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日本での休暇3

それぞれがそれぞれの目的に一旦別れた後、井上、佐藤、ミューリの三人は取り敢えず井上の実家に向かって電車を使い移動を開始した。

ミューリは取り敢えず周りから奇異の目で見られない様に小松基地の女性職員から私服を借りて着ていた。

その手触りや感触、軽さから王族や諸侯が着る物より上等な物であると思ったミューリは目を見張ると共にそれが一般流通している事に驚いていた。

更に電車に乗った時などは、何時の時代の人だ?と言うぐらいはしゃいでいた。

これでは幾ら服装をそれらしくしても無意味だ、と佐藤は思ったが、電車内は限りなく無人に近かった。

「資源問題の影響ですかね?」

佐藤は井上の意見を聞きたくてその方向に目を向けた。

井上はようやく使い道が出来た携帯をいじくりながら情報を集めていた。

「みたいだな。どうも企業は開店休業状態らしい」

井上の実家は小さな町工場だ。

だから仕事が無くなり倒産してるだろうな、と井上は思った。

「・・・まさか天井からぶら下がって無いよな・・・?」

かなり不謹慎かつ不吉な事を口にしているが、実際は結構心配だったりする。

「・・・まあ、債権に関しては銀行も取引を停止してるみたいなので大丈夫だとは思いますけどね」

佐藤の慰め、と言うより呆れた感じの言葉ではあるが、井上は幾らか助けられた感じがした。



「おお!元気そうだな康二!」

井上の想像の斜め上を行った元気な父、井上安平いのうえやすひらが出迎えてくれた。

「・・・親父、元気そうだな」

安平は息子の帰還に喜び酒を取り出した。

この物資不足で色々統制されているなかで酒をどうやって調達しているのか不思議だった。

「なぁに、自前で作ったんだよ」

堂々と密造酒宣言されて井上が唖然とする。


(なるほど、井上さんより井上さんのお父さんの方が遥かに上なんだ。・・・色々な意味で・・・)


佐藤が二人の様子にこの二人が親子であるのを認識した。

ただし、井上の方がまだマシだと言う不本意な認識だったが・・・。

「ところでその娘さんは?」

安平が井上にミューリの事を聞いてきた。

「ああ、この子は・・・」

説明しようと井上が口を開いた時、安平が何かに気付いた様な表情をした。

「ま、まさか・・・」

何を言い出すか分からない父親だから「嫁か!?」ぐらい言うと井上は思っていた。

「大陸から拐って来たのか!?」

余りにもズレた、と言うか斜め上の考えに井上がガックリと肩を落とした。


(井上さんが・・・振り回されている)


滅多に見られない珍しいものを見た気持ちになっていた佐藤が代わりに答えた。

「詳しくは言えませんが一応お客様です」

佐藤は当たり障りのない様に説明する。

ミューリの立場は研修者と言うだけなら答えても良いとなっていたが、この人では変にばらされるどころか誇張されて広められかねない。

だが、佐藤の考えとは裏腹に安平は腕を組み考えだした。

「おいおい、考え込む様な事かよ?」

井上が安平にそう言って似合わないからやめれ、と言った。

「康二、何か事情があるようだから何も聞かなかった事にしとくよ」

真面目な返答に井上は遂にイカれたか?と考えてしまった。

「詳しい事情が話せないなら話さなくていい。だが、せっかく来たんだ。楽しんでいってくれ」

安平は非常識な人間だが、人の事については異常な程に察しが良いのだ。

普段の行動と言動が故に実の息子にさえ誤解されているが、ただ者ではなかった。


まだ続きます。

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