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第52話 霊木の覚醒

完成した霊木の杖を手に、セラは森へ駆ける。

だがエルフの村に辿り着いた時、すでに戦闘は始まっていた。


矢の雨が降り、刃が閃く。

それでも押し寄せる魔物の群れ。


その時、霊木の杖が――本当の力を見せる。

森はすでに戦場だった。


セラが村の外縁に辿り着いた時、空気は血と土の匂いに満ちていた。

「間に合って……!」


視界の先で、エルフ達が一斉に弓を引く。

放たれた矢は、雨のように魔物へ降り注いだ。


だが――


「硬い……!」


巨大な体躯の魔物が、矢を受けながらも前進する。

皮膚は分厚く、筋肉は異様に盛り上がっている。


致命傷にならない。


足止めにはなるが、止まらない。


その前へ、二つの影が飛び込んだ。


「下がれ!」


リディアが低く叫ぶ。


剣が閃き、魔物の脚を断つ。

重心を崩したところへ、レオンの大剣が振り下ろされた。


鈍い衝撃音。

巨体が地面に叩きつけられる。


「あの二人の人間……すごい」


エルフの青年が息を呑む。


「仲間を助けるためだ!」

レオンが吠える。


彼らは退かない。


エルフの村を守るために、命を懸けている。


セラは杖を握り締めた。


「ファイヤーボール――」


詠唱を始めた瞬間。


「待て!」


エルフの長が叫ぶ。


「森が焼ける! 水か風にしてくれ!」


一瞬の逡巡。


火は強い。だが森は燃える。


「……ウインドカッター!」

詠唱を切り替える。


霊木の杖が、熱を帯びる。青白い光を放つ。


「なんだこの杖は……見たことない」

エルフの長が言う。


次の瞬間。


風が裂けた。


空気そのものが刃となり、一直線に走る。


「えっ……!」


セラ自身が目を見開いた。


一体、二体、三体。


魔物の巨体が同時に切り裂かれる。


肉が裂け、血が噴き上がる。


しかも――


「……まだまだ、いける?」

魔力が、ほとんど減っていない感じがする。


「いつもなら、魔法を使ったら息が上がるのに。」

これまでなら一撃で息が上がっていた。連続で魔法を使うとかなりの体力を奪われていた。


だが今は違う。

息が上がらない。魔力が減った感じもしない。

霊力が滑らかに流れ、無駄なく術式へと変換される。


「もう一度!」


ウインドカッター。


再び放つ。


今度は横薙ぎ。


複数の魔物が同時に膝を折った。


エルフ達が驚愕する。

「威力が……桁違いだ」

「しかも連射できるだと?」


セラは自分の掌を見つめた。

熱もない。重さもない。青白い光をうっすらと放っている。

ただ、自然に流れている。


「とんでもないものを……受け取ったのかも」

胸が震える。


だが立ち止まれない。

前線では、リディアが魔物の肩を断ち、レオンが腹を裂いている。


レンが矢を放ち、フィオが援護する。


エルフ達も負けじと射る。

だが決定打が足りなかった。


そこへ――


「退いて!」

セラが叫ぶ。


風が渦巻く。


これまでより強く、深く。


霊力が滑らかに加速する。青白い光がより強く発行する!


「ウインド・スラッシュ!」


大きく振り抜く。


圧縮された風刃が広範囲を薙ぎ払った。

巨体がまとめて倒れる。


森に静寂が戻る。


土煙がゆっくりと沈む。


最後の魔物が崩れ落ちた。

しばしの沈黙。


そして――


歓声。

「やったぞ!」


「退けた!」


エルフ達が息を吐く。


リディアが剣を払い、セラを見る。

「……良い杖だな」


「うん」

セラは笑った。

「最高よ」


レオンが大剣を担ぐ。

「修理どころか、別物じゃねぇか」


「流れが違う」

エリオスが静かに言う。


「霊力が淀んでいない」


セラは杖を抱きしめた。

カイの顔が浮かぶ。


削りすぎないように。

流れを見ながら。


あの集中。

あの静かな確信。


「守ってくれてありがとう」

アリアが微笑む。


「うん!」

セラは深く息を吐いた。


森は無事だ。

村も無事だ。


そして――


蒼月亭の灯が、確かにここまで届いた。

霊木の杖は、ただ直ったのではない。


覚醒したのだ。

霊木の杖、真価発揮。


魔力効率の向上。

威力の増幅。

そして連射性能。


カイの《修理》は、ついに戦場で証明されました。


次回、戦いの後。

境界の村とエルフの里の関係が、さらに一歩進みます。

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