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交戦

自衛隊の前に敵意むき出しの集団が現れた。

自衛隊は、高橋たちは生き残れるのか?


新しき世界へ第三話、始めます。

調査派遣隊本部の伊藤重信いとうしげのぶは高橋からの報告に戸惑いを隠せなかった。

はっきり言えば伊藤の持つ権限を超えていた。

が、ここで見捨てる訳にも行かない。

取り敢えずどうしたものか外務省から派遣されて来た責任者、北野武きたのたけるに相談してみた。

「良いのでは?色々こちらの情報を集めるのにも役立つと思いますし」

北野があっさりそう言ってのけた。

流石に面食らったた伊藤だったが、確かにこの地の情報は欲しい。

しかも言葉が通じるのはありがたい。

「では、保護でよろしいですね?万が一ホードラーとか言う国から引き渡せと来たらどうします?」

伊藤は一応聞いてみた。

今の日本に戦争する余裕はない。

下手な返答をすれば初めて接触する事になる文明社会、つまりホードラーと言う国家と戦争になるかも知れないのだ。

安易には決められない。

「構いません。第一、文明レベルは12世紀から14世紀レベルらしいですからね。それに、先住民に気を使って日本を滅ぼす訳にはいきませんからね」

北野の冷静かつ冷徹な言葉に伊藤は息を飲む。

つまりは、日本の存続が最優先でその邪魔になる障害は潰すと言っているのだ。

「言質は頂いた、と解釈してもよろしいので?」

伊藤は確認の為に再度聞いた。

「良いですよ。事前に決まっていた事ですから。なんなら書名にして残しますか?」

あっけらかんとした北野の様子に伊藤は冷たいものが背筋に流れた。

だが、同時に腹も立った。


戦争となっても戦うのは俺の部下だぞ?


そう怒鳴りたかったが、自衛隊はその為にこそ存在する。

日本を守るために存在するのが自衛隊ならば、これもまた日本を守る事だと考えた。

「了解しました。では難民の保護と不測の事態に備え防衛出動します」

そう言って敬礼する伊藤を北野は任せましたよ、とだけ言った。


「なん・・・だと・・・」

本部からの通達に高橋は冷や汗を流した。

(政府は、やる気なのか?)

当然の疑問だが、今の高橋に疑問を解いてる暇はない。

保護せよ、また不測の事態に備え増援も出す。

と命令されればやるしかない。

「・・・許可が出ました。皆さんを保護します」

漸く絞り出した高橋の言葉だったが、彼等に取っては救いの言葉だ。

難民たちはこれで助かる!

と口々に叫び出す。

歓喜の涙を流すものもいた。

「そうと決まれば早速行こう!追っ手が来る前に!」

アインの声に難民たちが疲労した体に鞭打つように動き出した。

だが、高橋は不吉な言葉を聞いた気がした。

「追っ手?」

その呟きは歓声に消えた様に思えたが、ミューリと名乗った少々がしっかり聞いていた。

「ええ、ホードラー王国のアンストンと言う騎士が追って来てる筈です」

初めて聞いた事実に高橋は生きた心地がしなかった。


はめられた。


そう思ったが今更だ。

いつ来るか分からない追っ手に迎撃体勢は取らねばならない。

「では大急ぎで丘を越えてください。追っ手が来ても丘で食い止めます」

血の気が引いていたが、逆に冷静になれた。

「井上!佐藤!戦闘配置に着け!敵が来るぞ!」

高橋が無線機に怒鳴る。

その様子にシャインが声をかけてきた。

「凄い魔法のアイテムね?後で見せて貰っても良いかしら?」

この状況下で好奇心を発揮できるシャインに呆れながらも、高橋は難民が来た方向を見ていた。

そして気付いてしまった。


近い!


「急げ!追っ手が近くに来てるぞ!走るんだ!」

高橋の叫びが辺りに響く。

近くにいたシャインがハッとして高橋の視線の先を見る。

その目に土埃がたち昇るのが視界に入った。

「みんな急いで!」

シャインも高橋と同じ様に大声を挙げる。

途端に周囲はパニックに陥り、一目散に丘を目指した。

「貴方も早く!」

ミューリが高橋の袖をつかむ。

しかし高橋はそれを振り払った。

「皆さんの避難完了まで時間を稼ぎます」

高橋にそう言わせたのは、自衛官としての使命感なのだろうか?

それとも日本人としての矜持だろうか?


そのどちらもかも知れない。


「無理よ!1人でなんて!」

悲鳴の様に叫ぶ二人に高橋は笑いながら答えた。

「自分は自衛官です。難民に危機が迫っている状況で逃げる訓練は積んでません。大丈夫、任せてください」

悲壮な覚悟だった。

だが、笑みと言う虚勢をはる事で自らを奮い立たせる。

「行きなさい・・・さあ早く!」

最後は怒鳴る様にして正面を見据えた。

高橋の怒鳴りに二人は高橋の後ろ姿を振り返りながら難民たちの最後尾を守るように走り出した。

それを見送った高橋は、さっきは忘れていた小銃の初弾を装填すると89式を構えた。


「・・・日本人を舐めんな!」

高橋の咆哮が響くとほぼ同時に騎馬集団が森から姿を表した。


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