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日本での休暇

日本に帰って来た高橋たちだったが思いがけない事情により休暇は・・・。


第16話です。


更新はちょっと遅れる予定です。

ーーー7月18日、日本海上空。


高橋たち特殊任務部隊は一週間の休暇の為に日本を向けてC-130Hにて移動中だった。

しかし、後一時間という所で想像もしない事件に巻き込まれた。

と言うか事件が起きた。

貨物室で談話していた所に貨物室担当になっていた乗員が来たのだ。

それ事態は普段からありえる事だが、その乗員が見慣れぬ荷物を見つけた事からそれは始まった。

「すいません、この大きな革袋は誰のものですか?」

その問いかけに答えられる者はいない。

皆、手荷物程度の物だからだ。

「日本に輸送予定の貨物じゃないのか?」

高橋の言葉に乗員が首をかしげる。

「いえ、今日の貨物はコンテナ一個ぐらいで他には・・・」

乗員の言葉に一瞬緊張が走る。


ホードラー制圧に抵抗するテロリスト!?


そう思うのは誰も責められない。

なぜなら、今は沈静化、と言うよりホードラーにおける弱体化しているファマティー教の教会が、以前より暴動を扇動し、テロリズムを展開していたのは記憶に新しい。

もしかしたらそのファマティー教のテロリストが何かしらの爆発物やそれに類するテロを実行していたら?

緊張した空気の中、高橋が油断なく革袋に接近する。

乗員を後退させて革袋の革紐を慎重に解いた高橋は、数人が周りで万が一に備え待機したのを確認してから革袋を一気に開けた。

その中身を見たとき、高橋のみならず全員が一斉に声をあげることになる。



「なにしとんじゃぁぁぁぁぁぁ!」



それは非常に困った事であり、非常にどうしようもない事件だった。




―――同日、東京内閣総理大臣官邸。


「・・・話は聞いた、が、私にどうしろと言うのかね?」

鈴木は小松基地から防衛省に上げられた報告に頭が痛かった。

「どうしろ、と言う話ではない。どうしたらいいか、と言う話だ」

伊達も頭痛がする思いだった。

鈴木や伊達に報告した伊庭自身、これの対象に困っていた。

「テロ目的ではないと断言出来ますが、何分こんな事態は想定外でして・・・」

普段は冷静かつ合理的な思考をする伊庭でさえも想定外どころか思考の斜め上な事態に頭を抱えていた。

「単純な密航者、とは出来ないのが辛いな」

鈴木は報告書を机の上に放り投げるとため息をついた。

「現行法では日本領となってるアルトリア地域からの密航だからな。何よりこの連中と関わりが深い」

伊達は臨時編成である特殊任務部隊の面々が書かれたリストを見ながら言った。

「・・・下手に特例を認めるとわんさか来たりしかねないしな」

鈴木の脳裏に戦後直後の密入国者の問題が浮かんでいた。

実際はそこまでの能力は無いのだが、それが起きては面倒だ。との考えがあった。

「取り敢えず、搭載貨物に紛れ込んでいたのだから拘束の後に強制送還かな?」

これしか無いのではないか?と伊達が言ったが、伊庭は別の方法を提示した。

「甘いかも知れませんが、敢えて向こうからの日本視察者、もしくは研修者扱いにすべきでは?一応報告ではかなり日本に協力してくれていますし・・・」

双方の意見を聞きながら鈴木は頭を抱えた。

流石に罰するのは不味い。

現地ではまだ施行していない幾つかの法令が混じっているため、現地人に適用出来なかったのだ。

「・・・もういい、私の責任で対処するしかないな」

鈴木の諦めた様な言い方に二人も諦めた。

「伊庭君、研修者として扱ってくれ。色々法制上不味いのは分かるが今は下手に騒げない」

鈴木の判断に伊庭が善処します。とだけ答えた。



「馬鹿野郎!何て事をしてくれたんだ!」

小松基地の一室高橋が本気で怒鳴り声をあげる。

目の前ではミューリが涙目でうなだれていた。

これは周りも押さえようがない。

高橋たちはもう今更だから構わないが、可哀想なのは高橋たちを運んできたC-130Hの乗員だ。

安全航行の確認ミス、と言うことで地上待機を命じられたのだ。

これは確かに乗員にも不手際があった。

それは間違いない。

しかし、それとこれとは別だ。

「アルトリアじゃ多少の事は目を瞑れるが日本じゃそうは行かないんだ!」

高橋は本気で怒っていた。

ミューリが如何なる事情があろうと密航した事には代わりない。

それはかなり軽率で許されない行為だ。

故に他の隊員も庇うに庇えないのだ。

「・・・」

もうミューリは涙目どころか泣いていた。

流石に罪悪感があるがこればかりは高橋も押さえられない。


罪悪、自分の責任にしてしまうか・・・。

その実、高橋は全部自分が悪いと言う事にする気だった。

それでも難しいのは分かっていたが、こうでもしなければ助けようがない。


その時、部屋のドアが開いた。

「失礼します」

凛とした声と共に書類を持った女性自衛官が室内に入ってきた。

「この度の事態の解決に当たります四宮加奈子しのみやかなこ曹長であります」

ビジッとした敬礼をした四宮に高橋が答礼した。

「大陸でのご活躍は耳にしております高橋少尉」

四宮はそう言うとミューリに向かった。


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