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覇狼、地を貫く  作者: 神箭花飛麟
臥竜、雲を掴む
5/21

IV 父の早すぎる死

時代考証などはすべて集英社「アジア人物史 第5巻 モンゴル帝国のユーラシア統一」に拠ります。

少し普段よりも短めになります。更新が遅れて申し訳ないです。

テムジンは目の前の痩せた漢人の少年を見つめた。

舜。妙な名だ。だが、この少年の目には何かがある。

恐怖に怯えながらも、必死に理解しようとする聡明さ。

文を書く手つきも、ただ者ではない。

「舜よ、お前に我が生涯を語ろう」

少年が顔を上げ、筆を構える。

よし、ならば全てを話そう。

この少年に、我が歴史を託すのだ。


「今でこそ、モンゴルを支配している我々だが、30年前は追いやられて領地も微々たるものだった」「今でこそ、モンゴルを支配している我々だが、30年前は追いやられて領地も微々たるものだった。」水を少し飲み、ため息をつく。

「すべてはあのタタル族のせいだ。あいつらがモンゴルを一つにしかかっていた父上を残酷にも10倍もの力で襲ったせいで父上は討ち取られ、再びモンゴルはバラバラになってしまった。」テムジンは父が最後に出した伝令兵の言葉が忘れられない。

『イエスゲィ様が領地を巡回していて南の端まで着いた時、たまたま大きい獲物がいて、それを狩ったので準備をしておけという伝令でした。あの時は特に近くに何の情報もなく安心していました。そして私が100アルダ(1アルダは1.6mほどなのでおよそ160m)ほど離れた時物音がして振り返ると、急にイエスゲィ様の周りに200騎ほどが襲い掛かりました。

私は遠くから加勢しようと駆けましたが、すでにたどり着いた時には20騎もいた味方は一騎も見えませんでした。しかしすぐ着くというところまで迫った時、すでに味方がいなくなっていたイエスゲィ様はこちらに気づいて微笑まれたような気がした直後、胸を刺し貫かれていました。早く事を知らせるためにそのあとは逃げに逃げました。共に死ねなかったのは言葉では言い表せない思いです。』

そこまで言って彼は泣き崩れ、テムジンの苦難の時代が始まったのだ。

モンゴル高原は今いくつかの氏族に分かれており、テムジンが属するモンゴル族の中でキャト氏とタイチウト氏の勢力がある。テムジンはキャト氏の長という立場で長年勢力を広げることに尽力してきた。

その他にも西のメルキト族、東の金国に援助されているタタル族、西南のケレイト王国、ナイマン王国が代表的な勢力である。その他にもメルキト族とボルチギン氏の間やタタル族周辺などにも多数の氏族がいる。

父イエスゲィはタタル族との戦いの中で台頭したらしく、そこで討ち取ったテムジン・ウゲという武将から息子の名を取ってテムジンの名がつけられたことはずっとずっと後に知った。

9歳のころ、父を亡くし、それまで当たり前のように周りにいた人々がだんだん減っていき、自分たちの

家族と家令だけになってしまった時は何とも言えない悲しみを覚えた。

「父が10歳にならないときにいなくなってからは周りに溢れていた人は消えていき、人が少なくなってからはもう、武術の師などもいなかったから自分で鍛えるしかなかった。」それでテムジンは少し明後日を見る目をした。

「13歳の時、タイチウト氏の迫害や嫌がらせがあまりにも酷く、1人で身分を隠して出奔し、北の雪原や東の山脈、北東の豊海(バイカル)まで行った。だが、草原の覇者は細かい金、資源や商いのことなどは考えない方がいいなどと思って南の金国や西遼、西夏には行かなかった。まあ、若かったのだな。」

必死で書き込んでいた舜が不意に目を上げ、問いかけてきた。

「それで今まで使わなかった漢人を今、私から使ってみてもっと国を広げようとしているんですか。」

「惜しい」

テムジンは苦笑した。

賢い少年だ。だが、まだ若い。

「俺の理想は国がない大地、いや正確にいうと、国境がない世界だ」

舜が目を見開く。

当然だろう。誰もがそう驚く。

だが、俺は本気だ。

「あぁ。国が一つなら大きな諍いやそれがもっと大きくなって戦争などは起きない。だからこの地が続く限り、俺は戦う事をやめない」

舜は呆気に取られているようだ。

まあ、急に会った大人に世界を全て国の版図に入れるなど、確かに途方もない夢には違いない。

だが―

テムジンは舜の目を見た。

この少年は、笑っていない。

馬鹿にもしていない。

ただ、真剣に聞いている。

この少年は...信じてくれるかもしれない。遂にこの草原は制した。ここから全ては始まり、世界へと広がるのだ。

「すまない。話を続けるか。」舜が必死に書き記している。その横顔は真剣そのものだ。この少年は、きっと我が歴史を正しく書き記してくれるだろう。

そして、いつの日か―

世界が一つになった時、この記録が意味を持つ。

「...はい!」

少年の返事は、力強かった。

(さて、これからどうなるか。楽しみだな)

テムジンはゲルの外を見た。

草原と天が、どこまでも広がっている。

レビュー、評価、感想をしてくだされば嬉しいです!!!!!

この当時のモンゴル高原の勢力図は下のリンクの地図を見てもらえば理解しやすいと思います。

https://ja.wikipedia.org/wiki/ファイル:12世紀のモンゴル高原.png

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― 新着の感想 ―
知られざるテムジンの物語開幕ですね 壮大な理想も彼なら納得です
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