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悲劇的結末

「こ……これは……一体?」

 目の前に有る、あまりと言えば、あまりな光景を目にして、エルフの魔法剣士は呆然としていた……。

 瀕死の重傷を負ったまま逃亡した「魔王」を名乗る闇の軍勢の支配者の姿はどこにも無く……転がっているのは2つの女性の死体……。

 いや、片方の女性の死体の膨れた腹の中に、もう1つ胎児の死体が入っている可能性が高いが……。

 ともかく、女性の片方は……「魔王」に誘拐された人間の王国の王女だった。

 異世界から転生してきた「勇者」をリーダーとする一行の誰もが(ただし、後述する理由で1名は除く)……王女の死体について、同じ想いを抱いていた。

『何で、魔王に誘拐された王女様が妊娠した状態で死んでるのか、考えたくもない』

 そして、もう1つの死体は……人間であれば十代前半ぐらいの少女に見えた……。あくまでも「人間であれば」だが……。

 八重歯と呼ぶには、余りに長い牙。肌は白いが、一部のエルフや、北方系の白肌人種の「肌の白さ」とは異質な……むしろ白豚亜人(オーク)の「肌の白さ」に近い嫌な感じのする「肌の白さ」。

 髪も、人間にはあり得ない……そして、明らかに染めたのでもない、ある場所は緑、ある場所は紫、ある場所は青……部位によって違うが、どれもが異様に鮮かな虹色だった。

「お姉様……この女の子の死体の残留魔力から何か判りますか?」

「変だ……魔属(フィーンド)の『気』は感じられるが……複数系統の『気』が入り混じっている……。人型の魔属だとしても、突然変異種か雑種にしか思えん……」

 戦いの女神の女司祭の質問に、エルフの魔法剣士は、そう答えた。

「おい、このメスガキに刺さってる剣……勇者(あにき)のじゃねえか……。まさか……王女様の喉の傷も……」

 忍者(バーグラー)は口から無理矢理言葉を絞りだしたような口調で、そう指摘し……。

「その『アニキ』から事情は聞き出せそうにないな……」

 一行の中で勇者との付き合いが最も長い丘ドワーフの老戦士は、やれやれと云った感じで、溜息をついた。

 肝心の勇者は……2つ(もしくは3つ)の死体の(そば)にへたり込み……虚ろな目で……。

 勇者は血の付いた短剣をゆっくりと喉元に向け……。

「おい、アニキ、()()()()()()()()()()()ッ⁉」

 忍者(バーグラー)は、慌てたような口調で、そう叫び、残りの「気」を全部使って高速移動術を発動。勇者の手に有った短剣を奪い去った。

「し……な……せ……て……く……れ……。もう……のこりの……いのちは……ない……」

「フザけんじゃねえッ‼ アニキらしくねえよッ‼ そんなのッ‼」

 ほぼ無人と成り果てた、魔王の居城で……忍者(バーグラー)の悲痛な叫びだけが響いた。

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