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新たな任務

急遽呼び出された高橋。

しかし彼は休暇を楽しむ部下を思い独自に動く。


その結末は?



第18話「新たな任務」お楽しみください。

―――7月22日 小松基地


呼び出しを受けた高橋は無線電話でアルトリアの伊藤の話を聞いていた。

「つまり、休暇は取り消しですか?」

高橋の不満を受話器の向こうにいる伊藤は感じとるが、この際四の五の言ってられない。

「残念だがな」

それを聞きながら高橋は考えていた。

人選は最小で高橋自身に任されている。

何も今休暇を取ってる仲間を引っ張り出さなくてもいいか?


「中隊長、人選は私がしても構いませんか?」

高橋はそう言ってにやりと笑みを浮かべる。

「人選は一任する。数人を選出して直ちにアルトリア基地に来てくれ。足は手配済みだ」

伊藤は高橋が何を考えてるかを想像していたが、休暇取り消しに対する不満ぐらいだろうと認識していた。

「了解、直ちに行動を開始します」

そう言って無線を切る。


数人か、なら本当に数人で納めるか。


良からぬ事を考えながら小松基地の待機所へ足を向けた。


「と、言うわけで俺と一緒にアルトリアに向かう気のあるやつはいるか?」

唐突に高橋が簡単な説明と共にアルトリアに行くかの志願者を募る。

待機所にいた何人かがざわめく。

その中に四宮もいた。

「私が志願します」

いの一番に席を立った四宮に高橋はやっぱりと言う思いだ。

「自分も行きます」

もう一人立ち上がる。

まだ20そこそこの若者だが、居ないよりいい。

他の自衛官はひそひそと話すばかりで他に志願者はでない。

想定よりマシだな、と考えた高橋はこれで志願を打ち切った。

「よし、上に話は通してある。即座に装備を確認し1030時(ヒトマルサンマル時と読み時間を表す)までに第二倉庫前に来い。遅れたらおいていくぞ」

高橋が命令を終え背を向けた瞬間、二人が待機所から飛び出して行った。

「さて、俺も支度するか」

高橋は二人が飛び出して行く様を見ながら一人呟くと与えられた自室に向かった。



―――同日 小松基地10時30分


第二倉庫前のC-130Hに荷物が運び困れていく。

その前に高橋と四宮、そして多田昭彦ただあきひこが揃っていた。

三人は即座にC-130Hに乗り込むと飛行時間を待つ。

それから30分後に彼等は空へと飛び立った。


飛行中に高橋はアルトリアでの注意か心構えを説明する。

アルトリアではちょっとした行動が大きな問題に成りかねない。

また、今までの常識が通用しないので、下手な優しさは自身のみならず仲間の命を危機に晒すのだ。

だから殺される覚悟ではなく、殺す覚悟をと四宮に言っていたのだ。

四宮はそれを頭では理解していたが、感情的にそれで良いのか疑問を持っていた。

だが、高橋は疑問を持つかも知れなくても、そう言うところであると言う認識を持たなければ危険きわまりない地だと教えた。

「隊長は人を撃った時どう思いましたか?」

人に向けて発砲したことのない多田は不安があったのだろう。

しかし、高橋はあっさりと言ってのける。

「夢中だったから何も、後で怖くなったけど慣れたな」

ホードラーの騎兵を相手にしたときから高橋は撃つべき時には全く躊躇わなくなっていた。

撃たれる側にも家族など守るべきものがあるはずだ。

だが、一々そんな事を考えてたら此方が殺られる。

それなら何と言われようと殺る側に回る。

それが今の高橋だ。

ただし、そんな高橋も子供などを相手には撃ちたくないとは思う。


だが、敵として撃った相手が年端も行かない子供だった事など何度もある。

その度に後悔し、悩み、それでも前に進んできた。

そうしなければならないところ、それがアルトリアだと思った。

「自分は撃てるでしょうか?」

多田は人を撃つと言う行為に躊躇いはない。

だが、だからと言って撃てるかどうかは別だ。

「撃てるさ。撃てなきゃ死ぬだけだ」

敢えて高橋は突き放す。

四宮はそんな高橋に基地で見た時とは打って変わって冷たい印象を感じた。


(これがアルトリアで戦った人なのか)


そう思いながら自分は果たしてどうなのか?

と言う自問自答を繰り返していた。


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