第46話 約束
約束は、ここで動き出します
「……そうだったのかい」
ミレーヌ達は事の顛末を聞いた。
「ダリウスに会うとは運がいいね」とミレーヌ。
「ここにいる3人以外は、ダリウスしか知らないからね」
セラが真っ直ぐ言う。
「約束ですから。直していただけますか?」
カイは霊木を両手で受け取った。
木目を確かめ、指先でなぞる。
「……もちろんです」
一瞬、表情が引き締まる。
「ただ、すぐには直りません。杖の芯を作り直します。
霊力の流れも調整が必要です。……一週間ほど、時間をください」
レオンは即答した。
「了解した」
レンが周囲を見回す。
「じゃあその間、泊めてもらえますか?」
ミレーヌが笑う。
「もちろんだよ。うちは宿屋だよ」
その一言で、空気が柔らかくなる。
フィオがほっと息を吐いた。
「助かる……山越え、きつかった」
リディアはまだ油断していない。
「部屋は三つしか使えない。交代で見張りは必要だ」
「俺がやる」
レンがすぐに言う。
「いや、俺もやる」
レオンが肩を回す。
若いが、どこか真っ直ぐな一行だった。
カイは早速作業台へ向かう。
蒼月亭の看板は掲げているが、修理屋カイの看板はまだだった。
だが、ここはもう“修理屋カイ”だ。
霊木を慎重に削り出す。
杖の割れた部分を外し、芯を測り、長さを揃える。
セラは少し離れて見守っている。
仮修理の杖を胸に抱いたまま。
「緊張してる?」
フィオが小声で聞く。
「うん。でも、楽しみでもある」
セラは小さく笑う。
カイは霊木の中心を削り出しながら言う。
「この木は、ただ繋げればいいわけじゃありません。
霊力の流れを整えないと、逆に不安定になります」
レオンが腕を組む。
「難しいのか?」
「少し。でも、楽しいです」
木屑が舞う。
廃村に、再び“仕事の音”が響く。
ミレーヌは鍋に火をかけながら言う。
「一週間、働くなら食事は出すよ。宿代は後でまとめてだ」
レンが目を輝かせる。
「飯、ちゃんと出るんだ……!」
「当たり前だろ。宿屋だって言ったろ?」
ミレーヌが笑う。
霊木が削られていくたび、淡い光が増していく。
カイの手つきは迷いがない。
約束を守る。それだけに集中している。
セラはその背中を見つめる。
「……やっぱり、ここに来てよかった」
山を越え、灰を越え、辿り着いた場所。
廃村はもう、ただの廃村ではない。
霊木が形を変え始めたその瞬間から、
ここは“人が集まる場所”になっていた。
一週間。
その時間が、何をもたらすのか。
杖はまだ未完成のまま、静かに作業台に横たわっている。
A級パーティ《黎明の風》、一週間の滞在開始です。
廃村は、少しずつ拠点の姿を帯びていきます。
神木の杖が完成する時、物語もまた動く予定です。




