(3)
う……うそやろ……。
夜がやって来た。
自称「勇者」のド腐れオス畜生の手下どもは……この状況をどうするかについて、延々々(中略)々と言い合いをし続けて……答は出とらん。
当然だ。
救助するつもりやった王女様は妊娠しとった挙句に死亡。
その王女様を殺したのは、自分らの親分の「勇者」らしかと思い込んどる……ちゅ〜か、その思い込みは真実やけど……けど、ど〜して「勇者」が王女様を殺したかは……想像も付かんみたい。
ま、当然ちゃ〜当然やけど。
倒そうとしとった「魔王」が、今、ど〜なって、どこに居るとか、全く判っとらん……らしい。
ま、これも当然ちゃ〜当然やけど。
全てを知っとるらしい「勇者」は……正気を失なっとる……あ〜、これも思い込みじゃ……なくなりそうだ。
この体に入っとる2つの魂の内、「勇者」の魂は……完全に錯乱しとる。
ウチの魂は……。
たしかに、幽体離脱の術とか……他の誰かの体に魂を移す魔法を使った事は何度も有った。
けど、それは……前の体が無事な状態でだ。
ど〜やら、ウチの魂が……何かを考える時には……この体の脳味噌を使ってるようだ。
けど……ド腐れオス畜生が意識を失なえば……ウチの意識が表に出て……ウチの意識が裏に引っ込んだら、ド腐れオス畜生の意識が表に出て……。
その繰り返しで……。
「うわあああ……王女様、これは何かの間違いで……ああああ……許して許して許して許し……」
眠っとったド腐れオス畜生が悪夢を見て意識を取り戻したようだ。
ウチの意識が引っ込んで……。
「ふにゃ……」
脳味噌は疲れ果ててるから、当然、すぐに、また眠り……。
そして、ウチの意識が表に出て……。
何て事だッ‼
この体の脳味噌を休ませる事が出来んじゃなかねッ‼
……たすけて……誰か……。
意識を失ないかけてるのに、意識を失う事が出来ん……。
中途半端な状態で……ただ……頭の回りだけが……どんどん悪うなって……。
この調子じゃ……何か有った時に……どんな阿呆な事をやらかしてしまうか……知れたもんじゃなか……。