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【The Clown Assassin】〜道化の暗殺者物語〜  作者: 空の上の猫
〜道化の章〜〔出会い編〕
12/41

【語られる過去と決意】【三】

雨に打たれながら、レインは自分に起きた事に夢であって欲しいと願うばかりで立ち上がる事も、顔を上げることさえも出来ず、ただその場に膝を着いて地面を見つめることしか出来なかった。

仲間も、家族である妹のセルナでさえも目の前で失った絶望は大きくレインの精神に深く塞ぐことの出来ない傷が残る...。


そんなレインに青年はその場から離れる訳でもなく、無言で背を向けていた...。

すると視界に砕け散った残骸の中から不思議に輝く物が映り青年は取りに向かう。


紅髪の青年:ー.....?あれは...ー

青年がそれを取りに行くとそこに落ちていたのは血のついた花型の装飾品だった。


紅髪の青年:「君...これ...なにか分かるかい?」


レイン:「………っ!?.....それ...は...ぁ.....ぁ...セルナ...セルナに.....俺が渡した...髪飾り.....あぁ.....ずまない゛.....あぁぁぁ゛...!!」

青年から渡されたそれは妹のセルナがアサシンになった時にレインが祝いに渡した特別な鉱石で作られた髪飾りだった。

髪飾りを手にしたレインは更に声を荒らげ涙を流す。


レイン:「ずっと.....大切につけてくれてたなんて.....全く気づきもせず...似合ってるぞって.....言ってやることすら...しなかった...俺は誰よりも傍にいたのに、何もわかってなかったんだ...ずっと...この先もずっと一緒にやっていく...そう思ってた.....安心してたんだ...なのに...セルナは目の前から消えた...今の俺に...生きる資格はない...兄を語る事もな.....」


紅髪の青年:「生きる事に資格がいるなら君はまだその資格を使い切っていないよ...なにも終わってないんだ。」


レイン:「終わってない...だと...?...なんで...じゃあなんで俺が残された!!俺も本当なら今頃死んでその辺に転がってたんだ...!なにが絶対助けるだ.....俺も...セルナも.....なにも出来なかったじゃねぇかよぉぉ.....!!」

レインは青年の服を強く掴み歯をギシギシと自分の弱さを、他人に当たっていることの苛立ちを隠す事が出来なかった。


それでも青年は決してレインから視線を逸らすことなく強くその視線を向ける。

ここでレインを見捨てることは青年には到底出来ることでは無かった。

最初にラボラスとの戦闘になった時逃していなければ今目の前で起きている事が起きなかったのだから...その責任と後悔を自分に痛いほど打ち付け拳を強く握り

青年はある決意をしていた。


レイン:「...なぁ.....もう俺のことも殺してくれ...あんたが責任を感じることは無い...殺してくれないなら今すぐ俺の目の前から消えてくれないか.....一人に...してくれ...」


青年:「一人にしたところで君はどうせその剣で首を斬るだけだろう、そんな事見逃す訳にはいかない。一つ俺のお願いを聞いてくれないだろうか...」


レイン:「は?.....なにいってんだよ...」


青年:「今回の件は俺がラボラスを逃した事に非がある。君はそれに巻き込まれただけだ...だから...」


レイン:「...じゃあなにか...?巻き込まれた俺らはアサシンにも関わらず任務中にたまたま遭遇した敵に対処出来なかった出来損ないのアサシンって...俺の親と国王にそう説明すればいいのか...?ハハッ.....馬鹿にするにも程があるぞあんた...」


レインの目から生の光は感じられず...ただ廃人の様な全てを諦め冷めた目をしていた...。

涙を流しながら脱力し、完全に生きる気力すら失ったその姿に青年は怒りを必死に隠す。


青年:「そうじゃない...決して君を...死んで行ったもの達にもそんな事を言いたいんじゃ...」


レイン:「じゃあなんて言いたいんだよ!!!突然目の前に現れて、挙句の果てに俺のせいで逃がしちまった...!俺に当たればいいだろ!好きなだけ文句言えよ!...俺が...邪魔だったんだろうがよ...」


青年:「わかった...もういい...。俺の勝手にするよ.....すまなかった...でもこれだけ言わせてくれないか...もし君がここで生きる事を諦めたなら...俺は冥界だろうと君をもう一度殺しに行く.....絶対にそれだけは許さないよ.....。」


そう言うと青年はすぐにどこかへ消えてしまった...。

その後もレインは一歩も動かず、青年から渡されたセルナの髪飾りをじっと見つめていただけだった.....。


・・・・それから少し時間が経ち王の元へと体を震えさせながら向かうレインに不思議な光景が目に映った。


レイン:ーなんだ...兵が騒がしいな...どうかしたのか...?あぁ...そうか...もう伝わってるのか...俺だけがここに戻ってきたからみんな騒いでるんだ...。」


レインは今まで何度も昇り降りした階段がとてつもなく長く...足が重く感じていた。

"罪悪感"という枷がレインの足を縛り付けるかのように.....。

すると一人の兵がレインの元へ駆け寄る。


兵:「レイン...心配したぞ...?王がお待ちだ、先程この国の者ではない者が現れ我々が止めたのだが王がなぜかお通しになった...今王座の間にて対面しておられる。お前も早く王の元へ行け。」


レイン:「え.....どういう事だ...?」


全く理解が追いつかず困惑するレインだったがすぐにその状況を目にして驚くのだった。

大きな扉が開くとそこには国王とレインの父母がそしてその前に堂々と経つ身に覚えのある紅髪の青年がそこに立っていた。


紅髪の青年:「やっと来たね〜!待ってたよ!話は決まった。

後は君の返事を聞くだけだよ。」


レイン:「え……父さま.....母さま...すいません...いったいどういう事なのですか...?」


レインの父:「レイン...まずは国王にご挨拶を...」


レノバスタ国王:「よい...ラクシュバル・アイ・レイン...こちらへ来てくれたまえ、まずは無事に戻ってきた事に我は礼を尽くそう。」


レイン:「国王.....私は礼を尽くされる事はなにも.....なにもしておりません。」


レインの母:「国王の御前でその様な事を申すのかレイン...あなたは...」


紅髪の青年:「お母さん...先程も説明しましたよね?その"人を刺すような目"...やめましょうか!」


レインの母は何故か紅髪の青年に対し口答えをしなかった。

それに見た所少し震えていたのだ...レインの父はそれなりに構えているが、母は何故か青年に対し恐怖しているようだった。


レノバスタ国王:「まさか貴方様にお会い出来るとは...我々の国も大きくなったものです。今までどこにおられたのです...今やあなたの望んだ世界では無くなっておられるのですぞ...わが主君よ…」


レイン:ー………え…?なにを…国王様今なんて…?主君って言ったか……あいつ……何者なんだよ…ただのアサシンじゃなかったのか!?ー


紅髪の青年:「すまない…こちらにも事情があるんだ、まだ説明出来ないけどそのうちしっかり伝えるよ。今回は俺のわがままを言ってしまってすまないねアンブルク…。」


レノバスタ国王:「あなた様はあの頃と全く容姿が変わっておりませんな…ハッハッ!私も流石に百年程経つと歳をとりました。

それにしても少し話し方が変わったのですな、前より陽気に見えますぞ!」


紅髪の青年:「え…?!あはっ…あははは!まぁ若く見られたいんだよ〜なんちって……」


レノバスタ国王:「ハッハッハッ!左様でございましたか!お元気なお姿を見れた事感謝しておりますぞ。」


レイン:ー訳がわからねぇ……百年…こいつ何歳なんだよ……頭が破裂しそうだ、それに父様も母様も、なんであんな怯えてるんだ…あいつ何した??ー


レノバスタ国王:「んっん゛……すまなかった、話を戻すとしよう。

ラクシュバル・アイ・レイン、お主に長期の追放処分を言い渡す!」


レイン:「……追放処分……ど……どうして…」


レノバスタ国王:「お主はまだ任を全うしておらんであろう。

今回の件非常に腹ただしい事だ…敵を許してはならない、絶対に放っておいてはさらに取り返しのつかない事になってしまうやもしれん。この任を果たすまで一度も戻ってくるでないぞ!良いか?」


レイン:「はい。…おうせのままに…」


この時、レインは父と母の顔を見たが国王と青年以外

顔を合わせてはくれ無かった…。


レノバスタ国王:「さぁ、()け…今からここはお主の国ではないのだ…装備も全て置いて行くのだぞ。」


レインは身に付けていた装備を全て外し兵に渡した。

一人王座の間から出ていくレインの背中は希望とは程遠い、悲しみに満ちた背中だった…。


紅髪の青年:「ありがとう、礼を言うよアンブルク…俺の言う通りしっかり戻ってきただろ?あの子。」


レノバスタ国王:「ハッハッハッ、私があの歳の時はクラノス殿からよく逃げたものです、あの子は恐怖から逃げなかった。私の国に仕えるアサシンとして自慢出来ますぞ。」


紅髪の青年:「それは良かった!じゃあ俺も行くとするよ。」


レノバスタ国王:「"シエル様"……皆、まだ"龍の声"を…待っておられます。その時が来たら必ず……、それまでどうかご無事で。」


シエル:「……うん、ありがとう。」


広い間を大きな扉から出るとそこにレインの父母が立っていた。


シエル:「どうして…あの子の顔を見なかった…。」


レインの父:「見れるわけがないだろう……あの子に仲間を失う恐怖を私たちは教えなかったのだから。」


レインの母:「私たちも仲間を大勢失ってきた…あの子の辛さは……痛いほど分かるわ……それに…ぅぅ……目の前でセルナすらも……失ったのだから゛゛!!ぁぁ……ぁぁぁぁ゛!!」

レインの母はその場で泣き崩れてしまう。

自分達が隠してきた真実に…心痛めていたのだ。

アサシンに殺せぬ者なしと言うが…死なない訳じゃない、"殺される者"でもある……その真実を父母はレインにずっと隠していたのだった…。


レインの父:「すまない……今は私たちも整理がついてないんだ、あなたが何者かは知らないが……あの子を……どうか頼みます。」


シエル:「あぁ…任せて。」


外に出ると既にレインの姿は無く、兵に聞くと門を出て街の外へ歩いていったと聞いた。

急いで駆けつけると王国を外からじっと見つめ…涙を流すレインがそこに立っていた。


シエル:「大きな国だよね〜、いいとこで産まれたね君は…」


レイン:「あんた……何者なんだよ……どうして俺なんか…。」


シエル:「アサシンだってば…君が剣を抜いて背後から斬ったとき……俺には君が強く見えた。君はまだまだこれからも成長していくよ…絶対。」


レイン:「なんだよ…それ…見ただろ…あの罪人を見るような目で俺を見る親を……」


シエル:「いや、それは違う。君を憎んでいる訳じゃないんだ。いろいろ理由があるんだよ…。」


レイン:「勝手なこと言わないでくれ……それに…俺はこれから流浪者だ……もう関係ない……放っておいてくれ。」


その場から歩き出しどこかへ向かうレイン


シエル:「っ!?ちょまっ!!待て待て!君どこ行くのさ!!」


レイン:「あんたに関係ないだろ…!」


シエル:「君は今から俺と一緒に来るんだよ!!俺のいる国でアサシンやるのー!!」


レイン:「……まじかよ……。あんたが俺の引き取り人って事なのか!?」


シエル:「まぁそんなとこ!さぁ行こ!」


レイン:「はぁ…最悪だ……ってかあんたそこのアサシンなのか…?なんかのお偉いさんか?国王とはどういう関係なんだよ…?」


シエル:「ん?…あぁ〜あれね、ぜ〜んぶ嘘っぱちなんだよね〜…あはは……」


レイン:「・・・・は?」


シエル:「国王なんかいきなり俺の知らない人の話始めちゃうし〜!!もう汗止まんなかったよ!!いったい誰の話してるんだろぉぉ〜って、俺の容姿が似てる人なんだろうな〜とは思ったけど、上手く利用させて貰ったよ…いやぁ〜どうなる事やらと思ったけど何とかなっちゃうものだね!」


レイン:「ぅ……嘘だろ?お前国王騙したのか!?

てかじゃあなんで国王の名前知ってんだよ!?」


シエル:「そりゃ〜国王の名前くらい調べておくよね!まっ!そゆことだし!…百年前とか言ってたけどもしかしたら俺と同じ顔の人まだ生きてるかもね、名前も一緒みたいだし……そのうちバレたら大変だわこりゃ…アハハッ!」


レイン:「とんだ博打に出たもんだな……まぁ…実際…助けられた事だし…礼は言っとく、ありがとう。」


シエル:「君!名前は?俺はシエル!"ヴルスト・ハンス・シエル"!好きに呼んでよ!」


レイン:「俺は"ラクシュバル・アイ・レイン"だ…よろしくなシエル。」


こうしてこの三日後シエルに連れられアサシンズガーデンへと来たがロキシルからリオル王国のアサシンの事情を知らされた。

レインはその事に驚きもしたが加入に至りデイン達とも出会うことになったのだった…。


現在…


レイン:「ってな訳だ……わかったか?」


シオン:「なんか凄い話だね…まさかそんな出会いだったとは!」


ノルン:「じゃあ、レインはその錬金術師を殺す事が最終目的って事?」


レイン:「まぁ、そうだな……あいつに復讐して…俺は無念を果たす。」


ノルン:「復讐終わったら…レインは王国に帰っちゃうの??」


シエル:「え〜そうなの〜??」


レイン:「黙れバカ!…いいや、帰んねぇよ、ずっとここにいるさ…このバカの相手もしねぇとだし、超えねぇといけないからな。」


レインがシエルに視線を送るとどこか嬉しそうな顔をしていた。

レインもまた嬉しそうな顔で笑みをこぼす。


レイン:ーったく…このバカは……責任とれっつのー


レインは自分の過去の話をした事で自分の目的、今を見つめ直すいいきっかけになっていた。

それと同時にレインにはある決意が固まった。


レイン:「あの魔族との戦いで俺は思い知った…まだ俺にはラボラスを殺せる実力がねぇ……死ぬ気で鍛える。次会った時…絶対逃がさない為に……!!」


シエル:「な〜に怖い顔しちゃってんのさ、ほら見てみ?…ここに来てよかっただろ?レイン。」


周りを見渡すと、王国にいた時とは違う重い空気感ではなく、みんな自分と同じアサシンであるだけでなく、"仲間"というよりは"家族"に近いものを感じるそんな暖かい場所なんだとレインはここにいることに幸せを感じていた。


レイン:「あぁ…よかったよ。」


デイン:「懐かしい話を聞けたよ、レインがここに来た時の事は今でも覚えてる、ほんと成長したなレイン。」


レイン:「っるせぇ!バカ!恥ずかしいから言うな!!」


シオン:「シエルもすごいよね!王様騙せちゃうんだから〜、どんな手使ったの??」


シエル:「ん?俺もよくわかんない…アハハ!」


シオン:「えぇ!?なにそれ!」


ノルンはじっとシエルを見つめ考えていた。


ノルン:ーシエルはどうやって国王を騙したんだろう……

国王にレインの事を話そうとしたら会ってくれて

簡単に話が解決したって…さっきは言ってたけど……そんな簡単に国王が会ってくれる訳ないのに…シエル、

教えてシエル……ううん…教えてよ……"お父さん"…今より過去になにをしてきたの…?



【雨を嫌う天使】へ続く……。

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