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圧倒2

その光景にどんな魔法を使っているのか、と思ったラークは後退の合図を出させた。

「どうも、相手の動きが分からない。今のは何だ?」

ラークは腹心の魔術師に尋ねたが、肝心の魔術師にもあんな魔法は知らないと言われ頭を悩ませた。

「一発の魔法で2、30人は吹き飛んだぞ」

ラークの言葉に魔術師が唸る。

日本の魔術師の姿が見えない事から立て籠る陣地からだと思うが、何分距離がありすぎる。

「射程の長い魔法でも25ファナ(1ファナは約2m)程度です。それ以上となりますと儀式魔法クラスでないと・・・それでもあの威力は・・・」

魔術師が自らの知識では正体不明と伝えた。

その答えにラークが唸った。

「どうやらあの国は我々の想像力を越えた何かがある様だな」

冷静に場を分析したラークは、本体到着まで動くのは危険と判断し、全軍に防御体勢を取らせた。


ホードラー王国軍の慎重な動きに陸上自衛隊のホードラー方面派遣隊指揮官、森光輝もりこうき大佐は舌打ちした。

「もうちょっと踏み込んで来ると思ったが・・・中々に慎重だな」

後方の指揮所に届いた報告から、どうも先の戦闘から多少なりとも学んだのではないか?

と危惧せざる得ない。

「相手が慎重だと此方から踏み込むのは危険かな?」

先任の指揮官だった伊藤に尋ねた。

しかし、伊藤は積極的な攻勢もありだと思っていた。

「一応、相手から踏み込んできた以上は先制攻撃を受けたと解釈されます。なのでここは先に仕掛けては如何でしょうか?」

ホードラー王国の出方を見定める事にも繋がる、と伊藤は主張した。

「つまりは威力偵察か・・・ふむ」

森は腕を組みながら唸る。

如何に有能な人物でも初めての実戦なのだ。

どうしても消極的になってしまう。

「やるにしても規模は?一応、数だけなら向こうの方が上だぞ?」

森は犠牲を並べく出したく無かったのもある。

勿論、誰でも犠牲は無い方がいいのだが、あまりにも初戦から圧倒的にやりすぎると後々国内がうるさいのでは?

森の危惧はそこにあった。

「まあ、取り敢えず相手も初戦なので様子見でしょう。なら、下手に手の内を晒す必要もありますまい」

柿野久司かきのひさし中佐が助言した。

柿野としては戦術の基本である各個撃破をすべきだとは思ったが、今回に限りは集結した王国軍を正面から撃破し、王国軍の戦意を砕く事を考えていた。

ホードラー王国が頼みとする軍事力が日本に通じず、一方的に壊滅させれれば今度がやり易くなる。

柿野の考えた対王国戦術はそれだった。

「うん、取り敢えずはその線でいこう」

相手の出方を見る意味でも森は柿野の意見を取り入れた。

森は正直怖かったのだ。

この世界の軍が中世レベルなのは分かっていたが、それは自分たちがいた元の世界での話だ。

もしかしたら想像も付かない戦力があるかも知れないからだ。

だから森は積極的になる気は無かった。


その頃、前線では互いににらみ合いを続けていた。

はっきり言って、自衛隊側はこの距離(約300m)でも普通に交戦出来たが、ここで目に見える敵性戦力を叩いてもあまり意味がない。

下手に森に逃げ込まれるよりは、狭い平地に誘い出したいのだ。

「暇だな」

井上がぼそりと呟く。

隣では狙撃手となった井上の専属観測員が缶飯を開けていた。

「井上さん、暇な方が良くないですか?」

観測員は缶飯に食い付きながら井上の普段の行動からそう言った。

「バッカ、俺は暇だと死んじゃうんだ」

笑いながら井上は観測員が広げていたレーションをつまむ。

「ま、しばらくはにらみ合いだ。楽させて貰おうや」

ホードラー王国軍側からも炊事の為の煙が出始めたのが見えた。

どうやら今日は何もない。

やるとしたら夜だろうと井上は思った。


さて、夜間戦闘は此方の得意分野になるぞ?

相手に見える訳ではないが、井上は挑発な眼差しをホードラー王国軍に向けていた。


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