選択と行動4
「いえ、先程北野さんが仰いましたよね?お互いの常識がかけ離れていると・・・」
高橋の言葉に北野が沈黙した。
その表情は先程と打って代わり真剣なものだ。
「彼等難民と常識がかけ離れていても理解はし得ます。しかし、これが国家と言う組織同士なら?無理ですね。利益や主義、また難民の話から宗教的な問題からも理解し合えません」
北野は目を閉じ、ただ静かに高橋の話を聞いていた。
その静かすぎる様子が不気味に感じたが今更だろう。
「ですが難民を市民とすればそこから市民同士で交流を行えます。つまり経済の繋がりです。そうなれば如何に主義が合わずとも利益の点では国同士で交流も可能になります。宗教に関しては・・・すみません。どうして良いかまだ解りません」
自分の学の無さが恨めしく思えた。
こんな事なら大学へ行っておけば良かったと真剣に悩んだ。
だが、北野はニヤリと笑みを浮かべた。
「・・・なるほど、頭でっかちの無能なんぞと比べるまでもありませんでしたね」
北野の真意が分からず高橋は動揺する。
「貴方ほどしっかりと考えられる物は政治家や官僚にもそうは居ませんよ。合格ですね?」
北野が伊藤に向かって言う。
伊藤は腕を組ながら頷いた。
二人の様子から高橋は自分が試された事と嵌められた事だけは理解出来た。
「我々も概ね貴方と同意見です。細かいところは違いますが許容範囲内です」
いたずらっ子の様な北野の態度に内心、頭を抱えてしまう。
「私の部下として外務省に来ませんか?貴方ならかなりやれると思いますよ?」
唐突な北野のスカウトに伊藤が異議を唱えた。
「私の部下を引き抜かないでください。将来有望なんですから」
笑顔で言ってのける伊藤に北野は、残念、と言って笑いだした。
その二人を前に高橋はかなり厄介な事をさせられる予感に捕らわれた。
むしろ予言でも決定事項でも良いぐらいだ。
「さて、良い人材を得ましたし、早速仕事の話をしましょう」
机の上に資料を載せながら北野がうきうきとした表情になる。
「高橋軍曹、たった今より曹長に任官する」
伊藤はそう言って敬礼する。
思わず条件反射で高橋は敬礼し、拝命してしまった。
「それに伴い、貴官を特別任務部隊の指揮を任せる。詳しい任務は後日になるが、取り敢えずしばらくは人員の選定及び通常訓練に重ねて指揮官らしくなって貰う為に色々学んでもらうぞ。まあ、明日は休めるがな」
敬礼したまま高橋はとんでもない事になった自身の不幸を呪った。
こんな事なら査問の方がまだ良かったとも・・・。
その日から高橋は気苦労の絶えない日々を送ることになった。
はい、第5話終了です。
私自身、政治とか経済に疎い上に国同士の付き合いなんか全くわかっていないのですが如何だったでしょうか?
ハッキリ言って良いのかこれ?
とか思いましたが、まあ、私もお花畑な人間と言う事にしてくださいw
ご意見ご感想がありましたらどんどん書いてくださいね?
批判でも要望でも構いません。
ご期待に沿えるかはわかりませんけどねw
では、第6話で会いましょう。