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共存への出発地点3

彼等の認識からすれば普通、税は6公4民、酷いところだと7公3民以上と言う物だ。

噂では5公5民、4公6民の所もあるらしいが、極めて稀と言える。

しかし高橋は税収について分かっていない。

正確には日本の様に税金(金銭的)ではなく税(作物など物質的)なのだ。

これでは税収がどうなるかはわからない。

「そうですね・・・本国でも考えられてはいますが・・・」

言葉を濁す高橋に不安がどんどんと広がり始めた。

このままでは亀裂を生むかも知れない。

それでも高橋は慌てなかった。

これも既に決まっていた事案だからだ。

「少なくともここ三年間は支払う必要がありませんね。また、比率も本国と税収形式が統一されてませんのではっきりとは言えませんが、3公7民かもう少し下ですね」

高橋は日本の税金制度との違いから断言を避け、やや割高の税を挙げた。

万が一、予想より高い税収なら騙されたと感じるだろう。

だからこそ実際にはそこまで行かないと分かっていながら高い税を提示したのだ。

ただし、高橋に取っての誤算は村人たちにとって3公7民は格安過ぎた事だった。

「そ、それが正しいとして・・・国は大丈夫なのですか?」

「援助に対して安すぎませんか?」

「後から根こそぎなんて無いですよね?」

余りにも自分たちの常識を超えた高橋の話に、逆に不安感を与えてしまったのだ。

「大丈夫です。そんな事態にはなりませんよ」

なったとしたら大問題で政権が吹っ飛びかねない。

村人たちの不安を日本が実践できないのを高橋は知っていた。

だから落ち着いて対処できたのだ。


「税が安くても払う人が多かったら?」

「援助は貸付ではありませんから税として回収はありません」

「根こそぎなんてやったら次から税が入りませんよ」

どの不安にも投げやりにならずに一つづつ解消していく。

そうする事で場は段々と落ち着きを取り戻して言った。

「我々が皆さんに望む事は特別な事ではありません」

高橋一人に視線が集中するのを感じながら、演説するかの様に理解を求めた。

「我々が貴殿方に求めて居ることは、一つ、一生懸命働くか?二つ、援助や支援無しでの自力生活をやれるか?三つ目、幸せに生きていけるか?以上ですよ」

部屋の中は静まりかえっている。

高橋の話に半信半疑なのもあるが、日本と言う国がそこまで厚い情を持っている事に感動していたのだ。

もっとも、日本としても感謝して欲しい訳ではない。

何だかんだ言って打算と計算があっての事だ。

全てが善意や厚意な訳ではない。

彼等を利用していると言われればその通りだろう。

それでも村人たちは日本に大きな感謝をせずには居られなかった。

頭を下げて礼を言われた高橋はむず痒い思いをしていたが、彼等の明るい表情を見て自分がやるべき物をはっきりと認識できた。


「作業開始!」

施設科の号令の下、施設科の人員が一斉に作業に入っていく。

その中には普通科の連中や、村人たちの姿もある。

調査派遣隊の誰もが彼等との共存を願い、村人たちも調査派遣隊に全てを任せず、自分たちにも出来る事があると言う思いからだ。

そこに世界や人種、思想の違いはない。

ただ共に働き、共に汗を流し、共に生きるためにやっているのだ。


本来在るべき支援とはこう言う物だ。


北野は遠くからその様子を眺めながら思った。

物や資金だけを渡して支援とは片腹痛い。

支援とは物や資金だけでなく、こうやって一緒に働き、技術を伝え、そして彼等自身の足で立ってもらう手伝いをすることなのだ。

「・・・総理はやはりただ者ではないですね」

北野は日本がある東に向いた。

今も鈴木は総理として困難な茨の道を歩んでいるだろう。

だからこそ北野はここに来たと言えた。

しかし、その北野に報告に来た部下が告げた一言は北野を苛立たせた。

だが、来るべき物が来ただけだと自身に言い聞かせると調査派遣隊本部へと足を向けた。

「奴等が障害となるつもりなら、容赦なく更地になってもらう・・・」

断固たる思いを胸に北野は北野の戦場へと歩んで行った。


この日、日本国調査派遣隊にホードラー王国からの外交使節が来た。

それは日本とホードラー王国の間における新たな戦いの予兆を孕んでいた。


さて、漸くココまで着ました。

ここから物語りは大きく動いていきます。


ホードラー王国の思惑は?

それに対する日本の対応は?


そして、遂に日本は抜かずの刃を・・・。


次回をお楽しみに!

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