勝者と敗者2
「今の音は・・・?」
自衛隊と戦っていた時の爆発音に似た音が前方から聞こえてきた事により不安が広がる。
それはヴァスターも同じだった。
不安な心中を表さないだけまだマシかも知れない。
「公爵!奴等が回り込んだのでは!?」
配下が公爵の身を心配し迂回した方が良いと進言する。
その進言を受け入れたヴァスターは迂回しようと兵を森に進めた。
だが、既にそこは罠が待ち受けていた。
(やれ)
佐竹が部下に目で合図する。
それを見た部下が手にした起爆装置のレバーを回す。
直後、一部の木々が爆発し森に入ってきた兵士たちがその破片を浴びて地面を転がる。
死にはしなかった兵士も少なくなかったが、木片が体に食い込み地獄の様な激痛を味わうよりは素直に死んだ方が良かっただろう。
更に爆発により幹を削られた木が彼等目掛けて倒れていく。
逃げ切れなかった何人かが木に押し潰されたり地面との間に挟まった。
「おお!?これは!?」
ヴァスターが恐れのあまり取り乱す。
流石に夜に森の中で奇襲されるとは思わずにいたのだ。
「まさか、我々の動きが見抜かれているのか!?」
底知れぬ日本に恐怖を感じずにはいられない。
だが、だからと言ってこのまま引き下がれない。
「突破するんだ!突破しなければ生き残れん!」
ヴァスターは必死になって兵士たちに声をかけた。
兵士たちも生き残るために森を突破しようと闇雲に前進を始めた。
それは統率なき生存への行動であるが、烏合の衆と化した状態で何処にいるか分からない敵を相手にするのは得策ではない。
案の定、森の各地で悲鳴や断末魔の叫びが巻き起こる。
クレイモアや爆薬の起爆、そして銃撃と迫撃砲が彼等を森の中で追い詰めていく。
最早、軍として機能していない。
ヴァスターは必死に逃げ回るがついに捕捉され、単騎で森をさ迷う内にレンジャー隊員に捕縛される事になった。
一方、ラークは自衛隊の追撃を振り切れずに降伏していた。
アトレー将軍も先の戦いの混乱の中、あえない最後を迎えておりラーク以外の将もその多くが命を落としていた。
ラークは最初は味方の後退を助ける為に果敢な攻撃を行ったが、接近も出来ずに一方的に攻撃されては堪らない。
その為、味方の背後を守るように戦場を後にしたのだが、金属で出来た怪鳥(多目的ヘリコプター)を前に逃げ切れず、また手勢を僅か100名まで討ち減らされやむ無く投降した。
(せめて、接触の機会を得られたと思うしかあるまい)
ラークはそう思いながら部下の安全も忘れずにいた。
このラークの行動が逆に自衛隊の足を止める事になったのだが、高橋たちの活躍もありホードラー王国軍は3万の精鋭を一度の戦いで喪い、今や国の戦力は極めて少数になっていた。