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71話:アゼル流テント設営

「【血濡魔術ブラッティー・マジック】――それが俺の固有魔術(ユニークマジック)の本当の名だ」


 野営のためのテントを張りながら、同じく作業をしているメリルに自身の魔術を改めて教える。

 日も沈み始め、付近は徐々に夜の闇に包まれつつある中で、俺たちは樹冠脚竜(セルヴァダイノ)の戦闘跡からそう離れていない場所を野営地としていた。


「ブラッティー……「血液(ブラッド)」ではなく「血まみれ(ブラッティー)」ですか……」


 メリルは野営地を囲むように結界を張っている。

 使っている魔術は先ほども使っていた【臭香の封域(スメル・シール)】。それから風属性中級魔術の【静寂の帳(サイレンス・ヴェール)】と水属性中級魔術の【夜溶の結界(メルト・ナイト)】か。

 【静寂の帳(サイレンス・ヴェール)】は結界内部の音が外へ漏れるのを防ぐ効果があり、【夜溶の結界(メルト・ナイト)】は焚火等の光が漏れるのを防ぐ効果があったはずだ。

 いずれも軍事行動においても有用な魔術だったと記憶している。

 この魔術の良いところは、外から発せられた音や光は防がず、中に通してくれる点だ。敵が接近しても相手からは見え難く、こちらからは丸見えなのが良い。欠点を上げるとしたら、注意深く見れば魔力を視認できなくとも、その範囲に霧のような暗所が生まれてしまい昼間なら簡単に見つかってしまうところだが……夜であれば人ならともかく、獣や魔物相手ならまず見破れんだろうな。


「そうだ。血に覆われることで物の形質を変える能力。それが俺の固有魔術(ユニークマジック)の能力だ。想像通り、この魔術は血に塗れた物を操るだけで、血液そのものを直接操作する力はない……ってまあ、他人からしたらさほど違いはないか。そんで、俺が偽名まで使って隠したがった理由は、あんたならわかるだろ?」

「そうですね……昨今でこそ固有魔術(ユニークマジック)は物珍しい程度の認識ですが、それでもどうしてもその能力故に忌避されてしまう能力はありますからね。過去に似たような魔術による事件なんかがあるとなおさら……」


 そこまで言ってメリルは言葉を濁らせた。

 気まずげにしているのを見るに、俺が戦っている姿に何か思うところがあったのだろう。具体的に何を思ったのかまではわからないが、彼女の口調と目の動き、それからこれまでの経験から、あまり良い感情ではないことだけはわかる。

 まあ、こういった態度はとっくに慣れている。むしろ、あれを見てなお会話をしよとしてくれるのだから、メリルは余程人間ができている。


「なにせ「血」だからな。どうしたって良いイメージにはならん」


 どうにかこうにか頑張れば、一つ二つは良いイメージを与えられるかもしれんが、基本的に血が流れる場面てのは「戦場」や「屍」といった「命が消える」場面に結びついてしまう。


「加えて俺の魔術はその特性から、敵を倒せば倒すほど武器(けつえき)が増えていくから、こと大群相手にはめっぽう強い。もちろん、魔力さえ尽きなければの話だが……」

「それはそれは……確かに人には言い難い能力ですね。名前を偽ってまで隠すのにも納得です。しかし……大丈夫でしょうか?」


 そこまで言うと、メリルはある方向に顔を向ける。俺もそれに習って、視線だけを動かしてその方向を見る。

 そこには焚き火用の枯れ枝を集めるフィリアとリアナの二人がおり、枝を拾いつつ真剣な様子で何事かを話している。何を話しているかは聞き取れないが、大方このままパーティーを組むか否かを相談しているのだろう。


「さあな」

「さあな、って……」

「俺はただ委ねるだけだ。選択肢は与えたし、考える時間もやった。それでどうするかは、あいつが決めることだ……」


 口では強気なことを言っていたが、俺の能力を知り実際にそれが振るわれる姿を見れば、考えなんざ一変もニ変もするさ。変に強がって無理について来るよりは、考えを改めてもらった方が何倍もマシだ。

 ……そしてそれはフィリアにも言えることだ。


「同情か何だか知らんが、変な親切なんかするもんじゃねえよ……この先の道は、優しいお前には苦しいだけだぞ……」

「アゼルさん?」


 不思議そうな顔をするメリルに「なんでもない」とだけ返してテント設営を進める。

 野営が多い「ステップトレイル」は愛用のテントを持参していたので、設営担当の俺とメリルは材料を受け取りテキパキと設営を終えた。

 最初彼らから渡されたのは水捌けの良さそうな布とロープ、地面と固定する杭だけで、テントを支える肝心の支柱が無かったのだが、そこは流石野営のベテランと言ったもので、メリルが土属性下位の【土槍(アース・スピア)】の魔術を使って支柱にした。消臭の魔術といい遮音の魔術といい、つくづく野営に便利な人だな。間違いなくこっち方面に力を入れて魔術を習得していたことがわかる。

 そんな勝手がわかっているメリルのおかげで、カイルの分とエマ・メリルの分、二つのテントは既に設置はすぐ終わった。

 そんなベテランな「ステップトレイル」に対し俺たちの方はと言うと、三人とも就寝用の寝袋や毛布くらいしか持っておらず、揃いも揃ってテントなんざ用意していなかった。これは別に怠慢と言うわけではなく、それなりの事情(いいわけ)がある。

 俺はそもそも寒さを凌げる物さえあれば問題がないタイプだし、昨晩喧嘩別れしたリアナも野営のスタイルは同じだった。

 そして野営に慣れていないフィリアはと言うと……悲しい話で、テントを買う金とそれを背負って動けるほどの体力が無かったのだ。

 フィリアが見ていたテントの値段は二人用で銀貨三枚、一人用でも銀貨二枚とまあまあ高い。悔しがるフィリアを見て立て替えてやってもいい気分もあったが、そうなるとテントを運ぶのも俺になるので、動きやすさを至上とする俺としては少々勘弁してほしい所だった。

 そんな理由からフィリアは泣く泣く安い寝袋だけ買い俺たちは外で雑魚寝する事にしたのだが、「それはあまりにも……」と出発前にエマとメリルが苦言を呈したので、俺が何とかすると言ってとりあえずその場は納得させた。


「さて、支柱は問題ないとして、皮の面積は足りるか……まあ、少なけりゃ戻って追加で剥ぎ取っていけばいいか。どうせ大量にあるんだし」


 そう言いながら樹冠脚竜(セルヴァダイノ)の頭から折った角を手に取る。角には血がたっぷりと塗りたくっており、それを地面に突き立て【血濡魔術ブラッティー・マジック】を発動させる。

 人の腕程の長さしかなかった角は、みるみる内に俺の身長を越えて高く伸び一本の樹になっていき、あっという間に一本の丈夫な支柱が出来上がった。

 次いでこれまた血をたっぷり塗りたくった樹冠脚竜(セルヴァダイノ)の皮を【血濡魔術ブラッティー・マジック】で広く広く伸ばしていき、それを支柱の枝に被せて布が飛ばないように地面と柱に繋ぎ止める。

 すると三分足らずで、鉄と脂の香る立派な赤いテントが完成した。


「は、早いですね……しかも元のサイズより明らかに大きくなってますし……」

「塗り重ねた血の量や素材によって、ある程度大きさを変えることができるんだよ。それから強度もな」


 なんにせよこれで風は凌げる。雨が降って血が流れたら元のサイズに戻っちまうのが心配だが、そこはもう祈るしかない。

 もうひとつ難点を挙げるとしたら、やはり臭いがキツイところか。俺はもう慣れちまったが、フィリアとリアナはなあ……。


「ふうむ……少し、失礼します」


 悩んでいるとテントに霧のようなものがかかり、あの嫌な臭いがしなくなった。

 顔を近づけてみても鉄錆や脂はもちろん、それ以外の一切の臭いが消えている。そこにあるのは、ただ少し派手なだけのテントとなっている。


「今のは……【香消(デオーレ)】だったか? つくづく便利な魔術だな、それ」

「大した物ではありませんよ。便利性で言ったらアゼルさんの魔術の方が羨ましいですよ」

「ははっ、血を使う魔術なのにか? ……いや、悪かった。ありがとよ。俺も久しぶりに属性魔術を羨ましく思ったよ」


 軽く笑いながら皮肉を言ったらメリルが気まずげに目を逸らしたので、すぐに謝罪と感謝を返す。

 しかしこの消臭の魔術は本当に助かるな。今着ている血染めの外套(コート)もそうだが、防具としては優秀なのだが、普段着にするには臭いが難点だったからな。

 香りの強い花などをすり潰して振りかけたりして、俺なりに臭いを誤魔化す工夫をしていたが、こっちの方が安上がりだ。


「しかし【香消(デオーレ)】か……」


 前世では聞いたことが無い魔術だったが、昔からある物だったのか、【魔術障壁(アルマ・マギカ)】みたいに死後に出来たものか知らないな。俺の知識にあるのは敵が使ってくるような攻撃魔術か、防御魔術くらいしかないからな。戦闘以外の用途で使われる魔術はてんで知らない。

 その攻撃魔術もきっと開発や効率化が進んで、俺が知っている物とは違っているんだろうな……。


「例の物とは別に、【香消(デオーレ)】が付与された魔導具でも探すかな? 俺でも使える物があると良いんだが……」


 魔術同様、魔道具関連の技術も進歩しているようだし。帰ったら瘴気の魔力しか使えない俺でも起動できる魔道具を探すかな。

 この前行った魔道具店に置いてあると嬉しいな。


「おーい戻ったぞ。テントの方は――お、出来てるな。なんだ、随分と立派なものが建ってるじゃないか」


 物思いに耽っていたところで、食糧調達担当のカイルとエマが今日の夕食を抱えて戻ってきた。


「おかえりなさい二人とも。何を採ってきたの……って、全部山菜じゃん」

「まあ、な。肉が食いたかったのならまた行ってくるが?」

「あ、ううん! そういうつもりで言ったんじゃないの。ただお肉が無いのが珍しかっただけ。いつもは何かしらのお肉は絶対に入れてたのにどうしたのかなあって……」

「あー……今日はなんとなくそういう気分じゃ無かったんだよ」


 若干歯切れの悪そうに言うカイルに、俺は小首を傾げる。

 普段は必ず食べる肉を今日は避けるとは。体調でも悪いのだろうか? 具合が悪そうには見えないが……もしかして、さっきの戦闘で使った【飢魔招香(きましょうこう)】がカイルたちにも効いちまったか?


「あー……そういえば、時間的にも腹が減る頃合いだったか。現に今、夕食の支度しているしな」


 怖気づいた樹冠脚竜(セルヴァダイノ)が逃げないように使った【飢魔招香】が、小腹が空いたカイルたちにも影響を与えていたとしたら……そりゃあ、あんな反応にもなるか。

 今回の戦闘は派手にやったから、見ていて気分が悪くなっただろう。それはカイルだけなく、おそらく全員……控えめな性格のメリルや荒事にそこまで慣れていないフィリア辺りは特にそうだったんじゃないか?

 そんな時に突如、目の前の肉塊(俺)を食したくなる気持ちになったのだから、そりゃあ今日の食事くらいは肉を避けたくなるか。

 この術、肉食動物や雑食動物を誘き寄せるのに重宝するが、人間にも効果が及んでしまうのが難点なんだよなあ。草食動物に至ってはまったく効果が無いし。


「戻ったわー。薪はこれで足りる?」


 丁度よく薪を集めていた二人も戻ってきた。二人のその腕にはかなりの量の枝が抱えられており、その内の幾つかはやたら切断面の滑らかな生木があった。

 おそらく落ちている枝では足りないと判断して、そこらへんに生えている木の枝を拝借したのだろう。生木はやや燃えにくいんだが、まあフィリアがいるから大丈夫だろう。

 案の定フィリアは【炎昇(フレア)】を使って、あっさりと水分の含んだ木の枝に火を点けていた。


「うわっ、これ私たちのテント? 思ったよりも立派ね?」

「有り合わせの物で適当に組み立てただけだ。ただまあ、頑丈さだけは保証する。臭いはメリルの魔術のお陰で消えたが、雨かなんかで濡れたら崩れるからそこだけ気をつけろ」

「……それテントとしては致命的な欠陥じゃない?」

「自覚はあるから言うな。せいぜい雨が降らんよう祈れ」


 夜の冷たい風を防げるだけマシだと思って欲しい。


「雨だと魔術が解けるのですか?」

「ああ。さっきも説明したが【血濡魔術ブラッティー・マジック】の発動条件は対象が血に覆われていることだ。だから水で血が薄まり過ぎたり洗い流されると魔術による支配権が失われ、そこに付与した効果や形態変化が元に戻る。だから間違っても水をぶっかけるようなことするなよ?」

「へぇ……なるほどねー」


 そう言ってリアナはなにやら真剣な眼差しでテントを観察し始めた。

 あの戦闘の後、リアナからはパーティーの件をどうするかの答えはまだ貰っていない。フィリアと何を話していたのかはわからないが、あの惨状を見て何も感じなかったはずはない。

 流石に【血骸操(ブラッドパペット)】を使うのは避けたものの、今回はいつもより派手目に戦ったのだからな。俺の想定通り、リアナの中で迷いが生じてくれたようで何よりだ。

 わざわざ条件まで付けて考えを改める機会を与えてやったんだから、このまま諦めてくれれば楽なんだが……。


「あ、外から見たよりも広い。思ったよりも快適そう。ねえフィリア。結構いい感じだよ?」

「あら、本当ね。風とかも全然入ってこない」


 諦め、るかなあ……?

 入り口の垂れ幕に手を掛けてテントの中に入っていく二人に軽く頬が引きつる。


「テントの用意が無いと聞いた時はどうなるかと思ったが、彼女たちが喜んでいるようで良かった。もし気に入られなかったら、俺のテントが彼女たちの寝床になっていただろうな」

「ふん。俺としてはフィリアには野ざらしで寝てもらうつもりだったんだが……エマの目が本気だっからな」

「当たり前よ。アゼルは良いかもしれないけど、女の子二人を外に寝かせて風邪をひいたらどうするの?」


 採ってきた山菜を早速鍋に入れてかき混ぜながらエマは軽く窘める。

 俺がテントを用意しなかったら確実に、エマによってカイルは自分のひとり用テントを追い出されて、フィリアとリアナがカイルのテントに入れていただろう。

 そうなれば追い出されたカイルは、俺と一緒に野ざらしで寝ることになっていたはずだ。テントが無いのは俺たちのせいなのに、流石にそれでは忍びない。


「ははは、エマは昔から年下の面倒を見るのが好きだったからな」


 カイルは特に不満を言うのでもなく笑い、その言葉にメリルも同意するように微笑む。やはりこの三人の付き合いは相当古いようで、互いを強く信頼しているのがよくわかる。


「テントの問題はこれでいいとしてだ。アゼル、本当にここにテントを設営しても大丈夫なのか?」

「それは、()()()()()()での問いだ?」

「いや、だってここ、樹冠脚竜(セルヴァダイノ)と戦った場所からあまり離れていないだろ? 死体もお前の言う通り処理せずにそのまま放置しているから、臭いに反応して魔物が寄って来て危険なんじゃないか?」


 カイルの言う通り、俺が倒した二十余りの樹冠脚竜(セルヴァダイノ)はひとまとめにしてその場に置いてあるし、今いるこの場所も五分もかからない位置にある。

 街道からはもうずいぶんと離れているため死体の処理は特に気にしなくても良いが、それだと血の臭いに釣られて他の魔物が寄ってくる可能性が高いため、本来なら野営をするならもっと離れた場所に移動する必要がある。


「魔物が通るんじゃないかという心配なら、その考えは正しい。こんなに近けりゃ、ほぼ確実に何らかの魔物は来るだろう」

「じゃあ駄目じゃないか」

「だが、身の安全は保障できる。そいいう意味では問題はない」


 メリルのおかげで外敵からは見つかり難くなったし、それがなくともこの周囲には非常に細い糸状に変形させた【血織刃(けっしょくじん)】を張り巡らせているため、何かが通ればすぐに俺に伝わるし遠隔からでも切り刻める。

 それに今回は、明確な目標があるからな。


「あの大量の死体は獲物を誘き寄せるための餌だ。あれだけ血の臭いが香っていれば夜狩熊(ハンターベア)ならまず無視はしない。他の冒険者に先を越されていなけりゃ、今夜中にでも姿を現す。どうせ待ち伏せするなら餌場に近い位置で張っていたほうが良いだろ?」

「それはそうかもしれませんけど、何もこんなところにテントを設置しなくても……張り込みでしたら、時間を決めて都度移動すればいいですし」

「まあ普通はそうだな……だが今回はフィリアに野営の危険性てのを体験して欲しくてな。少しばかりスリルのある状況を作ってやりたかったんだ」


 知っての通り、フィリアは数日前までは豪華な家のベッドで眠る御令嬢だったのだ。当然ながら、夜行性の獣や魔物が活発になる夜の森で眠ったことなんてないはずだ。

 今回のメイン目標は夜狩熊(ハンターベア)だが、俺としては今やっているこの野営こそが主目的だ。


「なあに、ここら辺に出る魔物なら事前に調べている。何体来ようがどうとでもなる。あんたらには悪いが、変な奴に協力を依頼した代償として付き合ってもらうぞ。フィリアには……くくっ、せいぜい魔物に怯えて眠ってもらうさ」

「うわあ……」


 俺の意地悪な笑みを聞いてメリルがドン引きした声を漏らす。

 まあ、メリルの魔術のおかげで魔物に見つかりにくくなっていることだし、仮に見つかってもここら辺は大した魔物も出てこないようだから対処はすこぶる簡単だ。

 樹冠脚竜(セルヴァダイノ)のおかげで外套(コート)に血の補充もできたし皮を剝いで血染布(けっせんふ)を作ることもできた。爬虫類特有の鱗のためか布と比べると血の吸着性は落ちるが、布よりも強度があるため多少は良くなったかな。


「アゼルってフィリア様に優しいんだか厳しいんだかよくわからないわね」

「優しいつもりはないんだが……冒険者に限らず、戦闘を生業にするのなら相応に厳しくもなるさ。最低でも、格上に会っても命を拾える程度にはなってもらわんとな」


 フィリアは魔術の腕は確かだがまだまだ危機感が足りない。もっと強くなって、Cランク程度の魔物には単独で勝てるようになってもらいたい。


「Cランクを単独でって……いくら何でもそれは求めすぎじゃないか?」

「何言ってんだ。Cランクの魔物をひとりで倒せて初めて一人前だ。安全を期して複数人で戦うのは良いが、そんなんじゃ百年経とうがBランクにはなれんぞ?」

「……はは、手厳しいな」


 カイルが困ったように頭をかくと、それを聞いていたエマとメリルも苦笑する。

 まったく……徹底的に怪我を避けるのは良い事ではあるが、何らかの事故で格上の魔物と遭遇したあかつきには簡単に死んでしまうものだ。

 窮地の際に命を拾うのはいつだって、生きんと戦い、殺さんと足掻く者なんだからな。


「……まあ、それがわかっているから今回の挑戦なんだろうがな。安心しろ。頼まれた以上、全力でサポートはしてやるさ。あんたらはただ全力でぶつかればいい」

「ああ。頼りにしているぞ」


 それから俺たちは夜狩熊(ハンターベア)討伐の作戦を話し合いながら、日が沈み夜が更けるのを待つのであった。

 ちなみに。出来上がった山菜のスープは美味かったが、ほんの少し青臭く感じた。

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