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その少女、横山清衣弥は神社に来ていた。
自分から積極的に神社に足を運んだのは初めてのこと。
それほと切羽詰まっていた。
それにしてもまさかこんな近くに神社があるとは思わなかった。
ネットで検索したらこの願駄夢神社が出てきた。
家から15分ほど歩いて行ける距離にあった。
神様が願いを叶えてくれる神社だそうだ。
評判も良いのでここならと訪れてみようと思ってやってきた。
どういうわけか自分しかいないようだ。
日曜日のお昼すぎでこんなに天気も良い日なのに。
ちょっと不思議だ。
神様にお願いするにはお賽銭を入れて鈴を鳴らす?
それでいいのかな?
なにしろこれまで神社に来ることもなかったんでマナーというかルールを知らない。
テレビなんかでチラッと見たことがあるのはお賽銭箱にお金を入れて鈴を鳴らしてお願いする、でいいのかな?
まずはやってみよう。
お賽銭箱に100円を入れる。
中学3年生の清衣弥にとっては100円という金額はわりと大きい。
働いて収入があるってわけではないので毎月もらっているお小遣いの3,000円の中から出さなければならないのはちょっとつらい。
でもお願い事があるんだから仕方ない。
ゴニョゴニョって願い事を唱える。
小声すぎ?
もっとはっきりと話さないと神様には聞こえない?
不安になったので人に話しかけるようにもう1度。
2度手間になってしまった。
そしてパンパンと手を叩いて鈴をガラガラって鳴らす。
またパンパンって手を叩く。
手順ってこんなのでいいのかなとまた不安になってくる。
あまりにもバタバタしすぎたかもだが、それでも内容はちゃんと通じたと思う。
これで神社での神頼みは終わり。
周りにはだ〜れもいない。
ここって人気のある神社じゃなかったっけ?
たまたま今は人がいないだけ?
神様へのお願い事っていったってものの5分もあれば終わってしまう。
日曜だから神社の人もお休みかなとグルッと見回してみた。
改めてよ〜く見ると神社は広い。
人が多いかもってテッテッテッと急ぎ足で来たのであまり周りは見てなかった。
それからあたふたとお願い事を終わらせた。
用もすんで落ちついてみると広いのにすごく綺麗だ。
掃除が行き届いているんだ。
「ちょい待ち〜や、お嬢ちゃん」
清衣弥がへ〜とかふ〜んって物珍しくて神社内を見ていた時のことだ。
大きくて綺麗な石畳の上にいた。
声がしたのは背中を向けていたお賽銭箱のほうから。
自分が声をかけられたんだろうと振り返った。