王国領へ3
調査派遣隊の対王国方面隊は森の指揮の下、補給を受けて王国領内に部隊を動かしていた。
目的はホードラー王国を降伏させ、アルトリア領域の安全確保、並びにホードラー王国内における異教徒、つまりファマティー教を信仰しない人々の保護である。
始めは賛否別れていたが、今後もこの世界に日本が存在する以上は日本の立場を明確にし、日本が存続するためにはこの世界の住人の協力が不可欠だからだ。
最悪、王国を併合しアルトリア領域の安全を確保し、アルトリア領域を開発、発展させることも視野に入っている。
その際には封建制度は撤廃し、王族は君臨すれども統治せず、と言う形でホードラー王国を民主化させる必要がある。
だが、ここに来て想定外の事態に巻き込まれていた。
なんと民衆を保護し守るべき立場にあるはずの諸侯がこぞって逃げ出したのだ。
しかも、自衛隊が小さな村や町に立ち入ると人々は困窮していた。
話によると王族が国を捨て逃げ出し、それに従って諸侯も逃げ出し、最悪な事に諸侯は根こそぎ物資を略奪していたのだ。
これには自衛隊も困り果て、日本に当座の食料を含む民生品を要請せねばならなかった。
だが、日本にも余裕はない。
その為に自衛隊は自分たちの食いぶちを削って人々に食料などを渡すはめになった。
まるで焦土戦術だ。
しかも極めて効果的な焦土戦術と言える。
だが、だからと言って立ち止まれない日本はホードラー王国の首都を目指して進んでいく。
「そこまでだ!武器を捨てて投降しろ!」
ホードラー王国領内に入って3日、もう何度目の降伏勧告だろうか?
いい加減代わり映えしない貴族のやり口に高橋も苛立ってきた。
「ひぃ!や、やめろ!」
立派な身なりの貴族が慌てて地面に平伏す。
「い、命だけはお助けを・・・」
頭を擦り付ける様に懇願する様には何とも言えない苛立ちだけがある。
「よし、コイツらを拘束しろ」
井上も嫌悪感を示しながら武器を一ヶ所に集め、地面に座らせていく。
たまに抵抗する者もいたが、大抵はろくな抵抗もしない内に実力で制圧、もしくは射殺されて終わる。
中には懐柔しようとする者もいたが、これもあっさり制圧してしまう。
貴族連中は何も理解していない。
そう言った行為は野心溢れる侵略者になら効果的だったろう。
しかし、高橋たちは侵略者は侵略者かも知れないが、それでも日本人としての誇りは持っていた。
その誇りが彼等の様な卑屈に媚びるのを許さなかったのだ。
「貴君らは民間人への暴行、略奪の容疑で拘束される。だが、我々も貴君らに構ってられるほど暇ではない」
高橋は貴族を解放すると伝えた。
「あ、ありがとうございます!」
大袈裟に喜ぶ貴族だが、次に高橋が口にした言葉を聞いて凍りついた。
「ただし、これら武装の所持は認めない」
高橋たちは乗ってきたトラックに剣や槍や鎧を次々に放り込んでいく。
その様子に貴族が慌てて懇願を始めた。
「せ、せめて身を守る手段を!」
だが高橋たちはそんな貴族を冷たくあしらった。
「貴殿方は身を守る必要があるのか?その必要があるとは我々には思えんが?」
自衛隊は武装解除はしても保護するのは捕虜や民間人で、解放した者に対する責任はない。としていた。
「この辺りには非武装の民間人しかいない。安心して帰りなさい」
そう言って高橋たちがトラックに乗り込むと略奪の対象となっていた民間人が彼等を取り囲んだ。
その目は怒りと憎しみに満ちており、いままでの統治がどれだけ酷かったかを物語っていた。
だが、高橋たちは敢えてそれを放置した。
その結果を知っていたが、高橋たちは統治の為に来たわけではない。
それは後続の役目だ。
だからそのまま次の目的地を目指し移動を開始した。
そしてその背後で後に残された貴族たちに民衆が殺到していった。
貴族たちが悲鳴をあげたが、高橋たちの耳には届かなかった。
第12話はここまでです。
正直、読み返すと「説明とか薀蓄長すぎじゃないか?」と思ってしまいました。
正直どうですかね?
他の人の作品を読んで勉強してみましょうかね。
と、言う訳で今回はココまでです。
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