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交戦2

アンストン率いる騎兵部隊は歩兵を置いて異教徒を追撃していた。

それは異教徒たちに騎兵に対する反撃能力が無いとの判断だった。

「クルシア!お前は50騎ほど連れて更に先行しろ!」

アンストンの号令にクルシアは速度を上げて本隊の先へと向かった。

「私が着く前に片付くだろう」

ほくそ笑みながらアンストンは異教徒の末路を想像する。

だが、先行したクルシアたちはそこで恐るべき存在と出会う事になる。


クルシアは部下を引き連れひたすらに粗末で細い道を駆け抜ける。

あまりにも粗末故に2騎並ぶのでやっとだ。

それでも道は蛇行しておらず、ほぼ真っ直ぐなのが幸いし速度を出せた。

「クルシア様、そろそろ追い付きますな」

横にいた部下が声をかけてきた。

まだ若い部下はこれが初めての実戦なのだ。

戦功を早く挙げたくてウズウズしているのが分かる。

「まあそう焦るな。異教徒共はどのみち逃げられはしない」

騎兵の機動力を前にすれば徒歩で逃げる事など不可能だ。

そう思うと楽な仕事だとさえ思う。

「クルシア様!森を抜けます!それと声が聞こえます!」

先頭を走る部下が大声でクルシアに報告する。

「よし、追い付いたぞ!1人も生かすな!情けは要らぬ殺せ!みなごろしにしろ!」

騎兵部隊の先頭が遂に森を抜けた。


「止まれ!」

森を抜けたと思いきや、突然先頭から制止の叫びが聞こえた。

異教徒を目前にどうしたと言うのか?

クルシアは疑念もそこそこに前に出てきた。

「いったいどうしたと言うのだ」

怒りを押し隠しながらクルシアは制止をかけた部下に問う。

「それが・・・」

言葉を濁す部下の視線の先には見慣れない奇妙な服装の男が立っていた。

その男は何かをこちらに向けており、立ち塞がるつもりらしい。


「貴様何者か?」

高圧的なクルシアの呼び掛けに高橋は負けじと声をあげた。

「日本国陸上自衛隊だ!これより先は日本国の領域である!直ちに引き返せ!」

高橋の言葉にクルシアは驚愕した。


ニホンコク?ジエイタイ?何を言っているのだ?


「この辺りに国などない。貴様の国があるなど聞いたこともない」

クルシアはブラフと思い笑った。


小賢しい。

その程度で我等を止めるつもりか?

異教徒らしい。


クルシアの嘲りに似た笑みを前にしても高橋は冷静でいられた。

以前は守るべき国民からもっと辛辣な態度を取られてきたのだ。

この程度なら然程の事もない。

「お前たちが知らなかっただけで存在する。それとも戦争でも仕掛けるつもりか?」

半分ブラフではあったが高橋をそれを悟られない様に見下した目を向ける。

その高橋を胡散臭い目で見ていたクルシアは、高橋の背後に異教徒が丘を登る様子が見えた。

「ふん!大方時間稼ぎのつもりだろう!その手には乗らん!踏み潰せ!」

クルシアの号令に数人の騎兵が一気に間合いを詰めようと駆け出してきた。


撃つしかない!


高橋はそう思うと引き金に指をかけた。

直後、タン、タン、タン、と高橋の89式が火を吹いた。

高橋が89式小銃を撃つと途端に騎兵が1騎、もんどり打って倒れた。

小銃弾は馬の頭に命中し、そのまま貫通して騎兵の鎧と体に穴をあけたのだ。

仲間の突然の悲劇に思わず他の騎兵の足が止まる。

そこを狙う様に高橋は引き金を引き続けた。


クルシアの思考は混乱していた。

武器らしきものを持ってはいたが、鎧もなく軽装な高橋が騎兵をどうにか出来るとは思えなかったのだ。

だが、目の前には既に五人目の騎兵が馬と共に地面に倒れた伏していた。

(何が起きた?魔法か?)

クルシアの様子に不安げな表情で部下が近寄る。

「クルシア様、如何いたしますか?」

部下の言葉にクルシアは我に返った。

「魔法かも知れん。が、たかが1人だ。全員で一斉にかかれ!」

魔法ならば脅威だが、見たところ1人づつしかやれない様だった。

これなら行ける!

とクルシアは思った。

そう、これが目に見える高橋1人なら・・・。


高橋は相手が動きを止めている隙に弾倉を交換し、セレクターを「レ」(連射)に切り替える。

まだ最初の弾倉には弾が残っていたが、攻撃を続けられ弾が切れた時に交換する余裕があると思えなかったからだ。

しかし、自分でも驚くほど冷静で居られた高橋だが、後ろの丘にいる井上たちは気が気ではない。

「あの馬鹿・・・」

井上が思わずぼやく。

騎兵が姿を表した時に援護しようとしたが、難民が射線に入り込んでいて撃てなかった。

もっと間隔を空けてれば・・・と悔やんだが、高橋は何とか切り抜けた様だ。

それでも動くに動けない高橋を助けるため、井上と佐藤の部隊はゆっくりと、だが確実に前進を続けていた。

難民の誘導は道端に伏せていた二人に任せている。

今は高橋を助ける事を考えよう。

井上はそう思った。


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