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覇狼、地を貫く  作者: 神箭花飛麟
対峙

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Ⅳ 決戦

時代考証などはすべて集英社「アジア人物史 第5巻 モンゴル帝国のユーラシア統一」に拠ります。

1215年、春。

アウラガの中央広場。

チンギスが、全軍を集めていた。

十二万の大軍だった。

「諸君」

チンギスの声が響く。

「今年、金を滅ぼす」

兵たちが、どよめいた。

「開封府を落とし、衛紹王を捕らえる」

「金という国を、この世から消す」

「おおおおお!」

兵たちが雄叫びを上げた。

遼舜は、その光景を記録していた。

(ついに、金滅亡の年か)


出陣の前夜。

チンギスの天幕。

息子たちが集められていた。

ジョチ、チャガタイ、オゴデイ、そしてトルイ。

トルイは、まだ十歳だった。

「父上」

トルイが聞いた。

「俺も、戦に出るのですか?」

「いや」

チンギスが首を振った。

「お前は、まだ若い」

「ですが...」

「トルイ」

チンギスがトルイの肩に手を置いた。

「お前の時は、必ず来る」

「焦るな」

「...はい」

トルイが頷いた。

チャガタイが口を開いた。

「父上、今回の戦は?」

「右翼は、ジョチとジェベ」

「中央は、俺とオゴデイとムカリ」

「左翼は、チャガタイとスブタイ」

チンギスが答えた。

「そして、後方はボオルチュが統べる」

ジョチが黙って聞いている。

無口な長男は、いつも寡黙だった。

オゴデイが笑った。

「今回こそ、金を終わらせますね」

「ああ」

チンギスが頷いた。

「お前たちの代で、草原は統一される」

「その第一歩が、この戦だ」


ボルテの天幕。

ボルテが、息子たちを呼んでいた。

「お前たち」

ボルテが静かに言った。

「無茶はするな」

「母上...」

オゴデイが苦笑した。

「俺たちは、もう子供ではありません」

「分かっている」

ボルテが微笑んだ。

「だが、母は心配するものだ」

ジョチが頷いた。

「母上、ご安心を」

「必ず、無事に戻ります」

チャガタイも続いた。

「金など、恐れるに足りません」

ボルテは、三人を見つめた。

そして、トルイを抱き寄せた。

「トルイ、お前は兄たちが帰るまで、母と共にいなさい」

「はい」

トルイが頷いた。

だが、その目には悔しさが滲んでいた。


翌朝。

モンゴル軍が出陣した。

遼舜は、星歌と遼海に別れを告げた。

「行ってくる」

「気をつけてね」

星歌が遼海を抱いている。

遼海は、二歳になっていた。

「父上」

遼海が小さな声で言った。

「うん」

遼舜が遼海の頭を撫でた。

「いい子にしてろよ」

「はい」

遼海が頷いた。

遼舜は、馬に乗った。

(今回で、金との戦は終わる)

(そうしたら、もっと遼海と一緒にいられる)


軍は、南へ進んだ。

中都を通過する。

廃墟は、少し片付けられていた。

モンゴル兵が、駐屯している。

「殿」

ボロクルが報告に来た。

四駿の一人、護衛の名手だ。

「中都の守備は、問題ありません」

「そうか」

チンギスが頷いた。

「お前は、ここに残れ」

「はっ」

ボロクルが頭を下げた。

「中都を、しっかり守れ」

「承知しました」


軍は、さらに南下した。

数週間後。

黄河が見えてきた。

「あれが、黄河か」

ジェベが呟いた。

「大きいな」

「ああ」

ジョチが頷いた。

「渡るのは、大変だぞ」

だが。

チンギスは、すでに準備していた。

「チラウン」

「はっ」

四駿の一人、外交担当のチラウンが前に出た。

「船を集めろ」

「すでに、手配してあります」

チラウンが答えた。

「地元の漁師たちを買収しました」

「よくやった」

チンギスが笑った。

数日後。

モンゴル軍は、黄河を渡った。

船が、何往復もする。

兵と馬が、次々と対岸に渡る。

遼舜は、その様子を記録した。

「黄河渡河、成功」

「チラウンの外交手腕による」


対岸。

開封府まで、あと数日の距離だった。

「殿」

タリゲーンが報告に来た。

ボオルチュの部下だ。

「斥候の報告です」

「うむ」

「開封府から、軍が出てきています」

「数は?」

「五万です」

チンギスが眉をひそめた。

「五万...去年より増えているな」

「南宋の援軍かと」

タリゲーンが答えた。

「ほう」

チンギスが興味を示した。

「南宋も、本気か」


開封府。

完顔遠理が、軍を率いていた。

金軍、三万。

南宋軍、二万。

合わせて、五万だった。

「完顔将軍」

南宋の将軍、孟珙が話しかけてきた。

若い将軍だが、有能だと聞いている。

「孟将軍」

「今回は、よろしくお願いします」

「こちらこそ」

完顔遠理が頷いた。

「モンゴルは、我ら共通の敵だ」

「力を合わせて、撃退しましょう」

「ああ」

だが。

完顔遠理は、不安だった。

(五万で、十二万のモンゴル軍に勝てるか?)


耶律楚材は、開封府に残っていた。

兵站の統括だ。

「楚材殿」

部下が来た。

「食料の備蓄、完了しました」

「そうか」

耶律楚材が頷いた。

「矢は?」

「十五万本、用意しました」

「よし」

耶律楚材は、書類を見た。

(これで、半年は持つ)

(もし城攻めになっても、耐えられる)

だが。

(遠理殿、無事でいてくれ)


野戦場。

両軍が、対峙した。

モンゴル、十二万。

金・南宋連合、五万。

「久しぶりだな、完顔遠理」

チンギスが笑った。

完顔遠理が前に出た。

「チンギス・ハン」

「今回は、南宋の援軍もいるようだな」

「ああ」

完顔遠理が頷いた。

「我らは、お前を止める」

「ほう」

チンギスが面白そうに笑った。

「できるのか?」

「やってみせる」

完顔遠理が剣を抜いた。


戦いが、始まった。

モンゴルの右翼が、動いた。

ジョチとジェベが、金・南宋連合の左翼に突撃する。

「来たぞ!」

南宋の兵が叫んだ。

孟珙が指揮を執る。

「盾を構えろ!」

「槍を前に!」

南宋兵が、陣形を整えた。

モンゴルの騎兵が、ぶつかる。

「ぐあっ!」

南宋兵が倒れる。

だが。

孟珙の指揮は、見事だった。

「後列、前へ!」

「倒れた兵の穴を埋めろ!」

南宋軍は、耐えた。

ジェベが舌を巻いた。

「なかなか、やるな」

「ああ」

ジョチが頷いた。

「だが、ここで止まるわけにはいかん」

二人は、さらに攻めた。


中央。

チンギスとオゴデイとムカリが、金軍本隊と激突していた。

完顔遠理が、剣を振るう。

「押せ!押し返せ!」

金兵が、必死に戦う。

オゴデイが笑った。

「父上、敵は強いですね」

「ああ」

チンギスが頷いた。

「だが、我らの方が強い」

「スブタイ!」

「はっ!」

左翼のスブタイが、動いた。

包囲の動きだ。

完顔遠理が気づいた。

「くっ...また包囲か」

「孟将軍!」

完顔遠理が叫んだ。

「右翼を固めろ!」

「承知!」

孟珙が右翼に駆けた。


戦いは、日が傾くまで続いた。

そして。

金・南宋連合軍は、じりじりと押されていった。

数の差が、出始めていた。

「遠理殿!」

金の将軍、完顔陳和尚が叫んだ。

若い将軍だが、勇猛だった。

「このままでは、包囲されます!」

「分かっている!」

完顔遠理が歯噛みした。

(だが、どうする)

その時。

孟珙が来た。

「完顔将軍!」

「退きましょう!」

「...!」

「このままでは、全滅します!」

完顔遠理は、迷った。

だが。

(孟将軍の言う通りだ)

「...退却だ」

完顔遠理が命じた。

「全軍、退却!」

金・南宋連合軍は、秩序を保って退いた。

モンゴル軍が追撃する。

「逃がすな!」

ジェルメが叫んだ。

四狗の一人だ。

矢が、退く敵兵を射抜く。

「ぐあっ!」

次々と倒れていく。

だが。

完顔遠理と孟珙の指揮は見事だった。

殿軍が、モンゴルの追撃を食い止める。

「ここで食い止めろ!」

完顔陳和尚が叫んだ。

若い将軍が、身を挺して戦う。

「よし、本隊は退け!」

完顔遠理が命じた。

金・南宋連合軍の本隊は、開封府に向けて退いた。


夜。

モンゴルの陣営。

チンギスが、戦果を聞いていた。

「敵の損害は?」

「一万五千です」

ボオルチュが報告した。

「我が軍は?」

「四千です」

「ふむ」

チンギスが頷いた。

「予想より、苦戦したな」

「南宋の将軍が、有能でした」

ムカリが言った。

「孟珙という男です」

「孟珙か」

チンギスが名を覚えた。

「クビライ」

「はっ」

四狗の一人、クビライが前に出た。

「敵の情報を集めろ」

「孟珙という将軍について、詳しく知りたい」

「承知しました」


遼舜は、記録を取っていた。

「1215年春、黄河渡河」

「金・南宋連合軍と交戦」

「敵損害一万五千、味方損害四千」

「南宋の孟珙、有能な将と判明」

遼舜は、思った。

(金だけではない)

(南宋も、本気で戦い始めた)


開封府。

完顔遠理と孟珙が、戻ってきた。

耶律楚材が出迎えた。

「遠理殿、お疲れ様です」

「ああ...」

完顔遠理が疲れた顔で頷いた。

「負けた」

「ですが、全滅は免れました」

孟珙が言った。

「これで、城に籠もれます」

「そうだな」

完顔遠理が頷いた。

「城攻めになれば、我らに分がある」

完顔陳和尚が、傷を負いながらも笑った。

「次は、城で迎え撃ちましょう」

「ああ」

三人の将軍は、希望を持っていた。

だが。

衛紹王は、震えていた。

「も、モンゴルが...また来る」

「陛下、ご安心を」

耶律楚材が言った。

「城は堅固です」

「そ、そうか...」

衛紹王は、もう判断力を失っていた。


数日後。

モンゴル軍が、開封府に到着した。

「見えたぞ」

チンギスが言った。

「開封府だ」

巨大な城壁が見える。

中都より、さらに大きい。

「今回は、どうしますか?」

オゴデイが聞いた。

「包囲する」

チンギスが答えた。

「だが、長くは待たない」

「...え?」

「攻める」

チンギスが宣言した。

「城を、攻め落とす」

将軍たちが驚いた。

チンギスは、今まで城攻めを避けてきた。

だが。

「今回は違う」

チンギスが続けた。

「金を、完全に滅ぼす」

「そのためには、開封府を落とさねばならん」

「準備しろ。攻城戦だ」

「はっ!」

全員が答えた。


遼舜は、記録した。

「1215年、開封府包囲開始」

「チンギス、攻城戦を決意」

遼舜は、不安だった。

(城攻めは、難しい)

(味方の損害も、大きくなる)

だが。

(これで、金との戦が終わるなら)

遼舜は、空を見上げた。

開封府の城壁が、そびえ立っていた。

最後の戦いが、始まろうとしていた。

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