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撃退3

アイン、シャイン、ミューリの三人は目の前に繰り広げられる光景に唖然としていた。

高橋たちが剣でも槍でも、ましてや弓でもない武器を使い騎兵を離れた位置から攻撃したのにも驚いたが、見計らった様に背後から現れた箱の様な空飛ぶ存在が騎兵を肉片へと変えていたからだ。

まるでドラゴンが人間を蹴散らすように見える。

その空飛ぶ存在、多用途ヘリコプター、イロコイはホバリングしながらミニガンを騎兵集団に打ち続けている。

「・・・なんて、力だ・・・」

300もの騎兵が為す術なくただ一方的に殺されるなど、あり得る事ではない。

アインは呆然としながら、それが当たり前の様に見ている高橋たちに恐怖心を抱いた。


それはシャインもミューリも同じだ。

シャインは魔力を感じない事から魔法ではないと気付いたが、魔法でなければなんなのか?

と思っていた。

魔法を使う訳でもなく、この様な真似が出来るなど聞いた事がない。

まるで悪魔の所業と言えるではないか。

気づけば体が小刻みに震えていた。

もしかしたら、自分たちはとんでもない存在と関わってしまったのではないか?

そんな思いがしていた。


また、ミューリも怖れていた。

シャインと違い震えは無かったが、目の前で人を肉片に変える力を持った人たちに助けを求めたのは早急だったのではないか?

もし、彼等が自分たちの生存を認めなければ・・・。

と考えてしまう。

だが、その反面、自分たちを常に迫害してきた王国の兵と言えど、ああも無惨な最後を迎えている様には哀れみがあった。


三人は複雑な心境にあったが、高橋たちからすれば危ないところだった。

もし、騎兵集団が最初から横陣を取っていたら?

もし、援軍が来る前に弾が切れていたら?

どれも「if」でしかない。

だが、高橋たちが無事なのは運が良かった。

ただそれだけだ。

高橋が取った1人だけ姿を見せ、相手に油断してもらう策も、相手が慎重であったなら意味は無かっただろう。

知るよしは無かったが、アンストンが部下の報告を無視したことも幸運だった。

それらを考えると高橋はギリギリだったと思う。

もっと違ったやり方があったのでは?

とさえ思える。

しかし、今生きている事が重要であるなら、結果が全てであろう。

どう言う形であれ高橋たちは1人の犠牲も出ていないのだから。


ふいにミニガンの射撃が止まった。

弾が切れかけたのだ。

イロコイには固定武装が無いので、後は持ってきた89式小銃だけだ。

しかし、もう必要は無くなっていた。

何故ならば騎兵はすでに兵力の多くを失い、戦意も砕け逃げ出していたからだ。

指揮官らしき立派な鎧に身を包む男が何やらその場に止まりどなり散らしていたが、誰も見向きもしない。


アンストンは部下の逃走を押し止めようと怒鳴り、剣をふり、信仰心を求めたが、最早叶わぬことだった。

恐慌を来たし、戦意が挫けた今となっては如何なる名将であっても崩壊を止める術はない。

ましてや、勇猛さしか持ち得ないアンストンの力では尚更不可能だ。

結果、気付けば戦場にただ1人残されていた。

頭上にはこの惨劇を生み出した悪魔が未だに浮かび、前には得体の知れない異教徒。


こうなっては撤退もやむ無しなはずだが、アンストンは討つべき異教徒に背を向けて撤退を選ばなかった。

いや、選べなかった。

それを選ぶにはアンストンは狂信と言える程の信仰心と騎士たる自尊心が強すぎたのだ。

「く、くくく・・・こうなったからには・・・1人でも多く道連れにしてやる!」

何故、己が破れたのかと言う理由を無視し、道連れを作れると思えた思考を誰も知りたいとは思えない。

しかし、アンストンは出来ると思い込んでいた。

いや、ただ単に目の前で行われた事を認めたく無かったのかも知れない。

「私を!ファマティー神の忠実なるしもべを討てるならば討ってみよ!」

そう大声を張り上げるとアンストンは1人丘の上に駆け出した。

だが、やはりそこにたどり着く事は出来なかった。

高橋たちは最後まで残った指揮官を生け捕りにしようとは思ったが、その為に仲間を危険に晒すのは苦しい。

だから、高橋は自分の手でアンストンを撃った。


銃弾は剣を振り上げて馬の陰からでていた胸を、心臓を鎧ごと容易く貫いて行った。

(わ、私は・・・神の下へ・・・)

それがアンストンの最後の思考だった。


地面に倒れている最後の騎兵に高橋たちは囲むように、慎重に近付く。

そして井上がその体を足で突っついた。

「・・・もう、大丈夫だ」

その一言に緊張の糸が切れた一同は安堵の溜め息と共に座り込んでいく。

如何に実戦を経験し、心が強くなってもそれは戦っている間だけだ。

戦いが終われば1人の人間に戻ってしまう。

「俺ら・・・人を殺したんですね・・・」

佐藤の力ない呟きは、誰しもが同感だった。


人を殺す。


必要であれば躊躇わないでやれるだろう。

だが、覚悟はあっても実際にやる時が来るとは思っていなかった。

そして来ても欲しくなかった。

「まだ全部が終わった訳じゃない。呆けるのは後にしろ」

気丈に振る舞う井上であったが、やはり顔色は良くない。

それでも残っていた義務感が彼等に再び立ち上がる力を与えた。


そう、難民達を設営途中とはいえ基地まで誘導するために・・・。

これが後の日本にどのような影響を与えるかは誰にも分からない。

第4話しゅうりょうです。

ちょっと駆け足過ぎたのを反省中。


と言う訳で今回はココまでです。

次回はもう半分以上出来てますので直ぐに書き込めると思います。


ではでは、またお会いしましょう。

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