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王国領へ2

「宰相閣下、王家の存続に異存はありませんが、問題はどうやって存続させるかです」

子爵位にある一人がそう発言すると周りも同調しだす。

「他国に避難しては国内に対する影響力を失います」

諸侯の誰もが王家の影響力が失われた場合、自分たちの権益の保証も失われる事を危惧していた。

他国に亡命し捲土重来けんどちょうらいを図るのも手だが、日本の力を見る限りそれとて困難だ。

だが、カルタスの目には諸侯が別の思惑を持っている様に思えた。

ここに至っては王家を生け贄に自分たち諸侯の持つ権益を維持しようと言うやり方だ。

おそらく、日本が国内に来た場合、抵抗などしないで降伏し、日本に積極的に協力して己の保身を図るのが見え見えだ。

「いや、王家の存続を考えれば他国に亡命するしか手はない。それにファマティー教さえ認めなかった彼等が我々の存在をそのままにすると思うかね?」

カルタスは諸侯の逃げ道を塞ぐつもりで言ったのだが、日本がホードラー王国を支配下に置いた場合、それは正しいと言えた。

日本がホードラー王国を領土にした場合、日本の法を王国内に適用することになる。

その場合、諸侯の領土の存在を私有財産と認めても徴税権は認めない。

そうなると領民は土地を借りている存在となる上に、土地を借りている借用料に制限が課せられる。

その結果、諸侯は今まで好き勝手に設定し徴税し、王家に支払う一定額との差額で豪華な生活を送っていたのが難しくなる。

更には私有戦力、つまり私兵の所持の禁止、並びに武装の完全な解除を行うだろう。

諸侯は収入を大きく削られ影響力も力も失い、ただの土地を持つ地主になってしまう。

こうなれば諸侯は自分たちの権益の大半をただ削られて利益がなくなってしまうのだ。

「王家さえ存在していればいずれは取り戻せもしよう。だが、王家が失われればその機会は永久になくなる」

カルタスの脅しとも取れる発言に王家を生け贄に、と考えていた諸侯が慌てだした。

自分たちの目論見など日本には通じない。

そう言われたからだ。

はっきり言えば甘い認識と言わざるを得ない。

「では、王家をファマティー領域の教皇領にお逃がしするしかないと?」

諸侯の問いかけにカルタスは頷く。

「貴公らも王と共に行かれる準備をした方が良いのではないか?」

その言葉を合図に急に場が騒がしくなる。

一刻も早く逃げ出そうと言うのだろう。

「ですが、宰相閣下は?」

慌てず騒がずに落ち着いた様子の男爵がカルタスの言葉にカルタスは逃げないと言う意志が見えたため、気になり尋ねた。

「私は残るよ。言うほどの財産もないし、せめて私が残って責任を取らねば日本も剣を納めまい」

愉快そうに笑うカルタスに男爵は自身も責任を取るべく残る意志を固めた。

場は、既に逃げ出す準備の為に自身の領に向かう諸侯で騒がしい様相を醸し出していた。


ホードラー王国は上へ下への大騒ぎだった。

王家が国外に逃げ出し、諸侯もそれに続くと言う噂が流れたからだ。

その噂はカルタスにより意図的に流された事実だったが、民衆は自分たちも逃げねばと混乱していたのだ。

王は既に国外へと向かっていたが、一部諸侯や民衆が混乱していればその分遠くへ逃げれると考えたのだ。

日本がそこに来ても混乱を納めねばならない上、まだ残っているであろう諸侯を征伐し国内を平定する時間が必要になるからだ。

ただし、カルタスにも誤算があった。

王や王妃は逃げ出せたが、一部王族が混乱の中に捕らわれ、身動きが取れなくなっていたのだ。

しかし、カルタスがその事実を知るのはずっと後になってからだった。


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