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撃退

何とか無事、騎兵を追い払った高橋たち。

しかしそこに騎兵部隊の本隊が来る。

圧倒的な数の差でせまる騎兵に立ち向かう高橋たち・・・。

だが、高橋たちに絶望感はない。

なぜならばそこに・・・。


第4話「撃退」お楽しみください。

高橋達がホッとしたのも束の間、新たな一団が高橋たちの下に向かっていた。

アンストン率いる異教徒討伐部隊だ。

アンストンは生き残ったクルシアの部下から報告に怒り心頭だった。

異教徒なぞに自分の部下を討たれたのだ。

アンストンの性格上許せるものではない。

「おのれ異教徒の不信心者どもめ!神の信徒を手にかけるとは!」

激しい怒りにアンストンは逃げ帰った騎兵を斬り殺す程だ。

周りの部下は恐怖に縛られ何も言えなくなっていた。

「栄光ある王国の兵よ!神の忠実なる僕よ!異教徒どもに神の裁きを!」

アンストンが血に濡れた剣を高々と掲げる。

部下たちもそれに倣い剣を掲げた。

「異教徒に裁きを!」

「異教徒に断罪を!」

「異教徒に死を!」

口々に吼える部下を満足そうに見たアンストンは全軍に前進を命じた。

それはクルシアが引き連れた50騎などものの数ではない。

総勢300を数える立派な騎兵団だった。


難民を丘向こうに送った高橋たちは、更なる追撃を警戒しつつ丘まで下がった。

そこにはアインたちが待っていた。

「あんた・・・一人じゃなかったんだな」

アインがようやく気付いた様に言った。

「あのなぁ、ちょっと考えりゃ分かるだろ?」

アインの言葉に井上が答えた。

「俺たちは自衛隊、つまり君らに分かりやすく言えば私兵ではない国の軍隊だぞ」

そう言われて三人は初めて高橋たちが軍人であることを知った。

「じゃ、じゃあタカハシさんは国に仕えているの?」

シャインの驚きの声を挙げた。


ここで彼等の驚きの理由は階級制度にある。


王がいて、その下に諸侯という貴族がいて、諸侯の下に騎士(家によっては貴族と同列にもなる)がいて騎士の下に国民や領民がいる、と言う階級制度なのだ。

つまり、国(王)に仕える軍人とは貴族や騎士の事なのだ。

これが普通の庶民なら軍人にはなれない。

扱いは民兵や傭兵、諸侯からすれば市民兵と言う数合わせに過ぎない。

だからこそ高橋たちが国の軍隊、即ち国軍《自衛隊》と名乗った事で騎士貴族階級だと勘違いしたのだ。


「まあ、下っぱだけどな」

笑いながら井上は答えたが、お互いの認識にズレがあることに気付いていない。

しかし、佐藤はそれに即座に気付いた。

元々歴史好きな知り合いがいたおかげでそれなりの知識ぐらいはあったからだ。

そのため間違いを正そうと発言した。

「ただし、日本には身分制度が無いので貴殿方の考えるような軍人ではありません」

井上は佐藤が何故そう言ったのか分からなかった。

高橋はそんな二人を見て、お互いが生きてきた世界の違いを感じ取っていた。

「身分制度が無い?どうやって国として存在しているの?」

知識欲が比較的強いシャインは食い入る様に聞いてくる。

しかし、高橋たちに説明する余裕は無くなっていた。


麓に新たな一団が姿を現したのだ。

「どうやら、本体らしいな」

井上が陽気な顔から急に険しい表情になる。

たった一回、しかもある意味一方的とも言える戦いではあったが、その一回がその場の自衛官に自信を与えていた。

勿論、彼等が特別だからではない。

ただ自衛官として永久に無いことを祈りつつも常に国民の盾になる事を使命として生きてきたからだ。

ちょっとしたきっかけが彼等を訓練を受けてきただけの素人から一人前の兵士へと大きく変えていた。

そんな彼等の変貌に驚きを隠せないアインたちだったが、アインにも分かる気がした。

アインもまた剣士として幼なじみを守ってきたのだから。

もっとも、シャインからすれば肩を並べてきた。だが・・・。

「数が多いな・・・どうする?」

何度も死線を越えてきたアインが落ち着き払って高橋に聞く。

そんな年不相応なアインを見た後、高橋は89式を持ち直し周囲を見る。

「総員装備の確認、それから先程の配置に着け」

高橋の指示に全員が敬礼で答えたが、井上はついでに一言進言した。

「奴等は騎馬だ。横一列で来られたら十字砲火は難しいと思うが?」

井上の言葉に少しだけ考えこむ。

そして・・・。

「俺らだけなら厳しいさ。だが・・・」

高橋が無線を取り出した。

それを見て井上はニヤリと笑みを浮かべた。

そのやりとりを見ていたアインたちは、彼等が何かとんでもない事をするのではないか?

と思いだしていた。


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