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開戦へ

ホードラー王国より来た特使が日本に戦雲を巻き起こす。

その要求に日本は太刀がる決断をする。


第7話「開戦へ」

お楽しみください。

―――5月29日、調査派遣隊本部


北野は会議室にてホードラー王国より派遣されてきた外交使節を名乗る一団と接触していた。

どんな話になるかは予想は着くが、予断は許されない。

ここで日本の立場を明確に示さねば、今後この世界における日本の立ち位置が大きく揺らぐ事になるのだ。

「ホードラー王国、国王陛下より貴公等日本に告げる」

外交使節代表バルト・カストィーア伯爵が高圧的態度で文書を読み上げる。

その様子は日本を格下と見下した意図が見えるが、北野はそんな事はどうだって良かった。

そして、彼等ホードラー王国からの要求はこうだった。


一、アルトリア領域(日本が確保した辺りはアルトリア領域と呼ばれていた)における貴国の領有を認めない。


二、貴国に逃げ込んだ異教徒の身柄を即刻引き渡す事。


三、貴国が行った王国将兵に対する殺害行為における実行犯、並びに責任者を引き渡す事


四、前述の王国将兵殺害に対し賠償金500万マティール金貨を支払う事。


五、日本は直ちに我がホードラー王国の支配を受け入れる事。


六、それに伴い、ホードラー王国より派遣される総督に従う事。


七、総督は貴国の最高責任者となり、内政、外交の決定権の保持を認める事。


八、日本はその軍事力を解体し、ホードラー王国に編入させる事。


九、日本は毎月一定額の税収をホードラー王国に納める事。


十、以上これらの要求すべてを受け入れ無ければファマティー神とホードラー王の名の下にその命を持って償わせる。



要求と言うより脅迫の類いだな。

北野はたちの悪いチンピラを見るかの様な目をしていた。

「以上の要求はファマティー教大司教たるハーマン卿承認の下にある。よって貴国は速やかにこの要求に従う義務がある」

はっきりとした口調で堂々と述べた。

対する日本の回答を今か今かと待つカストィーアは北野の返答に言葉を失う事になった。

「日本政府からの回答を行います。・・・どの要求ねごとはねてからいえる」

まさか拒否されると思っていなかったカストィーアは顔を赤くして憤怒した。

「き、貴様等はファマティー神の意を拒絶すると言う気か!」

絶叫に近い怒鳴り声に北野は耳が痛かった。

しかし、海千山千な北野も負けじと反撃に移る。

「我が日本には信仰の自由が政府により保証されており、そちらの信仰する神様の命令を聞き入れない自由もあるんだ」

北野の衝撃的な発言にカストィーアは不信心者め!と怒鳴り付けた。

「ましてや、日本の象徴たる天皇陛下は神道の権威でもあらせられる。そちら風に言えば教皇なんだよ。神道は八百万神やおろずのかみが居てね、君らのファマティー神とやらもその内の一人に過ぎんのだ。よって君らの神様に従わねばならない義務はない」

カストィーアは理解し難い北野の話を聞き、自分たちが信仰するファマティー神と蛮族の神を同列に扱われ憤った。

「貴様らの蛮族の神とファマティー神を同列に扱うなど不敬の極み!即刻取り消せ!」

最早交渉でもなんでもない。

北野はチンピラ以下の知能しかないカストィーアに引く気は更々なかった。

「断る。言ったはずだ。我が日本は信仰の自由を保証している。如何に神道でも特別扱いはせん」

極めて冷たくいい放つ。

宗教が絡めば冷静さを失う事があるのは元の世界の歴史を見れば良くわかる。

だが、カストィーアは自らが冷静さを失ったとは思っていない。

何故、ファマティー神の教えに歯向かうのかが理解出来ていないのだ。

「先の要求は我が日本に属国になれと言うことの様だが、我が国は主権ある独立国家である。何処の国にも従わねばならぬ義務はない」

北野ははっきりと拒絶の意を示すと更に、逆に日本からの要求を突き付けた。

「日本は貴国、ホードラー王国に以下の要求を通告する」


一、異教徒として民間人に対する迫害、虐殺を即刻止める。


二、先の難民発生の責任を認め、難民に対する保障を行う。


三、日本との対等な国交を結ぶ準備会の設立と、それに伴い法整備を行う。


たったこれだけだった。

ホードラー王国の十ヶ条の要求に比べたらささやかな物だろう。

だが、北野は確信していた。

これらたった3つの要求のどれも認められまい、と・・・。

彼等は日本と言う国を知らずに要求を突きつけてきた。

だが、日本は事前に集められる情報はつぶさに集めてこの場に望んでいる。

その差がここにあるのだ。

ホードラーは比較的歴史の浅い中程度の国で、異教徒討伐で成り上がった国だ。

故に経済、文化など国力は思ったほどではない。

たがらこそこうやって高圧的に相手を従わせて来たのだ。

だが、軍事力を盾にしただけの外交など、北野の前では児戯にも等しかった。


軍事力を振りかざす、もしくはちらつかせるのは外交においたて最後の手段なんだよ土素人め。


北野の辛辣な思いとは裏腹に、カストィーアは侮辱と受け取り、怒り心頭のあまり手にしていた杖を北野に投げつけた。

外交官として最悪の行動だ。

投げ付けられた杖は北野に直撃する事なく、となりに座る伊藤が受け止めた。

「特使殿、冷静になられては如何ですかな?」

伊藤は手にした杖をカストィーアに渡す。

カストィーアはカストィーアで怒りを圧し殺し、目だけで圧倒的な迫力を見せる伊藤に何も言えなかった。


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