Ⅰ 出会い
時代考証などはすべて集英社「アジア人物史 第5巻 モンゴル帝国のユーラシア統一」に拠ります。
突然草原に放り出され、見知らぬ男たちに囲まれている。
これは夢なのか?いや、馬の体温、風の冷たさ、全てが現実だ。
(落ち着け...とりあえず従うしかない)
舜は必死に冷静を保とうとした。
舜は無理やり馬に乗せられ、乗馬など習ったこともなかったので非常に乗りにくかったがなんとか鐙(馬具の一種。乗馬で用いる)に乗れはした。
「馬に乗るのは初めてか。」 チンギスは言う。
「ええ、まあ」とは言った。
「そなた、名はなんと言う」チンギスが問う。
「えっと、舜です。中国古代の聖王の帝舜の舜です。」と舜が答えた。
「なるほど、親に苦労したのか。」
「えぇ、変わった名前をつけられた位は」と答えるとチンギスは苦笑している。
さすがにチンギスは中国の古典にも知悉している。帝舜が毒親に苦労したが孝行を第一とし人々に尊敬されたのも知っていると舜は思った。
「ええとあなたの名はなんと?」舜も問うた。
「ああ、すまない。テムジンと言う。」
(あ、たしか読んだ伝記では人々にクリルタイ[「集会」を意味するモンゴル語で、モンゴル帝国における最高決議機関]で推戴されるまでの名はテムジンと呼ばれていたと書いてあったな。)
「あ、見えてきたぞ。あれが俺たちのゲル(モンゴルの遊牧民が住む組み立て式の円形テント)だ。」テムジンが言う。どうやら狩りに出てきた時に見つけられたらしい。
しかし、空が広いと舜は思った。都会のビル群やマンションしか眺めてこなかった自分にはとても新鮮な風に思った。
「今の季節はいつなんですか」舜は重ねて問うた。
「んー、大体秋の半ばぐらいだな」
「そうですか。ゲルはもう移動したんですか?」
「そうだな、もうすぐ冬の場所に行く予定だ。」
「あなたはあそこにいる人たちの首長なんですか?」舜は質問を重ねた。
「お前、質問が多いぞ。もう少し後で聞けないのか。」テムジンはめんどくさそうに言う。
「あぁ、すいません。」
もう少し身を慎もうと舜は思った。
「おーい、着いたぞー!」テムジンが叫ぶ。
「テムジン、お前もいい身分なのにわずかな供回りで狩りなど、、モンゴルを統べる長なのですよ、あなたは。」とテムジンの妻らしき女が言った。
「全く、俺の従者をなめているのか」テムジンはひとりごちてぶつぶつ言っている。
「?あなた、そこの子供は?」女が言う。
「あ、草原で迷っていたから拾ってきたぞ、なんか珍しい身なりだしな。舜、あいさつしろ。」テムジンがぞんざいな紹介をする。
「ああどうも、舜です。」
「珍しい服を着ているわね。あと寒そうだわ。中に入りなさい。」女がさりげなく気遣う。
「ありがとうございます。あ、お名前は?」
「ボルテよ。蒼き狼のボルテ。」
「なるほど。」たしかテムジンの正妻だったボルテだ。確かに気丈そうな女性だ。
舜は中に入った。
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