表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

中華王朝史記

女王陛下は太傅の元ルームメイト

作者: 大浜 英彰

挿絵の画像を生成する際には、「AIイラストくん」と「Ainova AI」を使用させて頂きました。

 その御方と初めて御会いしたのは、私が十代の頃の話でした。

 父の事業における知人の御令嬢が、交換留学の間だけルームメイトとして私の家に滞在する事になったのです。

挿絵(By みてみん)

「初めまして、日本の神戸より参りました海紅蘭(かいこうらん)と申します。シンガポール滞在の三ヶ月間、夕華(シーファ)さんを始めとする完顔ワンギャン家の方々には御迷惑をお掛けしてしまいますね…」

 神戸育ちの華僑には上品な方が多いと聞き及んでおりましたが、この方は別格で御座いましたよ。

挿絵(By みてみん)

「いえいえ、紅蘭さん!何か御困りの事が御座いましたら、御遠慮なく仰って下さい。私に出来る事でしたら、何なりと御協力致しますよ。」

 この一言があの御方との末永い御縁の始まりだったなど、当時の私には思いもよらぬ事でした。


 交換留学の三ヶ月間、私達は良き学友として円満な関係を構築する事が出来ました。

 しかし所詮、ホストファミリーと交換留学生の一時的な間柄。

 やがて私達の付き合いは、国際郵便を時折交わすだけの物となったのです。


 それが再び急接近する事と相成ったのは、学業を修めた私が父や兄の事業を手伝い始めた頃の事でした。

挿絵(By みてみん)

「紅蘭さんからの親書ですか、懐かしいですね…」

 対面で旧交を温めようという先方の提案を、私は至って気軽に快諾したのでした。

 そして会談の当日、私の自宅に黒塗りの高級車が乗り付けられたのです。

挿絵(By みてみん)

「御無沙汰をさせて頂いております、夕華(シーファ)さん。海紅蘭(かいこうらん)改め愛新覚羅紅蘭(あいしんかくらこうらん)、御会い出来て光栄で御座います。」

 穏やかな微笑も柔らかい声色も、昔日のまま。

 しかしその気品と威厳は、あの時とは桁外れで御座いました。

夕華(シーファ)さん同様、今は私も満州姓を名乗らせて頂いているのですよ。宣統帝の孫娘として、私には成すべき事が御座いましてね。」

 驚くべき事に、それは王政復古による大陸の秩序回復だったのです。

「旧体制の崩壊により、今や大陸は混迷の一途。清朝皇位請求者として看過は出来ません。中華の民達の安寧の為に、そして私の為に。今こそ貴女の御力をお借りしたいのです。」

「御任せ下さい。この完顔夕華(ワンギャン・シーファ)、及ばず乍ら御力添えさせて頂きます。」

 こうして私は嘗てのルームメイトの手を取り、臣下として忠誠を誓ったのです。


 やがて嘗てのルームメイトは清朝の後継国である中華王朝を興し、初代女王として即位されたのです。

挿絵(By みてみん)

 そして今では私も、太傅(たいふ)と呼ばれて紫禁城で執務に励む毎日ですよ。

 予想外の形では御座いましたが、こうして義を果たす事が出来たのは何よりですね。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
画像をテンポの良い文章の親和性で、ふたりの関係がとてもよくわかり面白いです。 ふたりのその後か気になります。 拝読させて頂きありがとうございます。
短い期間であってもお互いに信頼関係が築けるとは素晴らしいですね。 夕華さんも「忠誠」は誓っていますが、かつてのルームメイトとしての友情ものこっていると思います。 重責を背負う君主ですが、気心の知れた友…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ