第44話 A級パーティ《黎明の風》
灰の街を越え、約束を抱えて。
若きA級パーティが、境界の廃村へ辿り着きます。
廃村の朝は、思いのほか静かだった。
井戸の水音。
鍬が土を割る鈍い響き。
軋む扉を直す金槌の音。
ミレーヌは畝を整え、カイは外れかけた窓枠を《修理》で固定し、リディアは箒を片手に周囲へ目を配る。
「水の出は安定してるね。悪くないよ」
ミレーヌが土を払う。
「この柱も、あと二本直せば雨は凌げます」
カイが木目を確かめる。
リディアは短く言う。
「……来る」
空気が変わった。
山道の向こうに、人影が四つ。
レンが最初に姿を見せる。小柄な斥候。息は荒いが目は生きている。
その後ろに弓使いフィオ、戦士レオン、そしてローブ姿の魔導士セラ。
背負い袋が、重そうだった。
リディアは即座に前へ出る。
「止まれ」
空気が張り詰める。
レオンが両手を上げる。
「敵じゃない。蒼月亭を探してる」
その言葉に、ミレーヌの眉がわずかに動いた。
「蒼月亭、ね」
セラが一歩前へ出る。
「修理屋カイさんに約束があって……」
カイはその声を聞いた瞬間、はっとした。
「ああ、あの時の」
セラの顔が明るくなる。
「覚えててくれたんですね!」
レンが背負い袋を下ろす。
中から布に包まれた木材が覗いた。
霊力が、わずかに空気を震わせる。
リディアの視線が鋭くなる。
「……神木か」
ミレーヌが思い出したように言う。
「ルミナの霊木。あんた達、取りに行ったのかい?」
レオンが笑う。
「約束だからな。A級パーティ《黎明の風》、舐めてもらっちゃ困る」
若いのに、どこか誇らしげだ。
カイはゆっくりと近づき、霊木を確かめる。
「……本当に、持ってきたんですね」
声に、少しだけ熱が混じる。
フィオが周囲を見渡す。
「でも……蒼月亭じゃないんですね、ここ」
「蒼月亭だよ」看板を指さす。「前のは焼けちまったから」
ミレーヌは肩をすくめる。
「だから、ここで再出発さ」
レンが井戸を覗き込む。
「水、出てる」
「カイが直した」
リディアが短く答える。
セラは、少しだけ安堵したように笑った。
「よかった……本当に生きてた」
カイが顔を上げる。
「どうしてここがわかったんだい?」
「ダリウスさんに教えてもらったんだ」
レオンとセラが顔を見合わせる。
セラが口を開く。
「実は……」
A級パーティ《黎明の風》、合流です。
“実は”の続きは次話へ。




