第13章 気づかれぬ功績
デスナイトを倒した部屋で、
しばらく休憩を取った。
ガルドは、
壁にもたれ、
目を閉じている。
ロシュは、
床に大の字。
「死ぬかと思った……」
ミレイアは、
静かに水袋を口にする。
エナは、
自分の手を見る。
小刻みに、
震えている。
魔力の枯渇。
使いすぎた。
※魔力枯渇とは、
体内の魔力が減りすぎ、
強い疲労やめまいが出る状態。
エナは、
小さく深呼吸する。
「……みんな、
大丈夫?」
ロシュが、
親指を立てる。
「お前のおかげでな」
エナは、
首を振る。
「私、
何も……」
ガルドが、
目を開ける。
「いや」
短く。
それだけ。
ミレイアは、
エナを見る。
「あなたが、
止めなかった」
「だから、
私たちは止まらなかった」
エナは、
意味が分からない。
「……?」
ミレイアは、
それ以上、
説明しない。
しばらくして、
体力が戻る。
帰還を決めた。
ダンジョンを出る道中。
足取りは、
重い。
だが、
心は軽い。
入口の光が、
見えたとき、
ロシュが叫んだ。
「外だ!」
四人は、
無事帰還。
ギルドに戻ると、
ざわめきが起きる。
受付嬢が、
目を見開く。
「中級ダンジョンから、
生還ですか!?」
ガルドが、
無言で依頼書を出す。
受付嬢は、
何度も確認する。
「……討伐対象、
デスナイト?」
周囲が、
静まる。
冒険者たちの視線が、
集まる。
ロシュが、
照れくさそうに笑う。
「まあ、
ギリギリでな」
視線は、
ガルドとロシュへ。
ミレイアにも。
エナには、
向かない。
いつも通り。
エナは、
それでいいと思った。
目立つのは、
怖い。
評価されたら、
期待される。
期待されたら、
失敗が怖い。
受付嬢が、
報酬袋を置く。
「正式記録に残ります」
「おめでとうございます」
ガルドは、
袋を受け取る。
ミレイアは、
何も言わない。
ロシュは、
エナを見る。
一瞬。
何か言いたげに。
でも、
言わない。
その夜。
宿の部屋。
エナは、
ベッドに座る。
天井を見る。
自分は、
何をしたのだろう。
思い出すのは、
必死で唱えた
小さな魔法。
それだけ。
それなのに。
みんな、
生きている。
胸の奥で、
小さな灯が、
ともった。
気づかれぬ功績。
それは、
静かに、
積み上がっていく。




