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覇狼、地を貫く  作者: 神箭花飛麟
対峙

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Ⅲ 再起

時代考証などはすべて集英社「アジア人物史 第5巻 モンゴル帝国のユーラシア統一」に拠ります。

1214年、春。

中都を手に入れたチンギスは、決断した。

「一旦、草原に戻る」

「殿」

ボオルチュが驚いた。

「このまま、開封府を攻めないのですか?」

「ああ」

チンギスが頷いた。

「兵も疲れている。補給も必要だ」

「それに」

チンギスが地図を見た。

「開封府は、中都よりさらに南だ」

「遠すぎる。今は引く」

「では、来年また?」

「そうだ」

チンギスが笑った。

「金は逃げた。だが、もう力はない」

「来年、必ず落とす」

遼舜は、この判断を記録した。

(殿は、慎重だ)

(無理に攻めず、確実に勝てる時を待つ)


数週間後。

モンゴル軍は、アウラガに戻った。

民衆が、出迎えた。

「殿が帰られた!」

「中都を落としたぞ!」

歓声が上がる。

遼舜は、急いでゲルに向かった。

「星歌!」

「舜!」

星歌が飛び出してきた。

二人は、抱き合った。

「無事で...よかった」

星歌が泣いていた。

「ああ。ただいま」

遼舜が微笑んだ。

「遼海は?」

「ここに」

星歌がゲルを指差した。

遼舜は、中に入った。

遼海が、寝ている。

一歳になった息子。

遼舜が出陣した時より、ずっと大きくなっていた。

「遼海...」

遼舜が近づいた。

遼海が、目を覚ました。

遼舜を見て、不思議そうな顔をする。

「遼海、これが父上だよ」

星歌が言った。

遼海は、じっと遼舜を見ていた。

そして。

手を伸ばした。

遼舜は、その小さな手を握った。

「...遼海」

遼舜の目から、涙が溢れた。

「大きくなったな」

星歌も、泣いていた。

三人は、抱き合った。

家族の再会だった。


その夜。

遼舜は、星歌と話した。

「戦は、どうだった?」

星歌が聞いた。

「...厳しかった」

遼舜が答えた。

「中都は、廃墟になっていた」

「疫病と飢えで、数千人が死んだ」

「...」

星歌が黙った。

「でも、金は開封府に逃げた」

遼舜が続けた。

「戦は、まだ終わらない」

「また、行くの?」

「ああ」

遼舜が頷いた。

「来年、また金を攻める」

星歌は、寂しそうな顔をした。

だが。

「分かった」

星歌が微笑んだ。

「私は、ここで待ってる」

「遼海と一緒に」

「ありがとう」

遼舜が星歌の手を握った。


同じ頃。

金。開封府。

かつて北宋の都だったこの街が、今は金の首都となっていた。

衛紹王は、新しい宮殿で震えていた。

「中都を...失った」

「モンゴルに...」

もう、立ち直れそうになかった。

完顔遠理は、軍の再編に追われていた。

「中都で失った兵は、四万以上」

「残っているのは、わずか二万」

耶律楚材が報告した。

「二万か...」

完顔遠理が歯噛みした。

「足りん。全く足りん」

「徴兵を始めましょう」

「ああ」

完顔遠理が頷いた。

「開封府の民から、兵を集めろ」

「はい」

だが。

(モンゴルが来年また来たら...)

(守り切れるか?)

完顔遠理は、不安だった。


耶律楚材の執務室。

耶律楚材は、書類と格闘していた。

「食料、確保」

「武器、製造」

「城壁、補修」

やるべきことは、山ほどあった。

だが。

(時間が、足りない)

耶律楚材は、焦っていた。

(モンゴルは、必ず来る)

(それまでに、準備を整えなければ)

部下が入ってきた。

「楚材殿」

「何だ」

「南宋から、使者が来ています」

「南宋?」

耶律楚材が驚いた。

「何の用だ?」

「同盟の、申し出だそうです」

「...!」

耶律楚材が立ち上がった。

「通せ」


応接室。

南宋の使者が、待っていた。

「初めまして。私は南宋の使者、張と申します」

「耶律楚材だ」

二人は、座った。

「単刀直入に申し上げます」

張が言った。

「我が国は、金と同盟を結びたい」

「同盟?」

「はい。モンゴルに対抗するために」

耶律楚材は、考えた。

(南宋も、モンゴルを恐れているのか)

「条件は?」

「金が、我が国に侵攻しないこと」

張が答えた。

「その代わり、我らは金を支援します」

「兵糧、武器、そして必要ならば兵も」

「...」

耶律楚材は、迷った。

南宋は、かつて金の敵だった。

だが、今は。

(モンゴルという共通の敵がいる)

「分かりました」

耶律楚材が頷いた。

「陛下に、報告します」

「ありがとうございます」

張が頭を下げた。


数日後。

衛紹王は、南宋との同盟を承認した。

「わ、分かった」

「南宋と、同盟を結ぶ」

衛紹王には、もう選択肢がなかった。

完顔遠理と耶律楚材は、少し希望を持った。

「南宋の支援があれば」

完顔遠理が言った。

「モンゴルと、戦えるかもしれない」

「はい」

耶律楚材が頷いた。

「次こそ、勝ちましょう」

二人は、準備を続けた。


アウラガ。

遼舜は、遼海と遊んでいた。

遼海は、よちよち歩き始めている。

「ほら、こっちだ」

遼舜が手を広げた。

遼海が、歩いてくる。

よろよろしながら。

だが、確実に。

「すごい!」

星歌が拍手した。

「歩けるようになったね」

遼海が、遼舜の胸に飛び込んだ。

遼舜は、遼海を抱き上げた。

「よくやった」

遼海が笑った。

無邪気な笑顔。

遼舜は、その笑顔を見て思った。

(この子が大きくなる頃)

(戦のない世界になっているだろうか)


数ヶ月後。

七星の一星が、報告に来た。

「殿」

「うむ」

「金と南宋が、同盟を結びました」

「ほう」

チンギスが興味を示した。

「南宋も、動き出したか」

「はい」

「面白い」

チンギスが笑った。

「ならば、こちらも準備を急ぐ」

「来年、金と南宋、両方を相手にするかもしれん」

ボオルチュが聞いた。

「大丈夫ですか?」

「問題ない」

チンギスが答えた。

「金も南宋も、もう弱っている」

「恐れることはない」

遼舜は、この情報を記録した。

(金と南宋の同盟か)

(歴史が、また変わっていく)


1214年の冬。

遼舜は、遼海に文字を教え始めていた。

「これが、一だ」

遼舜が砂に棒を書いた。

遼海は、まだ理解できない。

だが、興味深そうに見ている。

「遼海も、いつか字が書けるようになる」

「そうしたら、色んなことを学べる」

遼海が、砂に手を伸ばした。

遼舜は、微笑んだ。

(この子に、何を教えるべきか)

(戦のことか)

(それとも、平和のことか)

遼舜は、まだ答えが出なかった。


その夜。

チンギスが、将軍たちを集めた。

「諸君」

チンギスが地図を広げた。

「来年、再び金を攻める」

「今度は、開封府を落とす」

将軍たちが頷いた。

「金は、南宋と同盟を結んだ」

「だが、恐れることはない」

「我らは、必ず勝つ」

チンギスの目が光った。

「そして、金を滅ぼす」

「はっ!」

全員が一斉に答えた。


遼舜は、記録を閉じた。

(1215年)

(金への、最後の攻撃が始まる)

遼舜は、遼海のことを思った。

(遼海...)

(お前が大人になる頃)

(俺は、どんな歴史を残しているんだろう)

草原の風が、静かに吹いていた。

冬が終われば、また戦が始まる。

だが、今は。

遼舜は、家族と共に過ごす時間を大切にした。

次の戦まで、残された時間は少なかった。

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