を進む足取りは、
明らかに軽くなっていた。
ガルドは、
自分の足の動きを
何度も確かめる。
「……おかしいな」
独り言のように呟く。
疲労が、
ほとんどない。
ここまで歩けば、
通常なら
脚が重くなっているはずだ。
ミレイアは、
その様子を横目で見ていた。
ロシュも、
無意識に肩を回す。
「俺さ」
ロシュが言う。
「今日、
全然だるくならない」
ガルドは、
鼻を鳴らす。
「気のせいだろ」
だが、
自分でもそう思えない。
森の奥へ進む。
小さな丘を越えたところで、
魔物の気配。
ゴブリンが、
三体。
「数は少ない」
ガルドが剣を抜く。
エナは、
いつもの位置。
少し後ろ。
胸が、
きゅっと縮む。
「軽量化」
小さく唱える。
光は、
ほとんど見えない。
「集中補助」
続けて、
もう一つ。
誰にも気づかれない。
ゴブリンが、
突っ込んでくる。
ガルドが前へ。
速い。
一体目を、
一撃で斬り伏せる。
ロシュが、
二体目へ。
剣が、
迷いなく走る。
ミレイアの矢が、
三体目の額を貫く。
戦闘は、
数秒で終わった。
静寂。
ガルドは、
剣を下ろす。
「……早すぎだろ」
ミレイアは、
周囲を警戒しつつ言う。
「連携が、
噛み合ってる」
ロシュは、
エナをちらりと見る。
エナは、
慌てて視線を逸らした。
心臓が、
ばくばくしている。
ミレイアは、
確信に近いものを
感じていた。
この違和感。
戦闘が、
楽すぎる。
ミレイアは、
歩きながら言う。
「エナ」
「……はい」
「魔法、
歩いてる間も
使ってる?」
エナは、
少し迷ってから
うなずいた。
「……癖で」
ミレイアは、
小さく息を吸う。
やはり。
「どのくらいの間隔で?」
「……わかりません」
「気づいたら、
使ってます」
ミレイアは、
ガルドを見る。
「この子の魔法、
重なってる」
ガルドは、
眉をひそめる。
「だから、
楽なのか?」
「たぶんね」
ロシュが、
目を丸くする。
「そんなこと、
できるのか?」
「理屈上は」
ミレイアは答える。
「普通は、
無駄だからやらない」
「でも、
無駄じゃなかった」
エナの胸が、
どくんと鳴る。
無駄じゃない。
その言葉が、
胸に刺さる。
「……すみません」
思わず出た。
ガルドが、
怪訝な顔をする。
「なんで謝る」
エナは、
答えられなかった。
謝る癖は、
簡単には消えない。
ミレイアは、
静かに言う。
「あなたがいると、
戦いやすい」
短い言葉。
でも、
エナの胸に
深く沈んだ。
森を抜け、
開けた場所に出る。
遠くに、
小さな洞窟が見えた。
今日の目的地だ。
「ここからが、
本番だな」
ガルドが言う。
エナは、
杖を握りしめる。
怖い。
それでも。
自分の魔法が、
役に立つかもしれない。
その思いが、
足を前に出させた。
違和感は、
確信へと
変わりつつあった。




