(2)
「え? 何で、お姉様の術が効いてな……」
へっ?
自称「勇者」の手下の1人が、ウチを見て、そんな事を口走る。
恐る恐る……視線を下の方に向け……。
やっぱ……今のウチの体は……精液袋の体じゃなかねッ‼
しかも……この鎧……思いっ切り見覚えが……あああああ……他人の体に魂だけ入って……しかも、その体は精液袋。
そのだけでも、最悪やとに……何でねッ?
何でねッ?
何でねッ?
何ちゅ〜事ねッ⁉
ウチの今の体は……よりにもよって……あの「勇者」とか名乗っとったド腐れオス畜生の体……。
「こ……殺して……死なせて……」
思わず、ウチの口から出たとは……あのド腐れオス畜生が口走っていたのとほとんど同じセリフ……。
「何かがおかしいな……。あそこまで心が弱っていたのに、精神操作系の魔法が効かないなんて……」
ド腐れオス畜生の別の手下が、マズか事に気付いたようだ。
え……えっと……。
あ、そうだ。
まだ、あのド腐れオス畜生の意識は、この体の中から消えとらん。
魔法を使っとる気配を覚られないように、細心の注意を払って、あのド腐れオス畜生の意識を探り……あああ、助かった。
眠っとるようやけど、この体の脳味噌の中に残っとる。
それを無理矢理覚醒して……。
また、何も見えんようになった……。
「殺して……死なせて……」
「もう1回、眠りの魔法をかけてみるか……」
ド腐れオス畜生や周囲の人間の声は聞こえるけど……。
そして、また、誰かが魔法を使った気配がして……。
「ふにゃっ?」
あれ?
また、目が見えるようになっとる……。
「おい、どうなってる?」
聞きたかとは、こっちたいッ‼
あっ‼
しもた……精神操作系の魔法に耐性が有る奴らに……こんな感じのが居った……。
人格が複数有って、表に出とる人格が精神操作系の魔法を食ったら……その人格は眠ってしもうて、別の人格が表に出る……。そして、精神操作された人格は……眠っとる内に、その精神操作が解ける……。
どうやら、ウチと、このド腐れオス畜生も似たような事になってるようだ。
表に出とる方が、意識を失なったら……もう片方が表に出る……そんな感じになってるみたいだ。